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序章

 山奥のとある屋敷。青年は横笛を吹いていた。美しくも胸を引き裂かんばかりに悲しい音色。それに耳を傾けていた妖狐の男は笛の音色が終わるとゆっくりと瞼を開いた。 「……いよいよか。夕霧……いや龍藍(りょうらん)、本当に良いのか?」 「うん。もう決めたことだから。銀雪、なるべく無理はしないようにするつもりだから大丈夫だよ」    それまで笛を吹いていた龍藍は唇を離し、微笑を浮かべた。龍藍と銀雪は銀の髪を宵の風に靡かせて空を見上げる。視線の先には柔らかな月。 「父上……」  龍藍の唇から零れる声のもの悲しさに、銀雪は目を伏せる。隣の龍藍はこれからどのような道を歩むのだろうか。勿論支えるつもりではあるが、龍藍が幸せになれるようにその道行きを見守ってほしい。そんな願いを月に向けた。  

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