75 / 100
第75話 滔滔汨汨 ❶
飛鳥井の玄関の前には堂嶋正義と三木繁雄が立っていた
榊原は玄関のロックを解錠してドアを開けに行った
堂嶋と三木を応接間に通して、榊原はお茶の用意をしにキッチンへ向かった
応接間に通された堂嶋と三木は見慣れぬ顔ぶれに、少し警戒しつつもソファーに座った
康太は榊原がお茶を運ぶまで、口を開く事はなかった
榊原が「開けて下さい!」と謂うと大空がドアを開けに向かった
応接間に入ると榊原は大空に「君は自分の部屋に行ってなさい!」と言った
これ以上の話は子供が聞いて良い領域じゃない………と思ったからだ
大空は頷いて応接間のドアを締めて、自分の部屋へと向かった
榊原は皆の前に珈琲を配り、康太の前に紅茶を置いてソファーに座った
康太は榊原が座るのを待って「何の要件だ?政治屋が?」と吐き捨てた
堂嶋は1枚の紙をテーブルの上に置いた
榊原はその紙を手にして康太に見せた
閻魔とジョセフィーヌが覗き込み、それを読む
唐沢は「堂嶋議員、三木議員、貴方達は誰の命により此処に居るのですか?」と尋ねた
堂嶋は「俺は国家元首の命により!」三木は「俺は親として」「「此処にいる!」」とキッパリ言った
康太は堂嶋が渡して来た紙を見て
「これは一体………どう言う事になってるのよ?
何故にこんな事態になってるんだよ?」と啞然と呟いた
三木は「竜馬と貴史の通う大学の校舎で銃乱射の事件が起きました………まだ詳細は出て来てないので解りませんが………
こんな事………平和な世の中で起きて良い筈がない!違いますか?康太!!」と訴えて来た
康太は眉を顰めて「この銃乱射事件………それは何時起きた事件なのよ?」と問い掛けた
「ほんの数時間前の事です………竜馬と貴史とはまだ連絡すら取れません!
ですが竜馬と貴史はオックスフォード大学へ通っているなら……巻き込まれてもおかしくないじゃないですか!」と三木は涙を流しながら訴えた
堂嶋は「その銃乱射事件の真相の解明を、俺は総理に言い付かって来たのです!
烈が竜馬と貴史をイギリスへ逝かせたとの事なので詳細な話を聞きに参りました!
我が友烈は今何処にいますか?」と言う
康太はゾロゾロならばまだ増える可能性を想像して頭痛がして来ていた
その時、玄関のチャイムが鳴って榊原はカメラを作動した
玄関の前には神野、須賀、柘植、相賀……そしてどう言う理由か?鳳城由香里………東都日報社長 東城洋人が今枝浩二を引き連れて立っていた
榊原は「どうしますか?」と尋ねた
康太は「通すしかねぇだろ?どうせ烈関係だろ?」とボヤくと、榊原は玄関のロックを解除して、皆を応接間に通した
お茶の追加を榊原は作ると応接間に戻り来客の前に置いた
康太は東城に目を向けると「正気に戻ったのかよ?」と問い掛けた
東城は「はい!烈君の御陰で正気に戻る事が出来ました!弟もこの度共に綺麗さんの施設を出る事が出来たので、ご挨拶に参りました!
我等は【R&R】を全面的にバックアップすると約束致します!」とスッキリした顔で宣言した
鳳城由香里は「我が愛しのぷりちー烈は?何処だ!」と言い「面接の書類俺に放り投げやがって!全く進まねぇじゃねぇかよ!」と怒っていた
康太は「烈は今 家の為に総てをストップさせ、総ての力を家の為だけに使っている!
今後一ヶ月はアイツは梃子でも動かねぇ!
【R&R】の前に面倒臭い事も多々とあるからな
その道筋を着けねぇと流れは総てストップとなる!滔滔と流れる川は堰き止められてるって訳だかんな!今はその作業をしている!」とキッパリ言った
由香里は「そうか………今世紀最大の喧嘩を売る前にやる事があるんだな!
それを片付けねぇと川は流れねぇって言うんだな!ならば烈に道筋は俺と【R&R】のメンバーが着けとくからチェックは怠るな!と言ってやらねばな!で、烈は何処だ?」と納得して聞いた
榊原は「烈は今 入院中です!力を使い果たしたので一週間は目が醒めません!」と言うしかなかった
こんなにゾロゾロ来ても、肝心の烈が起きないのだ!仕方ない………
康太は「で、神野達は要件は一緒か?」と尋ねると神野は「俺等はイギリスの銃乱射事件が気になり来たんだよ!竜馬や貴史は無事なのか?」と問い掛けた
榊原は「電話、繋がらないのですか?」と問い掛けた
須賀が「繋がらないから、こうして知ってそうな所へ来るしかなかった………」と言う
それを聞き、ジョセフィーヌは何処かへ電話をしていた
そして電話を切ると「今から一時間以内に確かめますので暫しお待ちなさい!」と言う
本国の情報機関へ電話をしていた様だった
暫くして電話がかかって来てジョセフィーヌはそれを聞き電話を切ると
「二人は無事でした!
ロード・ペンバートンの教室は、如何なる事態にも対応した防犯システムを備えていたそうで、その中にいたのでお二人は無事だったそうです!
どうやら………その銃乱射の犯人は道道……其処にいた人達を乱射して、まるで狩りを楽しむ様な足取りでロード・ペンバートンの教室へ行ったみたいです!
異変に気づいたロードが教室の出入り口の非常ボタンを押し防犯システムを発動し、犯人を入れないようにしたそうです!
犯人達は迷う事なくロードの教室へ向かって行き、銃を乱射していたそうですが、防犯システムが発動し、防弾ガラスが下りたので、弾き飛ばされ弾かれた玉に当たり犯人数名が怪我した様です!」と淡々と説明した
康太は「多分星詠みした結果竜馬と貴史を避難させていたと謂う理由か………」と用意周到な宗右衛門に感心していた
榊原は「二人は無事だったのですか?」と問い掛けた
ジョセフィーヌは「はい、無事保護してオブライエン家へ連れて行く所だと連絡が入りました!」と伝えた
康太は「烈の大切な存在がボロボロ死んだら……的な脅しをされているからな
警戒した結果、星を詠み配置したんだろ?
儀式の前に星まで詠んでいたならば起きねぇのは当たり前じゃねぇかよ!」とボヤいた
んとに、こんなにウヨウヨ、ゴロゴロ、バタバタ、ゾロゾロ……嫌になる程湧きやがって!!!
三木は安堵して泣いていた
堂嶋は「二人は無事なのか……」とホッとしていた
だが康太はどうせなら……と堂嶋も道連れにしてやる!と想い
「正義、此方の貴婦人は女王の番犬、そして此方の貴公子然とされた方は魔界の閻魔大魔王様だ!」
としれっとご紹介!
堂嶋は「え!!!女王の番犬………あ!!ジョセフィーヌ・アデレーゼ・フィッツロイ!!
女王の番犬であられたな………」と今更ながらに思い出し呟いた
だがジョセフィーヌはまだ存在が解る……が、閻魔大魔王は桃源郷近くの屋敷で逢ってなくば気絶していた所だった
正義は「少し前に……『あと少しで地獄へ一名ご案内でしたのにね!』と物凄く残念そうに言っていた御方ですよね?
閻魔大魔王なら間違いなく地獄へ御案内される所でした………」とボヤいた
康太は「3日だけ時間をやるからさ、正義、お前 烈と羅刹天と共にhellに行き仕事して来いよ!」と意図も簡単にサラッと言ってのけた
堂嶋は「貴方……面倒臭いから………此方に全部放り投げましたね………」と文句を言った
「まぁまぁ正義、閻魔も着けてやんからさ!
女王の番犬に恩を売っておけよ!
そしたら烈がお前を教育してくれるかも知れねぇし、烈との時間を持てとの啓示なのかもな!」とお気楽な事を謂う
康太は話は終わったとばかりに東城の方を向き
「もう次は謀らない様にしてくれよ!
オレに牙を剥いた時点でお前の信用など皆無だけどな!」と辛辣な事を謂う
東城はそんな言葉など真正面から受け
「私は愛した妻を亡くした哀しい心に漬け込まれ……ずっと靄の掛かった世界にいました
弟も愛する人の側にいたいだけなのに………気付けば主人を欺き………裏切り……最悪の事をした
私達………兄弟は死しても償えぬ事をしたと………
ずっと悔やんでいました
ですが烈がそんな我等に寄り添い、魂の邂逅をしてくれ、今まで生きて来た道を説いて、進むべき道を示してくれました!
我等兄弟は烈に救われ、烈に道を正され、烈に死命を与えられ、烈の為に生きると誓った
貴方には牙を剥いてしまいましたが………今私は烈の為に此処に姿を現し、存在しています!
どうか……御容赦を…………」
と言い深々と頭を下げた
康太は「烈は表に出ろと言ったのか?」と問い掛けた
東城は清々しい顔で「はい!もう道は違えるな!と謂われましたが、違えるつもりは微塵もない!
私は私の死命を全うする為に会社に戻りました
そして烈が今世紀最大の喧嘩を売るとの事なので、最大限に協力して煽りに煽ってやる所存に御座います!」と謂う
その顔にもう迷いも悔いも翳りもなかった
前の東城よりも清々しい顔で自信に満ち溢れていた
そして東城は「私はこの度綺麗さんと再婚する事にしました!今、綺麗さんのお腹には私の子が宿っています!」と爆弾発言を投下した
康太は「えええええ!!!!綺麗と!お前チャレンジャーだな!」と叫んだ
榊原は「綺麗は養子も育てていますが?」と八雲の恋人の子を養子にしていた事を思い出し問い掛けた
「麗音ですか、あの子とは正式に養子縁組して私の子になりました!
いい機会なので私は綺麗の婿養子になりました!
今は私は飛鳥井豊、豊かな魂を持ち生きて行けと、名を頂戴致しました!以後お見知り置きを!」
としれっと謂う
康太は「それは宗右衛門が詠んだ果てなのか?」と問い掛けた
「はい!妻を亡くした私と、親の為に離れた麗音、そして愛した人と決別した綺麗………無くした者同士が家族になり新しいスタートを切る
それが我等が進む道だと示して戴きました
ちなみに弟の彰人も、今後は飛鳥井忠と改名致しました!
忠義を忘れずに、果てへと逝くがよい、と言葉を頂戴し美麗さんと結婚し、飛鳥井を名乗る事となりました!
今後とも弟共々宜しくお願い致します!」と告げた
康太は再び「えぇぇぇぇぇ!!!!!美麗も貰い手あったのかよ!!!
お前等兄弟、どんだけチャレンジャーなんだよ!」と叫んだ
榊原はあんりな言い草に「康太……」と窘めた
東城は一切気にする事なく
「我等はまだまだ宗右衛門の監視下にいるべき存在!私と弟は洗脳が解けて以来、綺麗さんの研究室にいてプログラムを受けて生活していました
総て無くして………総て消えてなくなっても良い……とさえ想っていました
そんな私に宗右衛門は今枝が待っているから還らねばならぬぞ!東城!
今枝を再び現場に送り出し、真実を伝える姿勢を貫かれよ!
其れこそが主が生きる道なのだからな!と示してくれました!
我等兄弟は総てを捨てたと謂うのに、吹っ切る事が出来なくて………綺麗さんと美麗さんと綺羅さんに蹴り飛ばされる日々を送っていました
そして何時しか私は綺麗さんに、弟は美麗さんに、蔵之介さんは綺羅さんに惹かれて………恋い焦がれ、プロポーズをしたのでした
蔵之介さんは今は飛鳥井朔人と戸籍を新たに作り、新しい人生を踏み出しました
そしてこの度晴れて施設を出て結婚を報告をさせて戴きました!
今後 我等は真実を伝える報道をコンセプトに今枝には副社長の肩書はそのまま、現場に送り出し真実を伝えて行って貰うつもりです
その第一歩が白の教団に洗脳された我等が………洗脳が解けて今に至る…………までを取材して近々放送する予定です」
と真実を伝えて行く事こそが死命だと、己の姿さえ世間に見せると謂うのだった
「お前が飛鳥井豊(ゆたか)、弟が忠(ただし)、蔵之介が朔人(さくと)
再スタートに相応しき名を貰ったな
豊かな人生を送れとの願い
忠義を尊んだ人生を忘れる事なかれとの願いを込めて
そして総て新しく始める人となれ……との願いを込めて
それぞれに名を与え、別の人生を与えた事となるのか………ならばオレは宗右衛門の思いの儘に、総て受け入れる事に致します!
飛鳥井家 真贋 しかとその顔見せの儀、承りました!」
康太はそう言い今枝に目を遣ると、清々しい顔をした今枝はソファーに座っていた
康太はこれ以上は何も言わず、これからの船出をする者達を黙って見送るつもりだった
康太は果てへ目を向け
「乱世の世は此れよりどんどん制度を上げて熾烈な戦いを繰り広げる事となる
何処に魔の手があるやも知れぬ……
そんな時信じられるのは己しかねぇ世界となる!
まぁ皆で力を合わせて乗り切ろうぜ!って事だ
って事で伊織、烈は起きねぇからな今夜は宴会だ
三木はイギリスへ行くのか?
正義は国会へ戻るのかよ?」
と、半ばヤケクソになり問い掛けた
堂嶋は「俺は総理に北欧諸国の不穏な噂を耳にして、ついでだから銃乱射の件もあり三木と共に飛鳥井へ来ただけだ!
取り敢えず外務省の方々と連絡を取り被害の対策を伝えねばならぬが、それはもうやっているだろうから状況の把握だけしておくつもりだ!
烈と羅刹天と共にhellへ逝けるならば、俺の用は終わったも同然だ!」と謂う
三木も「俺は貴史と我が息子が無事ならば、飛鳥井で飲みまくってやる!
だから今夜は宴会です!で、幾ら払いますか?」とノリノリで聞いて来た
榊原は「相賀さん達は宴会しますか?
後、豊さんと今枝はどうします?」と問い掛けた
今枝は「俺と社長は宴会してる暇などない位に忙しい…………阿賀屋蒼佑氏が介入して下さり、何とか首の皮一枚繋がった状態ですので、働かねばなりません!」と社長を引きずって還って行った
まるで嵐の様な慌ただしさだった
榊原は「一人一万円お願いします!」とお金を徴収して慌ただしく買い物へ出掛けた
ジョセフィーヌは新しいお付の者がやって来て、還って行った
「畜生!宴会したかったのに!」と叫んでいたが、今は宴会よりも身の安全の為に大使館に逝けとの事だった
閻魔は「私は菩提寺に行き、妻子の様子を見てから還るつもりです!」と言うと、唐沢が「ならば菩提寺まで乗せて行きますよ!」と言い唐沢と閻魔は共に飛鳥井を後にした
飛鳥井の応接間から人が少しずつ還り静けさを取り戻しつつあった
堂嶋と三木は国会から招集が掛かり一旦飛鳥井から出て行った
康太は神野に「ゾロゾロと大人数で済まなかったな………」と謝罪した
神野は「別に良いけど、何か大変そうだな……」と口にした
「今世はな……本当に予想外の事ばかり起きやがるんだよ
オレでさえ予測は着かねぇ事ばかりだからな……んとに叫びたくなる時があるんだよ!
烈とレイと凛は入院してるし、弥勒と神威と叔父貴も入院中だかんな……」とボヤいた
康太がボヤくと柘植が「え?神威さん入院中なんですか!!」と驚いた声で問い掛けた
康太は「え?知り合いか?あ……飛鳥井で宴会の時は良く見掛けてるか……」と納得
たが柘植は「三社共同事務所の顧問弁護士であり、ガード下の飲み仲間です!」と笑って言う
康太は「お前もガード下の飲み仲間か……」と言いながら、どんだけガード下の飲み仲間増やすのよ?神威…と想った
その夜はもう疲れ果て、宴会で精進落としと厄落としだとばかりに賑わい、夜は更けた
鳳城由香里は飲みまくりで至極御満悦だった
烈は5日間眠ったままだった
世間の喧騒など何処吹く風とばかりに、英気を養う為にか眠り続けた
凛とレイは翌日には退院して幼稚舎に通園していた
6日目の朝 烈は目を醒ました
その頃には満身創痍だったおっさん達も傷が開かない状態まで治りつつあり、退院しても大丈夫になっていた
素戔嗚尊は倅と孫を抱き締めて、別れを惜しみつつトキと共に魔界へ還って行った
弥勒と神威はその足で飲みに行き、辛気臭い日々を振り払う為に飲み明かした
退院して来た烈に康太は「お前、hellに羅刹天と共に逝けよ!」とサラッと言った
全く母は面倒なのは総て放り投げる気でいると……烈は想った
烈は母に「来週以降に予定入れるわ!今は優先すべき事があるにょよ!」と言い会社へ出勤して行った
ケントは驚異的な回復力で、素戔嗚尊達よりも早く退院して来ていた
烈はケントに「痛い目にあわせてごめんね!」と謝った
ケントは笑って………「まさか……トリに助けられ、トリに輸血される日が来ようとは想いしませんでした………でもあのトリは命の恩人な事には間違いないので、構いません!」と言った
あの日の記憶は確かにあるのだ
必死に自分を咥えて久遠の所へ連れて行ってくれ、輸血までしてくれたのだ
そりゃ……トリの血なんて!!!!と想わなかった事はない
ひょっとして輸血なんかして、自分はトリになってしまってるんじゃ?……
と謂う不安もあった
だがトリになってないし、こうして元気になったのだ
もう何も考えるのは止めよう……そう想った
烈は精力的に会社に顔を出し、今週末に行われる【R&R】のビルの地鎮祭に心血を注ごうと考えていた
マンモス校跡地の取り壊しは1年以上の年月を要し、やっと最近更地になった
九頭竜達は更地にして地鎮祭を執り行う為の、準備をせっせとしていたのだった
そして烈はマンモス校跡地の横に土地を買ったから、下を薬局にした医療ビルを建てるつもりでいたから、今は飛鳥井建設から派遣された子たちは、巨大な土地のバリケードを張ったり、隣のビルの建設に駆り出されていた
イギリスから【R&R】のメンバーが地鎮祭に参加し来日して来る事も決定した
自分達の持ちビルの地鎮祭なのだ
メンバーは必ずや参加すると申し出た
【R&R】の拠点となるべきビルなのだ
その第一歩となる地鎮祭を迎えるのだから、メンバーは必ずや参加すると燃えていた
だからこそ、文句の一つも出ない程に、立派な更地にせねばならないのだ
クリストファー・オブライエンも倭の国に建つ予定の自社ビルの地鎮祭には視察に来る予定だった
烈はジョセフィーヌを通して正式にクリストファー・オブライエンが来日して来るならば、鉄壁な護りを、と女王に頼んだ
女王はイギリス王室、女王の威厳に掛けて必ずや護り通してみせます!と返信を貰った
康太も【R&R】、オブライエン©Japanビルの地鎮祭には飛鳥井を代表して出席する予定だった
飛鳥井を代表して真贋と社長が参加を決めた
宮瀬建設からは宮瀬那智が、そして新規参入の設備会社から代表が出席する予定が入っていた
勿論 飛鳥井施工株式会社も出席予定だった
工事に関わる総ての企業体が、地鎮祭には出席すると返信を貰った
そして地鎮祭の招待客に招待状も送付した
飛鳥井と繋がりのある企業を招待する事が決定した
かなり大々的な招待客をお迎えしての、地鎮祭となる事が伺えられた
地鎮祭当日のプログラムをチェックする為に、この日烈は副社長室にいて、康太と榊原と共に仕事をしていた
烈は母に「その地鎮祭の祭事は、にーに達が神楽を踊ってくれるから!」と伝えた
康太は「えー!!神楽はオレの専売特許ですがな!」とボヤいた
まさか奪われる日が来るなんて………想いもしなかった
「あまちゃんが神楽鈴を作ってくれたにょね!
女神を集めて神聖な音が出る様に作ってくれたのよ!あまちゃんにはまたお礼に行かなきゃなのよ!」
ニコニコな顔で烈は謂う
康太は「母者が神楽鈴作ったのかよ?」と少し驚きつつも、天照大御神はそれはそれは、頑張って烈の為に作ったんだろうな……と思い浮かべながら謂う
「あまちゃんは女神だからね
だからあまちゃんが作ってくれた神楽鈴はね、まるで女神が織りなす音みたいでね凄く美しくしいのよ!母しゃん寝ても大丈夫にゃのよ!」
烈よ…………流石と地鎮祭の祭事の最中に寝るのは無理だぜ………
榊原はぷるぷると肩を震わせて笑っていた
だが気を執り成して「神楽の舞は烈が教えたのですか?」と尋ねた
「そうよ、今は修行の時間はそればかりでね
普段使わない筋肉らしくて…にーに達は今、とっても湿布臭いにょよね……」
そう謂えば湿布の匂いプンプンさせていたなと想う
康太は真顔になると「話は変わるけど、東城の件、何故黙っていた?」と問い掛けた
「黙っていた訳じゃにゃいのよ………でもね綺羅三姉妹が完売しました………なんて言えなかったのよ
ボクもね眼医者に行かせたり、色んな女性を知る為にしづちゃんに頼んでお見合いとかさせたのよ
でもね………どうしても三姉妹が良いって謂うからね………言えなかったのよ
ボクもね相手は選んだ方が良いわよ!と言ったらね、三姉妹に逆さ吊りにされたり、擽られたり、お尻ペンペンされたり被害大だったにょよ!」
だから下手な事を言ったら被害は広がるから教えられなかったと理解した
「東城が綺麗で、弟は美麗、蔵之介は綺羅を娶ったんだろ?
物好きもいるもんだな…………」
「しかも綺麗は妊娠してるわよ
そして美麗も綺羅も妊娠してるにょよ!
三つ子じゃにゃいのに妊娠は同じって………変な姉妹よね…………」
烈はボヤいた
康太は笑って………そしてもう一人上間美鈴の被害者を想った
「悦郎は………どうなった?」
「悦郎はまだまだ時間が必死にゃのよ……
脳を直接弄られからね………
蔵之介よりも酷く教団の傀儡にされていたから………一気に戻せば脳は壊れ廃人になるしかない…………
蔵之介は自由になるお金欲しさで、コントロールしやすくする為に其処まで酷く脳は弄ってなかったけど、悦郎はもう性格や人格まで変化してるから………上間から逃げて九鬼の病院に行った時には……かなり性格も人格も乖離してたんじゃないかって綺麗が言ってたわね
悦郎は家族には死亡通知を出してくれって………言ってたから、其の通りにしてやったと、綺麗が言ってたからね
家元は………息子の死亡通知を受け取ったのよ…」
「もう治る見込みねぇのかよ?」
「…………多分………治っても記憶は曖昧で……元には戻れないわ
今も………弄られた脳の所為で、時々自分さえ解らにゃくなって行ってるのよ
この先……総ての記憶もなくなるかも知れないだろうって……
事故で謂えば脳の損傷が酷すぎて、記憶障害が起こり、下手したら記憶は一度リセットした状態になるかも知れない
無くした記憶の上に、新しい日々を上書きして逝くしかない………其れ位の脳のダメージだったのよ
でもその方が幸せかも……だから総て忘れさせて教えて逝く方がある意味幸せかもって……悦郎を見てたら…………誰もが想う程だからね……」
死亡通知が来ているならば………家元達は打ちのめされたに違いない
康太は「家元達は辛いだろうな………」と呟いた
「もし記憶が残っていたとしても………自分は亡き者として知らせてくれと謂うのが悦郎の願いだからね
そろそろ家元にはお教室を再開させろ!って説教に行こうかしら?って思っているにょよ!」
あれだけの事をした息子がいたら……世間は両親さえ、あの教団の者だと想い……苦しめてしまうかも知れない…………
どうか………お願いします………
僕は死んだと伝えて下さい!
そうしないと今後………両親を巻き込んでしまうから………お願いです………
そう頼んて来た悦郎の想いを、烈は母の手を握り締めて送る
康太の脳裏に悦郎の想いが流れ込み………
「んとに、人を弄ぶのも大概にさせねぇとな!」
と怒りに満ちた想いを紡ぎ吐き出した
こんな被害者を減らす為に、我らは敢えて修羅の道を逝かねばならぬのだ
烈は怒りを噛み締める母を見て、謂わねばならない事を口にした
「母しゃん、そろそろ次代の後継を決めて据えないと駄目な頃よ!配置して逝かせねばなぬ時期はとうに来てるのよ!」と烈は言った
遅い位だった
康太は生まれた時から稀代の真贋として、生きるしかなかった
兄達も然り………役割と役目を与えて家の為に配置する
だが現実は………康太の兄弟は瑛太以外は家を出てしまった………
会社に在籍させて仕事はさせているが………それは本来の飛鳥井の役割からは掛け離れた存在になってしまっていたのだった…………
康太は苦汁を舐める様な苦々しい顔をして
「オレの兄弟は……役割からは掛け離れた存在になっちまったかんな………決めきれずにいるってのが本音だな………」と想いを吐露する
烈は笑い飛ばして「母しゃんの子供ならば、道など逸れずに突っ切って逝くから悩まなくても大丈夫にゃのよ!」と謂う
そんな烈の言葉を受け康太は背中を押してくれる想いを感じる
そうだ……今世は宗右衛門がいてくれるのだ
道など逸れる筈などないのだ
康太は自信のなくなった自分に発破を掛けた
烈はバツの悪い顔をして「転生は少し送れたけどね………盤上に上げて動き出すのを見届けるつもりよ!」と謂う
康太は「ならば宗右衛門、どれを継がせるか音弥以外を決めねぇとな!」と笑った
烈は母に「やっぱ、オールマイティーなヤツが良いわよね?」と問い掛けた
康太は「おっ!やっぱし、此れからは、それが強みとなるよな!」と悪巧みした顔で答える
「なら、中等部卒業するまでは鍛え上げるしかにゃいわね!」
「だな!帝王学は必要かな?
今 瑛智に教育施してるけど、オレの子も帝王学必要かな?」
「帝王学は経営のすべてのプロセスを叩き込む上で必要となるけど……瑛智は少し息抜きを覚えさせにゃいと壊れちゃうわよ!」
烈の言葉に康太は考え込み「瑛智の部屋、普通の子供部屋に戻した方が良いかな?」と問い掛けた
「四六時中肩こるのは五つ子だけで結構にゃのよ
帝王学よりも此れからは情報戦となるから
ね
周りを見れる奴じゃにゃいと社長は難しいわ
それと……ゆーちゃんの二の舞いはさせないで……
飛鳥井瑛太の劣化版みたいなレッテルで、ゆーちゃんは苦しんだわ!
瑛智は瑛智、ゆーちゃんはゆーちゃんにゃのよ
えーちゃんにはなれないのよ……」
「解ってんよ!烈……」
「母しゃんは解ってても………何もしない
それは見捨てたも同然だって………気付いてる?」
烈の言葉に康太は驚愕の瞳をして……烈を見た
榊原は「烈!」と止めようとした
だが康太は榊原に「伊織………良い、大丈夫だ!」と言った
「気付いていたったって………何もしてやれねぇならば、オレは何もしねぇ事にして来た……
オレはそんな風にしか生きられねぇかんな……」
「やっぱし………もう少し早くボクは生まれるべきだったって想うわね………」
烈はそう言い康太を抱き締めた
そして宗右衛門の声で「怯えずともよいのじゃ!
儂はそれを何時だって主に教えて来なかったか?
そんな迷子の様な顔をせずとも、主はズンズン突っ走ればよい!
後の始末は儂がしてやる、だから立ち止まるな!
そうやって我等は幾度も転生して参ったのじゃないのか?」と安心させる様な声で謂う
「宗右衛門………」
「今世は拗れ過ぎてて……こうやって突っ込んだ話を主とする機会もなかった故、暫し突っ突いてみたのじゃよ!」
「もう少し早く生まれやがれ!宗右衛門!
今世は………んとに消滅しちゃったのかと想ったやんか!ならばオレが一人で正さねぇとならねぇと躍起になってたんだよ!」
「儂もな早く生まれたかったのじゃが………此ればかりは………どうにもならなかった
本当ならば源右衛門は40前には逝くべきじゃった、そして儂は神威と同じ頃に転生する筈じゃった、なのに今世は総てに置いて狂わされた果てへと生み出されてしまった………
儂もな真贋、早く生まれたくて冥府の闇の中で焦ってはおったのじゃよ!
此の儘では果てが狂う………と躍起になっておったが、かなりの時間冥府の闇の中で過ごすしかなかった…………まぁ悪意の果てへと流れるしかなかった結果じゃな!
じゃが巻き返して逝くしかあるまいて!真贋!」
「解ってんよ!宗右衛門!
しかしおめぇは何時でも美味そうな匂いがするな!」
康太は烈に抱き締められ、烈の匂いに包まれる
その匂いは甘くてお菓子の様な、お日様の様な匂いだった
烈は「井筒屋にょ羊羹かしら?」とクンクンと自分の匂いを嗅ぐ
榊原も烈を抱き締めて匂い嗅ぐ
何処か康太に似てるお日様の匂いに、榊原は康太と烈を抱き締めた
其処へ秘書の西村がやって来て「仲良い親子だなぁ〜お前等は………」とボヤいた
榊原は「要件は何ですか?」と尋ねると西村は
「清和和実様からお電話です!」と言い内線ボタンを押した
康太は「もしもし飛鳥井家真贋です!どうされました?」と問い掛けた
『清和和実に御座います!
総ては宗右衛門殿の出された通り、妻とは離婚致しました!
そして清和の今現在の資産状況は宗右衛門殿のPCへ秘書様にお聞きして送信して起きました!』
と憑き物が落ちた様なスッキリした声で、清和和実は話した
宗右衛門は「ならば会社の債権回収はどの業者よりも早く【R&R】法律事務所が出て、やるとしようかのぉ〜!
整理して規模を縮小して、主は金属鋼業を始めるのじゃ!
主が儂の示す盤上に乗るならば、儂がその道筋を示してやろう!」と謂う
『社員達が路頭に迷わないのならば、私はどんな事でもやる所存です!』
「なれば弁護士に連絡して即座に動かれよ!」
『はい!解りました!』
清和和実は電話を切った
烈は嗤っていた
「特許取るネジと釘を開発しちゃわないとね
そしたら更に建売のグレードが上がるからね
4月から綺麗が副社長になったら一緒に研究して生み出して逝くつもりにゃのよ!」
榊原は建売のネジと釘の為の布石なのかと……と理解する
烈は「母しゃん、一緒に資産状況をチェックしてくれませんか?」と謂うと、康太はスッキリと笑い「良いぞ!サクサクやんぜ!」と笑って言った
康太にとって、やはり精神的な支柱となるのが、宗右衛門なのだと榊原は思った
康太と榊原と烈は清和鋼業の資産をチェックして、新しい会を創るに必要な資産の計算を始めた
だが殆どの資産も既に売却済みとなり、資産価値は皆無に等しかった
烈は「母しゃん、今の会社は………抵当着いてるのかしら?屋敷や個人資産を投入しても………終わってる感否めにゃいんだけど?」とボヤいた
康太は「暦也に言って、とことん調べさせるしかねぇな!」と言い自ら暦也に電話を掛けて頼んだ
榊原は「生かす価値がおありだと宗右衛門は判断されたのですか?」と問い掛けた
宗右衛門は「価値はある、あの会社には独自の技法を使う特許があるのじゃよ!
オリヴァーに言い買い付け交渉させ、ヨニー©イギリスの子会社にする事も考えた
じゃが不明瞭な点が多過ぎるのじゃよ!
じゃから見誤れば諸共となる可能性もあるからな……より慎重にならねばと思っているのじゃよ!」と説明した
榊原は考え込み………ある可能性に気付いて口を開いた
「すでに特許は他社に売買されている………か?って事ですか?」
「そうじゃな、可能性がない訳では無い
馬鹿な妻の親族や妻の弟が何もせずに辞めてやる訳が無いから………死なば諸共……会社の財産とも言える特許を先ずは売り払う可能性があるからな、慎重にならねばならぬのじゃよ!」
「清和和実はそれを知っていて………我が社に電話して来ているのですか?」
「実権は妻の親族に握られておったからな………その所為で会社は信用を失い代々続いた会社は終わりを迎える訳じゃからな
最期までやられっぱなしの情けないヤツなのか?
最後の悪足掻きをして誇りとプライドを護り通したのか?……………それを知りたかったのもあるのじゃよ
一寸の虫にも五分の魂があるのか?………
誇りと矜持を捨てねば、人は踏ん張れるし、明日を夢見られる
だが、誇りと矜持を捨てされるなれば………それはもう己を捨て去ったも同然じゃからな………」
宗右衛門の言葉は重かった
榊原はそんな宗右衛門の思いに報いる為に
「この件は僕が徹底的に調べます!
たから君は地鎮祭と羅刹天と正義と共にhellへ逝く段取りを付けなさい!」
と面倒事は引き受けると言った
烈は嬉しそうに笑い
「hell土産は絶対に買って来るわね
でもhellって通貨の単価にゃんだろ?
魔界銭、魔界札みたいなのかな?
お土産買えるかしら?」と両親の土産の心配をした
暦也との通話を終えた康太が「土産は要らねぇかんな、元気に還って来てくれ!」と言った
「解ってるわよ!母しゃん!」
烈は清和鋼業の件は両親に託し、話は地鎮祭へと戻した
康太は「一度、翔達が踊る神楽を見せてくれねぇか?後 衣装とかどうするのよ?」と問い掛けた
烈は「ならば今日、仕事を早めに上がって菩提寺へ行くのよ!
衣装は斎服を新たに作らせ、純白の袍をにーに達の分用意させたのよ!」と言った
康太は「それ、オレに言えよ!そしたらオレも金出したのに!」とボヤいた
「謂うつもりだったのよ
でもね………神楽はオレの専売特許だ!と反対されると想ったのよ………」
「まぁそうだけど、次代へ繋げなくてはならねぇならば、そうは言ってられねぇかんな!
今日からはオレも神楽を仕込んで行くとする!」
「良いにょ?母しゃんが怒るかもと想ったのよ
でもね……ボクらは其処までは長生き出来ないならば仕込まねば……飛鳥井は途絶えてしまうしかないのよ………だから……」
康太は烈を抱き締めた
「すまねぇ!烈!!オレがやらねぇとならねぇ事をお前にやらせた!
だが大丈夫だ!もう迷わねぇ!
此れからはビシバシしごいて鍛え上げて逝くかんな!」
烈はそれはそれで………にーに達大変なのよ……と想った
その日 ある程度 地鎮祭の話を決め、菩提寺へと向かった
兄達が学校を終えて菩提寺へ到着すると、稽古場には康太が座っていた
菩提寺へ来る前に慎一に翔達の斎服を持って来てくれる様に頼み、菩提寺へ来た翔達に康太は
「今日からお前達の神楽を見るとする!
そして今後は飛鳥井は皇室の神事には必ずや神楽を奉納せねばならぬから、その稽古は厳しくなるとだけ言っとく!」と告げた
榊原は慎一から渡された斎服を翔達に渡した
翔達は熨斗袋から斎服を取り出すと、制服を脱ぎ斎服を着始めた
その手つきは慣れていて、かなりの練習をして、其処まで鍛錬を続けた姿が伺えられた
着方が複雑な斎服を、此処まで着こなすとは想っていなくて、康太は子ども達の成長を感じて胸が熱くなっていた
其処まで仕込んだのは宗右衛門なのだ
どれだけ兄達に教え、弟に教えられた兄達は弟に報いる為に頑張ったのだろう………
兄弟の絆が確かに在った
斎服を着た兄達は神楽鈴を手にすると、舞う位置に立つ
翔を中心に流生、音弥、太陽、大空が少しずつ後ろにズレて並ぶ
深々と一礼すると烈は神楽の奉納の楽曲を流した
その曲に合わせて兄達は舞い始めた
息を呑む程に美しい舞いだった
だが曲の終盤になると少しの乱れが出るのを、康太は見逃さなかった
総てを通して見て康太は「めちゃくそ精度が上がってて、美しい舞だった
だけど終盤になると少しの乱れがを出るのが気になった!
うし!今日からはオレが稽古をつけるかんな!
そんな乱れなど出ねぇ様に仕込んでやんよ!」とメラメラと紅い炎を撒き散らし謂う
兄達は……僕達生きて地鎮祭に舞えるかしら?……と不安を抱く程に母は燃えていた
その日から激しい稽古が始まった
でも兄達は弱音を吐く事なく、母に食らいつき覚えて行く
榊原は其処に強い親子の愛情を感じ、感激していた
本当に良い子に育った……と目頭を押さえる
烈はその横で思案した様に
「そろそろ総ての流れを正して滔滔汨汨とならないとね………」と呟いた
その言葉を聞き逃さなかった榊原は「とうとうこつこつ?それは何なんですか?」と尋ねた
宗右衛門は「川の流れじゃよ、障害物があれば川の流れは弱まり何時しか堰き止められてしまうであろう………堰き止められれば何時しか川は氾濫して周りを巻き込んで被害を出して逝くしかない!
じゃがな、その些細な障害物を取り除いて逝けば、川は流れ続ける
そしてなんの障害もなくなれば川は滔滔汨汨と勢い良く流れて行くのじゃよ!
じゃから些細な障害も取り除く時期にあるのじゃよ!真贋も心に迷いがあるから………我が子を配置するのを迷っておった
まぁ真贋の兄達はどれもレールから外れたから、仕方がないと謂えば仕方がない結果ではあるがな…………じゃがそんな所で留まってなどおれぬのじゃよ!我等は逝かねばならぬ
血反吐を吐こうと、足をもぎ取られようとも、な!立ち止まる事は許されぬのじゃよ!
儂はその障害物を取り除く死命があるのじゃ!
真贋が迷う事なく逝ける道を指し示す死命があるのじゃよ!」と重い言葉を吐いた
何時の世も宗右衛門は真贋の進むべき道を指し示し、逝かせて来たのだ
榊原は言葉もなかった
「そろそろ花柳会へも顔を出し、花柳隆悦と花笠を蹴り飛ばさねば………ならぬか……」
と思案していた
花柳………と謂えば悦郎………
死亡したとの通知が来てるならば………両親の哀しみはかなりのモノだろう
花柳悦郎の死亡のニュースはテレビでも大々的に流された
心を病んでいた悦郎が気晴らしに行った旅行地でガードレールを突き破り……崖下に落下、そして車は炎上………遺体さえ消し炭になり……燃えた
と、ワイドショーを騒がせていた
自殺か?事故か?真相は闇の中
その真実さえ解らぬまま………花柳悦郎の生涯は幕を閉じた
今何処にいるのか?
それを知るのは飛鳥井綺麗と烈と政府関係者と、真贋のみだろう………
地鎮祭を控えた夜、東城洋人と弟の彰人の洗脳された日々が特集番組で流された
洗脳され綺麗の研究室に運び込まれた東城は淀を垂れ流し悪態をつき、暴れて………その姿は………
衝撃を世間に与えた
人である事さえ忘れてしまったのか………
食事も取らずに暴れて悪態をつき、神に助けを求めた
カメラで記録を続けたのは烈と綺麗だった
時には暴れて巻き込まれ怪我をする
洗脳された東城は小さな烈にさえ時には危害を加えて、ケントが助けに行くシーンが映し出されていた
何日も何日も気が遠くなる程の時間をかけて………寄り添い世話をして逝くしかない映像だった
一年を超える頃………やっと東城兄弟は落ち着きを取り戻し………今度は己のしてしまった事に悔いて………何度も自殺未遂を繰り返した
烈と綺麗はそれに怒る事なく説法を続け、道を説く
そして穏やかな顔になり人としての生活を始める
東城兄弟はかなり紳士的な人間だった
人としての感性を取り出すと、今度は烈は魂の邂逅を始めた
愚かだった自分を見直す
何処で漬け込まれ堕ちたか………己の駄目だった部分と向き合う
時には涙して続けられなくなりつつも、何度も何度も、来る日も来る日も繰り返えされた
そして悔いを総て吐き出させ、次は生きる死命を与える
人として生きる楽しみを与える
東城兄弟は施設の皆と仲良く談笑し、時を過ごす時もあった
無論 東城以外の存在は顔にボカシが入っていた
東城弟の顔にもボカシが入っていた
そして人として、男として、再スタートを心に決め、飛鳥井綺麗にプロポーズをするシーンは涙を誘った
BGMや編集は【R&R】が総出で手掛けた
そしてラストに真っ白な部屋に東城は座っていた
「主の名は?」
宗右衛門が問い掛ける
「飛鳥井豊に御座います!」
と確りとした口調で答える男が映し出された
「主の職業は?」
「東都日報の社長をしております!」
「ならば皆に知ら示るがよい!」
そう言われると姿勢を正し
「東都日報の社長をしています飛鳥井豊に御座います!
我が社は社長をしておりました私が洗脳されたと謂う衝撃な事件があり………信用も株も顧客も総てを失墜させてしまいました
そんな私がまだ社長を名乗れるとは思いませんでした…………全てを無くす覚悟ならばしておりました
だが宗右衛門は仰っしゃられました
主の姿を世間に晒し、二度とこの様な被害者を出さぬようにせねばならぬ………と!
私は妻を亡くし、心神喪失の状態でした
そんな時弟に気晴らしに行かないか?と誘われ……
白の教団に誘われました
其処へ行った時の記憶は確かにありますが、それ以降の記憶は何処か霞が掛かった様に曖昧です
私の意志とは違う存在に操られ………会社の信用を地に落としました
洗脳の日々は宗右衛門の手で放送され、皆様に周知される事となりました
私はもう二度と誰の手にも落ちはしない!
それを此処に宣言致します!
私を此処まで導いて下さった研究施設の皆様
そして飛鳥井宗右衛門である烈君
そして愛する我が妻 綺麗さん
本当にありがとう、此処に感謝の言葉を贈ります
今後我が社は【R&R】を全面的に支援して恩返しに励みたいと想います!」
と堂々と宣言した姿は、飛鳥井豊と謂う名を世間に知ら示めた
映像協力 【R&R】として最後には
【何者に囚われない
何者にも干渉しない
我等の世界
それが【R&R】で在る】
と流され話題を呼んだ
その頃、女優の葦名美麗が新進気鋭のカメラマン、神城きららと共に結婚発表をした
「 ご報告
この度、新進気鋭のカメラマンをしております、わたくし神城きららは一般人のお相手と結婚する事が決まりましま!
そしておめでたい事にお腹の中には彼の子もいます!
皆様には此処にご報告させて戴きます!
そして我が妹、美麗からもご報告があります!
葦名美麗です
私もこの度一般人の男性と結婚する事が決まりました
そして私も姉同様 妊娠しております!
皆様には此処にご報告させて戴きます!
今後とも我等姉妹を宜しくお願い致します
神城きらら
葦名美麗 」
報道各社のPCに知らせが入り、マスコミはその話題で賑わった
神城きらら と 葦名美麗 が姉妹だった事に驚き、事務所に真意を確かめに行くと事務所からは正式にコメントが流された
「この度 我が社のタレント葦名美麗が結婚を発表いたしました
お相手は一般人ですが、飛鳥井宗右衛門のご紹介で知り合い恋に落ち、結婚に至ったのです
どうか今後とも葦名を社共々宜しくお願い致します!
柘植 恭二」
とマスコミ各社に流した
ワイドショーは連日、女優の葦名美麗と新進気鋭のカメラマンの神城きららの話題で盛り上がった
だが飛鳥井宗右衛門が紹介したのならば、普通の存在ではないと………理解したからだ
そして後出しで東都日報社長の妻と新進気鋭のカメラマンと葦名美麗は姉妹である
と情報も小出しに出せと言われてるから、小出しに出して流していた
世間に洗脳と謂うカルチャーショックを流し、現実を叩き込みつつも、喜ばしい話題で世間を賑わす
阿賀屋蒼佑はその記事を見て「ったく宗右衛門らしくて腹立つじゃねぇかよ!」と笑った
そしてラインで「今度さ料亭で美味しいの奢ってくれよ!」と要求を伝えるのだった
烈はそのラインを見て宗右衛門で
『地鎮祭の後儂はhellへ逝かねばならぬからな
暫し多忙を極める故、直ぐには無理じゃが……
【R&R】今世紀最大の喧嘩を売る決起集会を夏前にでもする故、その時ならばかなり美味しいの期待してもよいぞ!』と送った
阿賀屋蒼佑はそれを見て「全面的にバックアップしやがれとの事ね!」と想った
「言われなくても全面的にバックアップしてやりますがな!」と阿賀屋蒼佑は心に決めていた
だからさ見せてくれよ!宗右衛門!
どデカい足跡を残す様を!!
そう思い描いて、何時もの世も飛鳥井宗右衛門の生き様の素晴らしさを想う
ともだちにシェアしよう!