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2 : 16 微*
手のひらにローションを垂らす桃枝は、依然として緊張している様子だ。
「いきなりは冷たくて驚いてしまうので、ローションは先ず、そうやって手の平で人肌に温めてください」
「わ、分かった」
「それで、温まったら……指を一本だけ、ボクのお尻に──あっ、汚くないですよ? 後ろ、きちんと洗いましたから」
「あ、あぁ。あり、がとう」
「課長、そんなに緊張されるとこっちも緊張しちゃいます」
「わっ、悪いっ!」
正直なところ、わざわざ指を一本ずつ挿入して慣らしてもらう必要はない。山吹はむしろ、多少強引にされる方が楽だと思う性質だからだ。
しかし、相手は初めて。ここで大事な初期ステップを丁寧に教えておかなかった場合、いつか【真の恋人】ができたときに、失敗させてしまう。いくら八つ当たりじみたセックスだとしても、未来まで奪うのは本意ではないのだ。
「痛かったら、言ってくれ」
「はぁ~い」
つぷ、と。濡れた指が一本、挿入される。……痛みはない。オールグリーン、というやつだ。
「ん、平気です。そのまま、もう一本……挿れて、ください」
「わか、った」
「あはっ。ホントに平気ですから、そんなに緊張しないでください?」
「無茶言うな……っ」
顔のわりに、随分と小心者。些か失礼なことを考えつつ、山吹は口角を上げる。
そのまま二本目も挿入され、山吹はすぐに三本目の指を求めた。徐々に抱く準備が完了していく状況に、果たして桃枝はついて来られているのだろうか。……待つつもりが、山吹にはないが。
「んっ、三本目も、平気です。指……少しだけ、動かしてみてください」
「こう、か?」
「あ、っ。……ん、そうです……っ。上手、ですね?」
「揶揄うな……っ」
恐る恐るといった様子で、指が動かされる。どんな動きをするか予測のつかないその手つきが、山吹としては悪くなかった。
「んっ、あ、ん……っ」
くすぐったいような、不思議な心地。山吹は小さく身をよじりつつ、桃枝を見上げた。
「そんな、食い入るように見られると……さすがのボクでも、照れちゃいます」
「扇情的だな、と」
「ステキな褒め言葉、ですね。ますます、照れちゃいます」
それにしても、立派な指だ。山吹の手では届かないところまで、あっさりと侵入できてしまっている。これは将来有望だな、と。山吹はおかしな観点で桃枝を評価した。
「もう、大丈夫です。……挿れてください、課長」
「……ッ」
「あはっ、可愛いですね。課長の顔、赤くなりましたよ」
「耐性がなくて、悪かったな……ッ」
なにも知らず、経験のない男をこれから、穢す。
なかなかできない貴重な経験を前にしているせいか、山吹にしては珍しく、セックスに対して高揚感を抱いてしまった。
山吹の後孔から指を引き抜いた桃枝は、備え付けのコンドームに手を伸ばす。洗浄済みの山吹としてはなくてもいいのだが、そう言うのは野暮だろう。
ピリッと、桃枝がコンドームの用意を始める。その後の動きを見て、山吹は感嘆の声を上げた。
「随分と、慣れた手つきで付けるんですね。……コンドーム」
てっきりその辺りの指導も必要かと思っていただけに、感動ものだ。山吹は桃枝の下半身を眺めながら、なんともムードのない発言をしてしまった。
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