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エール5-19

「こんなことになって俺にはもう団員になる資格は無いってわかってます、でも…テストだけはさせてもらえませんか?」  千秋と二人で頑張ってきたことを無駄にしたくない。本気で取り組んだ思いだけでも何とか伝えたい。密紀は心からそう思って破れた団服の胸をギュッと握って頭を下げた。 「しねえよ、テストなんか」  しかし水野の口からは願いを却下する言葉が発せられる。 「そんな!団長、俺からもお願いします!」  千秋も密紀の隣で頭を下げる。 「いいから、それ脱いで保科」  容赦無く団服を脱げと言う水野に、他に意見する団員はいない。  伝統の聖院学園応援団。事故とはいえ、その団服を汚した罪は重いと言うことだろうか。 「…わかりました」  密紀は破れた千秋の団服を脱いだ。皮膚を剥がされるような気持ちになって、胸が痛くて泣きそうになったが、ぐっと堪えた。 「はい」  二階堂が椅子の上に置いてあった箱を水野に差し出す。受け取った水野が「ん」と言いながらその箱を密紀の前に差し出した。  密紀が首を傾げる。差し出された白い化粧箱の中央には金色の箔押しで聖院学園の校章。困惑の目を向けた密紀に答えるように、水野はニッと口端を上げると箱の蓋を開けた。 「これ…」  声にしたのは千秋だった。その箱に見覚えがあったのだろう、過去に自分ももらったことのある金の校章。 「団服!」

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