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 山吹とのセックスを終えて、いつの間にか用意してくれていた朝食も食べ終えた後。 「後処理、最後まで手伝えなくて悪かったな」  出勤時間が近付き、身支度を終えた桃枝は玄関に向かっていた。  桃枝の後にシャワーを浴びた山吹は、濡れた髪をそのままに桃枝の後ろを追いかける。 「大丈夫ですよ。それに、お尻から白菊さんの精子を掻き出すのを見られるのは、少し恥ずかしいです……」 「そう言われると、逆に見たくなるんだがな」 「なっ! しっ、白菊さんのエッチ!」 「朝から襲ってきたお前には言われたくねぇな」  エッチ判定を返した後、桃枝は靴を履く。 「定時には帰るつもりなんだが、なにか買ってきて欲しい物とかあるか? 米とか、洗剤とか……。重たい物でも、なんでも」 「ではお言葉に甘えて、お米をお願いします。……ふふっ。なんだか、同棲っぽい会話ですね」 「同棲してるからな」 「そうですよね。えへへっ」  この笑顔で、休日出勤の憂鬱が遥か手に届かないところまで飛んでいく。恋人の愛らしくも尊い姿に、桃枝は内心で合掌する。 「とりあえず、米だな。他にも欲しい物があったら連絡してくれ。あと、米の種類もなにがいいのか写真を送ってくれ」 「分かりました。お仕事もおつかいも、気を付けてくださいね」 「あぁ」  さて、名残惜しいが一時のお別れだ。折角の休日なのだから山吹を愛でていたい気持ちはあるが、そんなことも言っていられない。  そんな中、山吹が急にモジモジと恥ずかしそうに身をよじり始めた。 「あの、課長。……キス、してほしいです」 「はッ?」  突然の提案に、桃枝はビクリと大袈裟な反応を返す。 「えっ。そ、そんなに驚きますか?」 「いや、えっと、悪い。今のは嫌だったとか、そういう意味じゃねぇぞ」  ガーンとショックを受けている山吹に向けて、桃枝はピッと手のひらを向ける。それから、フイッと顔を背けた。 「ただ、なんだ。……さっきまでセックスしてたから、その。ちょっと、過敏に反応しちまった。悪かったよ」 「えっ? ……あっ、そ、そういうこと、ですかっ? えっと、こちらこそ、紛らわしいことをしてしまってごめんなさい……」  これはなんだか、イケナイ雰囲気だ。お互いに顔を赤らめつつも、先に、山吹が動く。 「えっと、こほんっ! ……課長、課長っ。【行ってきますのキス】を忘れていますよっ?」 「行ってきますの、キス?」  改めて言われるも、そんなことはしたことがない。言うまでもなく、山吹の冗談だ。  だが、求められたのならばキスをする。桃枝はそういう男だ。  今度は戸惑うことなく、且つスマートにキスが贈られた。山吹は瞳を丸くしてから、パチパチと数回、瞬きをする。 「……え、っ」 「可能な限り、急いで帰ってくるからな。……行ってきます」 「あ、えっと……は、はい。行ってらっしゃい、です」  頭をポンと撫で、桃枝は出勤。玄関扉が閉まった後で、山吹が「うぅ~っ」と悶えていたのを、桃枝は知らない。  そして、当然ながら……。 「クソッ、可愛いな……ッ」  桃枝も桃枝で悶えていたことを、山吹は知らないのだ。

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