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10話
そして暫くすると玲音が諒馬の所へと戻って来て、
「もう、京平がやるって言ってるよー。 だから、そろそろスタンバイしないとね」
そう玲音は諒馬に声を掛けたのだが、玲音は諒馬の可愛い仕草に気付いたのか、
「もう、諒馬君ってば、女子になってるじゃーん! それで、今日の撮影はバッチリなんじゃない?」
そう嬉しそうに言う玲音に対して、諒馬の方は、
「え? そうだったの?」
と全くもって自覚していないようにも思える。
という事は無自覚という事だろう。
「ま、いいやー、とりあえず、諒馬君も行こうっ!」
玲音は諒馬の腕を取ると立ち上がらせ、諒馬の腕を引っ張ってカメラがスタンばっているセットまで移動するのだ。
今日はネットでの生配信。 初めての事だから何が起こるか分からない。 だが、ここに来たなら諒馬達は仕事としてやらなければならない。
一瞬、諒馬は緊張したような面持ちになったのだが、一呼吸すると、いつもの表情へと戻す。
「じゃあ、今日も頑張ろー!」
さっき簡単に設定を作ったというのか、ここの今日のセットというのは、部屋の真ん中にキングサイズのベッドが置いてあるだけだ。 後はそれを使って、イメージやら台詞やらを勝手に進めて行くのが諒馬達の仕事でもある。
とりあえず諒馬と玲音は軽くセットしてあるドアの所で、何やら口喧嘩みたいなのを始めるのだ。
「ねぇねぇ、京平は私が好きで私のもんなんだからねっ!」
そう玲音が言い始めると諒馬の方も、負けじと台詞を言い始める。
「私だって京平の事好きなんだからねっ! 貴方には京平は渡せないからっ!」
「じゃ、今日は京平に仕掛けて、どっちが恋人になるか? って勝負してみない?」
「いいわよっ!」
そう設定した通りにアドリブで話を進めて行く、諒馬と玲音。
そして京平がいる部屋のドアを開けるのだ。
「京平! 二人共、京平の事が好きだから、京平の事を落とす事が出来た方の恋人になるっていうのはどう?」
ドアを開けた開口一番に玲音はベッドの上にいる京平に向かってそう言い放つのだ。
その玲音の宣言を鼻先で笑う京平。 きっと京平もその設定にノリノリなのであろう。
「俺の事を落とせた方の恋人かぁ。 まぁ、いいんじゃない? こういう事なんて滅多な事じゃ出来ないんだし……って事は、俺は二人に手を出さないっていう方がいいのかな? それとも、存分に手を出してもいいって事なのかな?」
「京平さんは私達に手を出して貰っても構わないですよー」
と撮影に入れば諒馬の方もちゃんと入って来て台詞を言っているようにも思える。
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