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複雑な彼氏の心境(上原×佐藤)
・上原×保
・『佐藤クンと芝﨑クン』の後日談
side.Tamotsu
土砂降りの日、芝崎くんを家に招いた時の事を、
なんとなく上原君に話してみた。
別に後ろめたい…ってわけじゃなかったけど。
お母さんとのやり取りが微妙だっただけに。
やっぱり、話しておいた方がいいんじゃないかなと思って…打ち明けることにしたんだ。
「…………」
話し終えた後、だんまりになってしまった上原君。
怒っちゃったかなと、恐る恐る顔を見上げてみると…。なんだか複雑な表情を浮かべていた。
「…えと、ごめんね…?」
いつまで経っても、反応を返してくれない上原君に居たたまれず。
俯きながら謝罪を口にすると、
上からはぁ~…と盛大な溜め息が聞こえてきた。
それに思わず肩を竦めたら…
「別に…謝る事じゃねぇだろ?」
そう言ってくれた上原君は眉尻を下げ、困ったように苦笑いした。
「お前がお人好しなのは、知ってるし。」
しゅんとなる僕の髪を、
上原君が宥めるよう優しく梳いてくれる。
けどやっぱり、腑に落ちないみたいだ。
「まぁ、なんつうか…俺の知らねぇとこで、お前が他の野郎を家に入れてるとか、さ…」
バツが悪そうに頭を掻く上原君。
言葉を濁してはいるけど、なんとなく言いたい事は解った。
僕だって、上原君が他の誰かとヘンに仲良くしてたら。耐えられないもんね…。
「芝崎は水島にベタ惚れだから、大丈夫だって解ってんだけどな。それでも嫌なもんはやだし…」
それよりも上原君は、僕のお母さんの言葉が気になったみたい。
「勘違いとは言え、お前のお袋さんに芝崎が恋人だって思われちまうなんてよ…」
照れくさそうにしながらも、上原君はまっすぐに僕を見つめてきて…
「お前は、俺のもんだろ?」
「上原君…」
言い切ると、上原君は僕の腕を掴んできた。
それはぎゅっと力強く、痛いくらいだったけど…。
それだけ真剣に考えてくれてるのだと思えば、なんてことなかった。
寧ろ、嬉しい。
愛されてるのかなって。
自惚れじゃないけど、安心出来るから…。
「上原君。」
「ん?」
人気は無くともここはまだ外だし、普段から言い慣れてないから恥ずかしくて仕方ないけれど。
「大好きだよ…」
これだけは自信持って言える。
だって僕の揺るぎない本心なんだから。
「保…」
自からゆっくりと腕を回し、擦り寄る。
やがては上原君からも抱きしめ返してくれて。
目が合えばそれは、自然と距離を縮めていた。
瞬間、柔らかな感触に包まれる。
「とりあえず、お前のお袋さんに挨拶しねぇとな。」
「え?」
「芝崎と間違われたままとか、納得いかねぇし…」
いずれ俺はお前を、譲ってもらわなきゃならねぇんだから。
「そこんとこ、話着けとかねぇとな?」
「あっ…う、うんっ…!」
「…ッくしょん!!」
「どうした、風邪か?」
「あ~…こないだ雨に濡れたんスよねぇ…」
「ふむ、馬鹿は風邪ひかないらしいがな。」
「せ、先輩~!」
グダグダでおしまい☆
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