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第74話 覚醒の儀

初代竜胆の覚醒の儀を行う日がやって来た この日 朝から烈と凛は禊をする為に、ケント車で菩提寺へと向かった クーは気配を消して烈の肩の上に乗っていた 車に乗ると烈はクーに「どう【眼】の気配感じる?」と問い掛けた クーは「今の所ないけど狙っているのは否めねぇからな、油断するな!」と謂う 気の抜けない一日が始まりを告げた 菩提寺へ到着すると、楽巌寺住職 城之内が待ち受けていた 城之内は「総ては宗右衛門の御心のままに準備は整っております!」と告げ深々と頭を下げた 烈は「では本殿に人を集めて下さい!」と言った 烈と竜胆は本殿広間へと向かった クーは烈の背中に乗ったまま何やら呪文をずっと唱えていた 本殿広間には、この日の為に集められたスタッフがいた そして弥勒高徳と飛鳥井神威も待機していた 烈はダミーとなるべく依り代に自分の身の一部を授け姿を取らせ、気を纏わせた 凛の依り代にも凛の身の一部を授けて姿を取らせ、気を纏わせた 依り代だと直ぐにバレてしまう可能性もあるから……と、大空が身代わりの術で烈になり御嶽山へ逝くと名乗り出てくれた 最初は断っていたが、大空の心は決まっており……揺るがないから引き受けさせろ!と康太は言った 「大空は呪術に長けて、烈とは同じ親の血を持つ存在!だから呪術も掛けやすいから大空に頼め! その代わり万全の備えをして送り出せ!」と謂れた 烈は弥勒に大空の姿を、烈の容姿に見える様に術を掛けて貰い御嶽山へ送り出す事にした 御嶽山には大空が行く事が決まった そんな時、飛鳥井由依に引き取られ新しい生活を生活を始めていた律が烈の所へやって来た 竜胆の魂の欠片が呼ぶのか? 律が凛の代役をすると申し出てくれた 「本当に?命の危険あるかもなにの?」と尋ねたが、律は「それがどうしました?ぼくはうまれたときからあすをもしれなかったみだし、りんにはおんがあるから!」と言われれば申し出を了承するしかなった 弥勒に律の姿を凛に見える様にして貰い気配を纏わせた 御嶽山へ律は凛として逝く事を決めた 元々が竜胆の魂の欠片を身に埋め込められた存在!術をかければ何方が凛なのかは解らない 神威でさえ土蔵に入っている二人を、どっちが竜胆なのか?解らなくて二人を飛ばして助けたのだ 其の神威が見分けが着かないと謂う程なのだ 御嶽山にはケントが護衛して神威が付き添う事となった 弥勒はダミーと共に逝くスタッフ達の身の安全を魔界から見守る事となった 天照大御神の八咫鏡をお貸し戴いて皆を守り、何かあったら即座に八咫鏡から飛ばして貰いその場へ飛ぶ事になっていた 総ては、この日の為に準備を万端にして来た そして時間差で幾つかダミーとして作ってある山へ行き儀式を行う 9時キッカリに時間差で一組ずつ菩提寺を出て行った 9時になり真っ先に出て行ったのは大空と律の御嶽山へ行く組だった 御嶽山は遠いから一番に出発する その後、暫くして次が出発して、何組かを城之内が送り出して逝く! 城之内は菩提寺を上げて支援の経を読み上げて気を送る 烈と凛は本殿儀式の間から神の道を通り、その日は特別に世界樹の前に出させて貰った 世界樹の前に到着し、神の道を抜け出ると世界樹の前には康太と榊原とレイが、待ち構えていた 烈は「父しゃん、御嶽山の方へ何かあったら直ぐに飛べる存在を用意して下さい!」と頼んだ 榊原は「二人は完璧で狙われると?」と問い掛けた 「そうね、可能性なら儀式終盤で妨害掛けて来るわね!」 烈が謂うと素戔嗚尊が「ならば儂が行ってやろう!」と言ってくれた 康太は「弥勒が見張っているかんな!そしたら共に行ってくれねぇか?」と頼んだ 素戔嗚尊は「委細承知した!」と言い弥勒の所へ向かった レイはニブルヘイムの声で 「この地だとて【眼】の驚異はある! 最近噂になったグレネード王国の後継者が次々に命を落とし、皇室としての存続すら危うく、また政権が軍事に支配されたら独裁国家になるしかないと危惧され国連から監視対象国とされた国 ありましたよね?根絶やしにするのなんてアイツ等にとったら、ちょっとした嫌がらせ程度の事! 竜胆の完全再生を阻止できたら、飛鳥井と謂う家が滅ぶから面白い程度の事! 炎帝は転生先の家が終焉を迎え、守るべき家が途絶える! 要するは暇つぶしなんでしょうね!」と言った 康太も「あぁ、あの国のニュースは全世界を震撼させたからな!オレも疑っていたんだよ!」とボヤいた 宗右衛門は「その国に潜り込み中から食い破るか、血族を消して終焉を迎えさせるか? そんな些細な隙間に入り込み内側から瓦解させるのは得意そうじゃからな、我らも用心せねばならぬのじゃよ!」と謂う 凛は不安そうな顔をしていた 榊原が凛を抱っこするとレイは呪文を唱えた すると凛を抱っこした榊原や康太、烈とレイの体はスーッと世界樹の中へ吸い込まれて行った 宗右衛門は「何かあったのか?」と尋ねた 康太は「魔界で決めてあった白虎の山と玄武の山、何方の山でも作られた儀式の魔法陣が破られたんだよ!オレと伊織はレイを連れて一足先に魔界に来たからな、覚醒の儀をやる場所を先に見に行ったんだよ! そしたらどっちの山も魔法陣が破られて儀式が行えなくしてあったんだよ!」と悔しそうに謂う 宗右衛門は「まぁ解りやすくしてあったからな、破られるのは解っておった 其れよりも誰が?破ったか?が問題なのじゃよ! 弥勒は誰が破ったか?目星を付けてくれている頃じゃろ?そしたら閻魔が兵を率いて逮捕してくれるってものじゃろ!」とガハハハハハッと笑い飛ばした 康太は「宗右衛門、ひょっとして………最初から冥府の地下で儀式はやると決めていたのかよ?」と問い掛けた 「母しゃん、覚醒の儀は最初から天界でやると決めていたのよ! 冥府の地下じゃ竜胆の魂が持たないからね…… そもそも人である竜胆が冥府に逝ける訳ないじゃない!」 とシレッと謂う 康太は「そうだよな?そうだよな!冥府の地下に逝くならば竜胆の魂が保つのか?と想っていたんだよ!冥府の闇に染まったお前や冥府に棲んでいたレイならまだしも………竜胆にそれが耐えられるのか?って想っていたんだよ!」と訴えた 「ガブたんにね頼んで天空神に逢って天界で儀式をやらせてもらえないか?頼んだのよ! そしたら天空神が許可され導いて貰える事になったのよ! 天界を創るに助力してくれたと謂う事で、今回に限り天界で儀式を行える事が決まったのよ!」 康太は天を仰ぎ「ならば邪魔が入らねぇように………頼むな!」と呟いた 眩い光が承知したと謂われているみたいに感じられた 世界樹は天界の広間の前に導いて下ろしてくれた 世界樹の前にはガブリエルが待ち構えていてくれ 「お待ちしておりました!」と挨拶した 「ガブたん悪かったわね!」 「いいえ、倭の国の主要な一族が消える事は許されません! 我等が祝福を与えた一族も今は一握りとなり、数を減らしました……これ以上の横槍は許しません!」 烈は広間に魔法陣を書き始めた その上を水銀を貰い榊原が流して行く 天空神 三神がそれを少し高い位置から見守っていた 儀式の魔法陣が整うとガブリエルは凛を抱き上げて、魔法陣の中央に立たせた 宗右衛門は「此れより飛鳥井竜胆 覚醒の儀を執り行う!」と宣言すると呪文を詠唱し始めた 烈の声の上にレイの声が重なり、その声の上に………ヘルメースの声が重なる まるで歌を奏でいる様に優しい呪文が頬を撫でる様に述べられている 凛はずっと目を瞑り立っていた 宗右衛門は長かった詠唱を終えると七賢人八賢者から授けられた知恵の杖を出してドンッと地面を叩いた 「初代 竜胆 主の魂を今此処に呼び起こそう! 初代 竜胆 今 目醒めて凛の体に宿るがよい!」 と謂うと凛は苦しそうに頭を抱えて唸り出した そして苦しみが止むと顔を上げ不敵に嗤う凛の姿があった 「何か……ちっこくなったな宗右衛門!」 と口の悪さは健在な初代竜胆だった 宗右衛門は「儂は人の世に転生して十年そこそこじゃからな、小さくて当たり前なのじゃ!」と笑い飛ばした 初代竜胆は康太に目を遣ると「真贋も縮んでる?」と聞くから、康太に両口を摘まれ 「そんな事を謂うのはこの口か!」とギューギュー伸ばされた 「いひゃい……いひゃ!」と初代竜胆は痛がった 榊原は康太の手を竜胆の口から離すと、宗右衛門は 「緊急事態じゃ!初代竜胆!」と言った 「大体は凛の意識の奥深くで感じて知っている! だが宗右衛門……よくもまぁこんなちっこいのに覚醒の儀をやろうとしたな 下手したら宗右衛門諸共消えるかもしれねぇ博打を打つような事を真贋も良くも許したな!」 初代竜胆の言葉に康太は「時間がねぇからな、オレ等はその博打を打つような賭けにも縋るしかなかった!それで欠けた竜胆の魂がなんとかなるならば、オレ等はそれをするしかなかった!」と謂う 其れ程に今世は大変で予測のつかない事ばかりだったのだろう……… 初代竜胆は「元は俺だ!今の竜胆と同化する事など容易い事だ!」と嗤う 其れこそが竜胆の嗤いだった 凛は自分の中の欠けた部分が満ちるのを感じていた 魂が失くした自分を取り戻す そんな感じだった 何時も何時も何か足らない感じがしていた それが、今は満ち溢れ一つになるのだ 竜胆は自分の剣を出した 鬼切(髭切)の剣は竜胆の手にしっくりと馴染んでいた 「何か満ち溢れて来てるぜ!」と言った 宗右衛門は「その魂が竜胆に定着したら完全覚醒の儀を執り行う! そしたら竜胆の持つ能力は完全覚醒をし、本来の竜胆として一族を導く事が出来る!」と言った 竜胆は泣きながら「俺は飛鳥井竜胆!次代に引き継ぐまでは、竜胆の座は誰にも譲りはしねぇ!」と言った 宗右衛門は「それでよい!主は竜胆以外にはなれぬ存在!次代に引き継ぐまでは竜胆を全うするかよい!」と言葉を贈った 康太は「覚醒の儀は成功したな!次は完全覚醒の儀だな!それは何時頃やるのよ?」と尋ねた だが烈はそれには答えなかった 顔を青褪めさせ「やっぱし、かなにーの所へ出たのよ!」と叫んだ 康太は「それはどう言う事よ?」と尋ねた 「ボクは全てを完璧にする為に、ボクその者になり詠唱を伝える式神を、かなにーの服に忍び込ませていたのよ! その式神が攻撃受けたのよ! やっぱ……天界と人の世では少し遅れが出たのね……多分呪文の終盤に狙われたのよ」 と言い烈は服を捲った すると脇腹に切り裂かれた様な傷が四本出来て血を流していた ガブリエルが即座に烈の傷を癒やしてやる 康太は「その場には大歳神もいるし、弥勒と素戔嗚尊が駆け付けてるんだ!負けねぇだろ?」と言った 宗右衛門は「完全覚醒の儀は1ヶ月後!場はまだ秘密じゃ!じゃがその準備は総ては整い、定めに乗った今、揺るぎない明日となった!」と言い烈は意識を飛ばして倒れた 榊原は力なく倒れた我が子を支え、魔法陣を消し去った 康太は「世話になったなガブリエル、そして天空神三神!本当に助かった!」と礼を言った 天空神 ウラノスは「病院へ送ってやりましょう!早く幼な子を医者とやらに見せるがよい!」と言った 足元が光り輝くと榊原と康太は凛とレイを引き寄せ、榊原は烈を抱き上げたまま立っていた 眩い光が皆を包むと、スーッと光の中に包まれ、目が開けられない状態だった ようゆく光を感じず目が開けられる状態になり、そっと目を開けると飛鳥井記念病院の正面玄関入口に立っていた 榊原は院内に入って行くと受付に診察を依頼した 直様 久遠がやって来て意識のない烈を抱き上げると、憔悴している凛とレイに 「お前等も診察だ!来るんだ!」と言い連れて行った 康太は待ち合いのソファーにドサッと座ると 「何とかなったな、此方は……大空の方は無事か連絡してくれよ!」と言った 榊原は直様 神威に電話した かなり鳴らしてやっと電話に出た神威は息切れをして「後で掛け直す!」と言い電話をぶち切った 不安な面持ちで待つ事一時間、やっと神威から連絡があった 電話に出た神威に「無事なのですか?」と尋ねる 『大空と律は無事じゃが、親父と儂と弥勒は負傷した!今から神の道を通り久遠の所へ行くつもりだ!大空と律は無事だ、心配するな! もう術も解いたし帰宅するだけじゃ!』 横で聞いていた康太が 「え?神威と素戔嗚尊と弥勒が負傷したって? 嘘…………一体何が出たんだよ!」と叫んだ 『それも病院へ行ってからじゃな!』 と言い神威は電話を切った 康太は「何があったのよ?」と呟いた 榊原は「僕は大空と律が心配なので行って見て来ましょうか?」と言った 「待て伊織………行かなくて良い………」 「え?大丈夫なんですか?」 「あの神威だ、護り通して大空と律を連れて来てすれる筈だ 弥勒も叔父貴もいるんだ……無傷に決まってる…だろ?」 「あ!あの方もいたのですね」 康太と榊原は待つしかないと待った 烈と凛とレイの診察も長引いて、康太と榊原は只管待つしかなかった 20分位待った頃、血だらけの神威が病院へやって来た その横には血だらけの素戔嗚尊と弥勒の姿があった そして素戔嗚尊は血だらけなのに大空を背負っていた 神威も血だらけなのに律を背負っていた 康太は「おい!縫って貰えよ!」と言うと榊原は受付に「怪我人が来ました!」と走って伝えた 烈とレイの処置を終えた久遠がやって来て 「怪我の状況を今すぐ見せやがれ!」と言い神威と弥勒と素戔嗚尊を引っ張って行った 榊原は大空と律に「怪我はありませんか?」と問い掛けた 大空は「僕が傷付かない様に……烈、身代わりの札入れてたみたいなの! 僕は怪我してないけど烈は?烈は怪我したんでしょ?」と泣きながら訴えた 榊原が「烈の怪我はガブリエルが即座に直して癒やしてくれました、なので大丈夫です!」と我が子を安心させた そして律に「君も本当に怖い目に合わせてしまって………すみませんでしたね」と謝罪した 「ぼくはけがしてないから……」と言うが目の前で戦闘が繰り広げられたのだ、その恐怖は今も抜けてはいなくて震えていた 康太は「何がお前等を襲って来たんだ?」と問い掛けた すると大空が「クーちゃんみたいな体してたけど、真っ黒なヤツが突然空間を切り裂き現れて…………僕を護ったケントを傷付けて、僕を切り裂いたんだ 其れからは弥勒さんと神威さんともう一人の人が闘っていたんです! 苦戦していた時、もう一人の人の前に剣が飛んで来て、黒いクーちゃんみたいなヤツを串刺しにしたんです! だけど死ななくて……もう一人の人はその剣を引き抜き闘っていました それで黒いクーちゃんみたいなのは、姿を消したけど…………全員血塗れで怪我しまくっていました!」と涙ながらに説明した それを聞いた康太は「レイのヤツやりやがったな………」とボヤいた 榊原も「ひょっとして天羽々斬ですかね?」と呟いた 康太は剣を探していたと聞いていたし、多分見付けて飛ばしたんだと想った 「だろ?きっと居場所を探り当てて飛ばしたんだよ!んとにアイツは……」 と康太はボヤいた 大空は両親の顔を見て、やっと安堵の息を吐き出した だが律はずっと震えていた 恐怖が抜けないのだ 当たり前だ、まだ幼き子の前で血塗れになる程の闘いが繰り広げられれば………トラウマになりかねない衝撃だろう 榊原は律を抱き締めて安心させようとした すると其処へ烈から離れたクーがやって来て、律の頭をパクッと食べた………… 大空は「あ〜クーちゃん!駄目だよ!お腹へってても食べちゃ駄目だってば!」と慌てて離そうとしたが、ビクともしなかった 一頻り律の頭に齧り付いていたが、齧るのを止めると、前足で額を抑えて 「此れでお前の恐怖は緩和してやった 恐れるな律!お前は竜胆と共に生きて来た兵なんだ!んな所でトラウマになるんじゃねぇぞ!」と言った 律は手が今は震えてないのを理解する 律は心底安堵して「ありがとう!」と言った クーは「烈はお前の幸せだけを願っている! 竜胆もお前の幸せを願っている! 飛鳥井の家族は皆、お前の幸せを祈っている! だから胸を張り幸せになれ!」とエールを送る 律は「ありがとうねこさん!」と言い涙を拭いた 康太は飛鳥井由依に律のお迎えを依頼した すると直様 由依が律をお迎えに来た 「律!怪我としてない?」と心配して体を探る手は優しかった 律は「かあさん けがしてないから!」と言い母に抱き着いた 由依は我が子を抱き締めて「良かった………」と安堵した 榊原は由依に「今日はありがとうございました!もう連れ帰って構いません!」と謂う 由依は「烈ちゃんは?いないのですか?」と問い掛けた 「烈は今 久遠先生の処置を受けています」 榊原が言うと由依は「え?………大丈夫なのですか?」と心配して問い掛けた 「大丈夫です、ガス欠ですから、 其れよりも貴方は律を早く連れ帰り寝かせて上げてください!」 と言った 由依は「ごめんなさい!烈ちゃんは雇用主ですから!雇用主の心配をしてしまうのです! やっぱり仕事がなくなるのは困るので!」と笑って言った 康太が「烈は大丈夫だ!まだまだ1000年続く果てへと導いていねぇかんな! 次代もまだまだ育て中だ、逝けるかよ!」と言う 由依は「それもそうですね!」と納得して律を連れて帰宅した 暫く待合室で待ってると鈴木泰地がやって来て 「烈君とレイ君は入院になりました! 凛君も今は個室に入れてあります 個室の方へ移って下さい!」と呼びに来た 康太は「おっさん達の方は?どうなってるのよ?」と問い掛けると 泰地は「あの方達も入院です!傷が塞がらねば出さねぇからな!と義泰先生と院長とで脅してました!」と説明 其れ程に深い傷を負ったのだろう 康太と榊原と大空は泰地に案内され個室へと移動した まずは烈とレイの個室へと向かう クーは大空の肩に飛び乗り一緒に向かった 泰地は「神威さん達の個室はこの隣です!何時でもお逢いしても構わないそうです!では俺は此れで!」と言い個室に案内して直様仕事に戻った 康太と榊原と大空は個室に入ると、烈とレイと凛は点滴されて眠っていた 大空は弟のベッドへ走り手を握り 弟の無事を確かめるとレイの頭を撫でた そして凛の方へ行くと凛の頭も撫でて、安堵する 康太は「隣の病室へ行ってくる、少し頼むな!」と言うと、大空は「はい!大丈夫だから!」と言い両親を送り出した 康太と榊原は隣の個室へ行くとドアをノックし個室へと入って行った 個室の中には…………悲惨な光景が漂っていた 包帯だらけのおっさんが3人、ベッドの上で点滴を打たれていた 神威は康太と榊原を見ると「護り通したぞ!あの二人は無傷だったろ?」と言いニカッと笑った 素戔嗚尊も「我が孫の大切な存在!この命を賭したとしても完遂すると決めておった!」と言い同じ顔でニカッと笑った 弥勒は「大空が呪文を唱えていたけど、あれは烈の式神が発していた詠唱だろ? 大空が唱える詠唱は、総てが烈と同化していたから詠唱の終盤で邪魔に入られた その所為で大空は襲われ詠唱を終えてしまった 式神を傷つけるって事は、即ち烈に返ったんだろ?烈は大丈夫だったのかよ?」と心配して問い掛けた 康太は「我等は天界にいた、烈は覚醒の儀を完遂させ少し経った後に大空の異変を感じていた そしてその怪我はガブリエルが即座に癒やしてくれたから大丈夫だ! 天界と人の世では時差があるみてぇだから、それが幸いしたが、下手したら烈は詠唱を途切れさせざるを得なかったと謂う訳か……」と謂うと弥勒は顔色を変えた 「我等も突然何も無い空間から姿を現した黒いジャガーの姿に数分遅れを取ってしまった 八咫鏡を通り駆けつけて来た時には、大空を護ったケントは傷付き薙ぎ倒され大空の体は切り裂かれてしまった………… 我等はその後は必死に攻防戦を繰り広げていた そんな時に何処からともなく剣が空から降って来て、黒いジャガーを貫いた だが黒いジャガーはそれでは死ななかった 素戔嗚がその剣を嬉々として黒いジャガーから抜いて手にして闘っていた その強さに黒いジャガーは逃げて行った 素戔嗚尊が言うには、その剣は人の世にいた頃使っていた剣だとか……そしてその剣を飛ばしたのはレイだと言っていた 何でも『そーちゃんにきいてりゅから、たちかめにいきゅね!』と言っていた、と素戔嗚が言ってたからな」 と全容を話した 康太は「叔父貴はやはり剣の方がしっくり来るのか?」と考えに耽って呟いた 弥勒は「大勢を相手するならば槍は優れているが、個人戦みたいな闘いならば剣は小回りが利く分動きやすいから有利にはなる!って言ってたな」と話す 榊原は「貴方達が3人で闘っても黒いのには、此れだけの怪我を負わされてしまうのですか?」と問い掛けた 素戔嗚尊は「ヤツの爪は刃みたいで受ければ肉を切り裂く様に出来ておるからな 間合いを詰められれば………切り刻まれるしかなかった 況してや黒いのは大空と律を狙っていたからな 守っている分此方は不利な状況でもあったからな………」と全身に包帯を巻かれ酷い惨状を物語る 榊原は3人に深々と頭を下げ 「大空と律を護って下さりありがとうございました!」と礼を述べた 弥勒は「あ、そう謂えば、ケントは内臓が出る怪我したからトキが咥えて一足早く久遠にみせに連れに来てるんたが?どうなった?」と問い掛けた 榊原は「え!!!だからケントは一緒にいなかったのですね!!」と叫び病室を後にした 弥勒は「素戔嗚がトキを連れて一緒に来てくれたんだが……黒いのはトキがまるで其処にいないかの様に無視して俺等と闘い続けていた………黒いのに取ってトキはどんな立ち位置なんだよ?」と問い掛けた 康太は「あ~羽根で一吹きで飛ばされるからな、関わりたくねぇんだろ? 一鳴きで総てが燃えるらしいし、だがその実その他の力は解らねぇ、まだどんな力を秘めているか? 全容は明らかにされてねぇし、近寄りたくねぇんじゃね?」と簡単に言った 「聖鳥 朱鷺………恐ろしい存在なんだな………」 素戔嗚尊と一緒に畑に出て、首輪を着けられ一緒に散歩をする姿からは想像すら出来なかった 康太は「烈にとったら聖鳥じゃねぇトキなんだよ!んなすげぇ力なんて必要じゃねぇんだけどな………そうか黒いヤツはレイが神聖の剥奪していた時にそれを視ていたって事か……」と呟いた 榊原が戻って来て「ケントはICUに入ってました! 大量出血だったので血が足らない状況だったので、輸血の手配をしていたらトキが自分の体を嘴で刺して、切り裂かれた傷にその血を流し込み『今すぐ縫え!早く縫え!』と言ったそうです………」と伝えた それを聞いて康太はたらーんとなった なんて無謀な事してるのよ?聖鳥の癖に!!と想った そして「トリの血なんて輸血して大丈夫なのかよ?」と難癖に近い事を言うのだ 「久遠先生も血液型も調べずにそんな事出来るか!と叫んだそうですが………儂の血は拒否反応など示さず馴染むから早く縫え!と半ば脅され縫ったそうです………」と事情を話す 久遠……大変だったろうな……と康太はつくづく想った 「………聖鳥だからそもそも血液型は関係ねぇのか?」 「………それは僕には解りませんが、ケントは今はバイタル安定してて……驚異的な治癒力だと久遠がボヤいていました………」 「ならばトキはもう還ったのか?」 「いいえ、院長室でトマトジュース飲ませて貰っていました………」 それ………突っ込んで良いのか? 「トキ………トマトジュースなんて飲むのか………」とボヤいた そこへペタペタ廊下を歩く足音がして、止まるとドアが開いた ドアを開けたのはトキで、トキは病室へ入って来ると素戔嗚尊の所へ行き 「大丈夫なのか?」と心配して問い掛けた 素戔嗚尊はトキの頭を撫で「大丈夫じゃ!」と言った トキは「クーを呼んでくれ!」と言った 榊原は烈が眠る個室へ行くと「クー、トキが呼んでいます!」と言い抱き上げて隣の病室へ連れて行った トキはクーを見ると「毒素とか呪詛とか残ってねぇか? 爪で切り裂かれたならばなにかしてそうだから見てくれ!」と頼んだ クーは榊原の腕から飛び降りると素戔嗚尊のベッドに飛び移りクンクンと匂いを嗅いた 「毒や呪詛の匂いはしねぇけど、酷いな……何をどうやったら此処までの怪我をするのよ?」と問い掛けた 素戔嗚尊はクーに良く似た漆黒の体をした奴との攻防戦を話した クーは「本体…………出て来やがったのか?」と呟いた 康太は「それはどう言う事なのよ?」と問い質した クーは「烈が桃源郷近くに出向いた時、俺は黒いジャガーと闘った! その時のヤツは互角の闘いで決着がつきそうにないと見越して黒いヤツは姿を消した だが俺も黒いヤツも互いに怪我をしていた 少し前に、俺は烈と共に竜胆の覚醒の儀を相談をする為に、天界へガブリエルと共に出向き話をする機会があった その時、天空神と話をした 天空神の話では、欧米や各国に現れた黒いヤツは 爪が刃みたいに鋭く、銃弾でさえ倒れなかったと言う! 素戔嗚殿達が襲われたヤツに特徴に似てるなと想ったんだよ! 俺が桃源郷近くで闘ったヤツは俺の爪で傷ついていた、剣で貫かれたなら息絶えていた筈だ それが死んでねぇならば? …………それは本体かも知れねぇって事になる」と説明した 康太は「成る程!」と納得した クーは「その黒いのもコピーかは解らねぇが、強度を上げて来たのは否めねぇから、これ以上の警戒が必要となるのは確かだな!」とシメた 康太はその言葉に嫌な顔をして 「オレ等は、別に敵じゃねぇのにな、んとにチョッカイ掛けて来るの止めてくれねぇかな?」とボヤいた そんなボヤきを受けクーは話し出した 「己こそが七色に輝く地球(ほし)を正す者だと想って己の役目を全うしてる気でいる 己こそが正しい道へ導ける先導者だと信じて突き進むあやつは………何時しか己こそが全知全能の神になり全てを手中に収めようとした愚か者だ だが総てが自分のモノにならない、自分の正しい道に導けないと解ると、総てを滅ぼして他の星に移り………全てを滅ぼして来た……… だから我等は愚か者の手が届かない場所に新たな地球(ほし)を創り再生の道を辿らせ始めた………絶望するより信じよう そんな想いで、その地球(ほし)に生きる生命を与えて新しい息吹を吹き込んでいる だが愚かな人間は………文明を手に入れると地球(ほし)を破壊しに掛かって滅びへと進む 滅ぶのは何もテスカトリポカだけではない 愚かな人間と謂う生き物が滅びへと向かうのだ だがその中にも足掻き苦しみながらも闘う者達がいるから、もう絶望はしないと申そう 我等は己の手でこの地球(ほし)を護るのだ 無いものねだりしてるヤツには退場願うだけだ! だが忘れるではない! テスカトリポカをもし倒したとしても、愚かな奴等は消える事はないだろう……… この地球(ほし)を生かすのは、明日を生きる者達で、この地球(ほし)を滅ぼすのは一握りの愚か者である事を!」…………と。 康太はその言葉を聞き「創造神………んな事は解ってるに決まってるやんか!」と怒って謂う 弥勒は「え???創造神???」と信じられない言葉を投げかけた 榊原は「クーは創造神から託された白いクーガですから、創造神の言葉を紡ぎ出す事なんて容易いのでしょう!」と謂う クーは更に続ける 「烈が怪我するから爪に刃は仕込まなかったが………対抗するべき存在を生み出す事にした クーは烈と生涯を共にすると決めた存在………そんな存在に鋭い爪は……… であるから、暫し待たれよ 今後は黒いのが現れたら駆け付ける存在を創るとしよう! そして烈から黒曜石に対抗できる素材を天空神を通して知らされた故、何体か創り各国の神に与えると決めている! 我等は己の手で未来を掴み取る! その為の努力をせねばな………」 そう言い、いきなり気配が消えた クーは「俺……お払い箱になるのかよ?」と悲しげに呟いた 榊原はクー抱き上げ「君は烈のクーでしょ?」と言った 康太は立ち上がると「怪我人の病室に長いは無用だからな、今日は此れで帰るとする! 後で誰かを寄越すから、待っててくれ!」と言い病室を後にした 榊原はクーを烈の元に戻すと慎一に電話を入れ、誰か病室に来て付き添ってくれと頼んだ 慎一は隣りにいた一生に話をすると、俺が行くと申し出てくれた 慎一は『一生が今から病室へ行きます!』と約束してくれた 暫くすると一生が個室にやって来てくれ、康太と榊原と大空は飛鳥井の家に還る事にした 康太は帰宅する間ずっと「んとに面倒くせぇなぁ!」とボヤいていた 段々とスケールのデカい話になって行くのは何故よ? 竜胆の魂が何分割可にされただけでも、今世はどんだけ想定外の事が起きてるのか? 把握するのも頭痛がして来るレベルなのに…… 邪魔入るか? んとに………ゴキブリ並の生命力で嫌がらせして来るの止めてくれねぇかな? ズーンっと重い空気を背負う妻をどうやって宥めようか?と榊原は思案しつつ飛鳥井の家に還った だが飛鳥井の家に還ると来客が来ていた 応接間に行くとフランス人形が夫に愛されているのか?艶々の美人度を上げて座っていた 康太は「ジョセフィーヌ・アデレーゼ・フィッツロイ………何の用なんだよ?」とソファーに座り尋ねた ジョセフィーヌは康太に深々と頭を下げた 「私は女王の命を受けて烈とレイの護衛に来ました!これから始まる更に熾烈な闘いに女王は傍に行き二人を守りなさいと申されたのです! で、その二人は何処ですか?」 と言い護衛対象相手を探した 康太は「烈とレイなら入院してる!それにお前みたいな派手なのが倭の国にいたら余計目立つやんか!」とボヤいた ジョセフィーヌは「目立つならば影から守ります!」と一歩も引かない姿勢だった 康太は、あ~またどうして面倒くせぇのが飛び込んで来るかな? と想った ジョセフィーヌは姿勢を正すと 「それともう一つ、私は女王の命で地獄界の方とお逢いする死命を授かって来ています! どうか、地獄界の方と逢わせては下さいませんか?」と頼んだ 地獄界と聞き康太と榊原は眉を顰めた 康太は「あんで逢いたいんだよ?」と尋ねた ジョセフィーヌは康太の瞳を射抜いて 「hellに地獄界の羅刹天と謂うお方が現れ、hellを混乱に陥らせているみたいなので………」 「それって何時頃の話よ?」 「1月上旬の話です」 「ならそれは偽物だな!」 「え??何故それが解るのですか?」 「烈が言うにはその頃の羅刹天は気を紛らわせる為にか七賢人八賢者の新居建設に尽力を注いでくれていたと言っていた その羅刹天が地獄界を抜け出て逝ける理由がねぇんだよ! 今回も羅刹天の傀儡が悪さをしていると考えて良いだろ? 魔界も羅刹天の傀儡にあわやと謂う自体を引き起こされ、一触即発になったかんな!」 ジョセフィーヌは康太の言葉を聞き考え込んだ そして「一度それを伝えにhellへ来ては貰えませんか?」と問い掛けた 「それは無理だな、今、そんなに飛鳥井を離れる訳にはいかねぇかんな!」 「……ですが………hellにいる羅刹天との違いが解らないし、区別すら付きません…何卒……!」 「烈に行って貰えよ、3日ならば許可してやる! 羅刹天も烈とならhellへ行ってくれるだろ?」 と言った 「その烈さんは今入院中では………どうあっても直ぐには動けませんね……… あ、その烈さんってロザリー様夫妻が我が子の様に愛していると申されているお方で、公爵の称号を女王自ら与えられた子ですよね?」 「それは知らん!」 「え?貴方のお子様なのでは?」 「烈にとったら貴族や公爵の称号なんて必要ねぇんだよ!肩書も何も必要ねぇ! 我等は飛鳥井の為に生きている存在、それだけだからな!」 何とも重い言葉をサラッと謂われて、ジョセフィーヌは言葉もなかった 「この近くのホテルに滞在致します! 意識が戻ったと護衛の者から連絡が届き次第、お逢いしに行きます!それは許して下さいますか?」 「ならば逢いに行けば良い! だが子供だと甘く見てると………痛い目を見る事になる、とだけ先に言っといてやる!」 ジョセフィーヌは十歳の子供だと報告書を読んでいた 十歳の子供………だけど油断の出来ない子なのだと心に刻んだ 公爵の称号を持つ十歳の子供……末恐ろしいって謂えば恐ろしいかも…… ジョセフィーヌは不安な思いを抱きつつも、自分の電話番号を書いた紙をテーブルの上に置いて還って行った ジョセフィーヌが還ると康太は、うんざりとした顔をした 「あんでまた羅刹天がhellに出るんだよ!」とボヤく 榊原は「あの素朴な疑問ですが、十二支天の羅刹天と地獄界にいる羅刹天とは全く別物なのですか?」と尋ねた 「全く別の神で倭の国の為に生まれたのが十二支天なんだよ!羅刹天は中華の国の中で生まれた羅刹鬼と謂う鬼神だからな、生まれた意味合いも存在も全く違う存在だ!地獄界には炎帝達五帝も存在している 四神だって地獄界が本場の龍族だからな存在しているんだよ! 天龍達一部の龍族が魔界へ下り魔界に根を下ろし金龍に繋いで今に至るんだよ!」と説明した 榊原はそれで納得した 「ならばhellにいる羅刹天は………傀儡ですか?」 「だろ?元始天尊の傀儡だってまだ見付かってねぇからな………何か仕掛ける気なら、出て来てなにかやるだろ?」と言うから榊原でさえ面倒になって来た 榊原は「この飛鳥井の存続が掛かっている〘今〙に他国でも面倒な事が勃発しているのですね ………………本当に面倒臭い事ばかり起きますね」とボヤく 「んとにな兄者にhellに羅刹天が現れたと知らせとかねぇとな………」と言い康太は携帯を手にして、聡一郎に「直ぐに応接間に来てくれ!」と頼んだ 外に出掛けていた聡一郎は大きな袋を抱えて応接間にやって来た 「何ですか?康太!」 康太は大きな袋を見て「それはあんだよ?」と問い掛けた 「この袋はヘルシーで美味しいスィーツと、烈の服とレイ達ちっこいの3人の服です!」と笑顔で謂う 「それはありがとうな聡一郎 お買い物して還った所悪いけど魔界へ行って兄者に話をして来てくれねぇか?」と頼んだ 「話し?何か問題でも持ち上がりましたか?」 聡一郎が聞くと康太は説明を始めた 話を聞いた聡一郎は「解りました、直ぐに行きます!」と言い大荷物を部屋に持って行き、其処から神の道を通り魔界へと向かった 大空は心配そうな顔で両親を見ていた 榊原はそんな大空を抱き締めて「大丈夫です!」と安心させるように言った 問題はどんどん増えて行く しかもどんどん大きくなって行くのだ 山盛りの問題を抱えて康太は「今世はんとに楽は出来ねぇな………」とボヤく 榊原は「宗右衛門と共に転生して今までも楽は出来ませんでしたが、今世は特に……苦難続きですからね………」とボヤいた 大空は父がボヤく姿などお目に掛かった事がないから驚いていた 何事もスムーズに熟す父が………ボヤく姿などお目に掛かる事などないと想っていた だが榊原は大空の想いなど知る事もなくボヤく 「本当に宗右衛門とワンセット転生は怒涛の日々の連続ですね………未だに揺れた髪の毛を見れば………楽な日など来ないのが解りますからね……」 その言葉に康太も「だよな、揺れてるよな………髪の水分無くなる程に揺れてるよな! 俺の髪も揺れる時有るけど、あんなに何ヶ月も勝機も運気も呼び寄せる事はした事ねぇぞ!」とボヤきまくっていた 「兄達が常にヘアオイル塗ってるのですが、すぐにカサカサになるので嘆いてますからね 烈はどれだけの嵐呼んでるんですかね?」 「そりゃ世界を巻き込み喧嘩を売るらしいからな 相当の勝機も運気も呼んでるんじゃね?」 「今世も楽させる気は皆無なんでしょうね」 「だな、んとに宗右衛門には大変な目に何度もあわされてるかんな……」 両親のボヤきは相当なモノで、大空は言葉を失っていた 其処へ聡一郎が還って来て、応接間の鍵を掛けて部屋に結界を張ると八咫鏡を康太と榊原の前に置いた 鏡には閻魔大魔王が映し出されていた 『炎帝、司命から大まかな話しは聞きました! 今後の此方の立ち位置とか話さねばなりませんので、一度魔界へ来て下さい!』 「それ烈が目醒めてからで良いか?」 『烈!どうしたのですか? 素戔嗚殿も還られておられないので建御雷神が心配していました!』 「烈は今入院中だ、そして叔父貴も入院中だ! 叔父貴の倅と弥勒も入院中だ!」 『っ………!!!それは詳しく話して貰わねばなりませんね!今直ぐ其処へ逝きます!』 と言い八咫鏡を通して飛鳥井の応接間へと向かい姿を現した 応接間に姿を現した閻魔大魔王は即座にソファーに座り「ではお聞かせ下さい!」と言った 康太はゲンナリしていたから、仕方なく榊原が説明した 閻魔はずっと榊原の話を聞いていて………聞き終わると考え込んでいた そして静かに口を開いた 「我等 魔界の神々は骨も塵も遺さず浄化し冥土の旅路へ渡り魂が安らかな終わりを迎える時を待つ………我等は生前は人では無い なので骨さえないが、地獄界は違うのでしょうか?」と素朴な疑問を口にした 康太は「元始天尊は三尊が一人、生前は人であったからな立派な陵墓・陵園がある筈だ 羅刹天は羅刹鬼として人を食っていたが、仏の道を知り煩悩を食う善神となり仏教の守護神となったと聞くからな、生前はあったし墓もあったんだろ?だから傀儡を創られた てなきゃ他国に羅刹天が現れ……ってのは無理があるやろ?」とボヤく 「我等はどう立ち回ったら良いのですか?」 立ち回り方を間違えたら取り返しのつかない事になりそうで、閻魔は問い掛けた 「イギリスから女王の番犬が来日して来ている どの道………烈はイギリスへ逝くしかねぇんだよ! その時兄者や羅刹天もイギリスへ逝くしかねぇんだよ! それも………竜胆の完全覚醒の儀が行われるまでの一ヶ月の間のどれかで行って貰うしかねぇ!」 「解りました!ならば私が留守の間は誰に閻魔の代理をさせます?」 「一度星詠みの婆婆か七賢人八賢者に聞いて見ると良い 烈はもう少し寝かせてやりてぇからな そうしてくれると助かるんだが…………」 「解りました、この後に桃源郷近くの家を訪ねます!その時に地獄界の羅刹天や元始天尊にも話をしに行きたいと想います!」 「だな…………それしかねぇかんな………」 康太はそう言い少し考え込む様に黙り…………口を開いた 「兄者………イギリスの女王の番犬に逢われるか?」 「私は人と逢っても………大丈夫なのでしょうか?」 「今はそんな事を言ってられる時じゃねぇからな 緊急事態と謂う事で話されたらどうだ?」 「ではお逢いするしましょう!」 閻魔が言うと康太はジョセフィーヌが置いて行った電話番号を手にして掛け始めた ワンコールで出た電話の持ち主は警戒した声で 『もしもし………』と言った 「飛鳥井康太だ、少し話があるからまた飛鳥井の家に戻って来てくれねぇか?」 『Oh!Sorry!戻りたいのは山々だが………私の護衛をしていた先頭車両に突進して来た車が突っ込んで大破させられたので、今POLICEが来て現場検証とやらをするらしくて動けぬの状態なんです………』 と、ジョセフィーヌもパニックになってるのか?何時もと違う口調になっていたが、必死に説明した 康太は「今直ぐに唐沢に連絡する!そしたら事情を汲み取り動いてくれるだろう!暫し待たれよ!」と言い電話を切った 康太は直様、唐沢に電話をした ワンコールで電話に出た唐沢に康太は 「女王の番犬が来日している その女王の番犬の警護の車に暴走車が突っ込んだらしい!対処を頼む!」 と謂うと唐沢は『えぇぇぇ!!!女王の番犬が来日して来るなんて聞いてませんよ! 特使扱いの存在がそんなにバンバン気軽に来られては困るんだけどぉ~!』とボヤく 「地元の警察では手に余る、直様事故処理を頼みてぇ!」 『直ぐに動きますとも! あ!貴方に聞きたい事もあったからタイミングは良かったです!では後程!』と言い電話を切った 康太は唐沢と電話を切った後に嫌な顔をしていた ただでさえ問題山積なのに、これ以上の問題なんて………本当に御免だ! 「あんでこうも…………問題が吹き出して来るかな?」と康太はボヤいた 閻魔は「魔界に魔法陣を書きに来た時、当分は頭が痛くなる程の問題がウヨウヨ、ゴロゴロ、バタバタ、ゾロゾロ湧き出ると烈が言ってました!」としれっと言った 康太は「なら烈はこの状態が解っていやがったのかよ?」と少し怒りを含んで謂う 「星詠みの婆婆から警告として入っていたから、改めて自分でも調べたらウヨウヨ、ゴロゴロ、バタバタ、ゾロゾロと問題が吹き出て来るのが解って『えんちゃん………母しゃんきっと暴れるわよ……』と危惧していましたからね」 康太はそれを聞いて「クソ!ウヨウヨ出てるやんか!次がゴロゴロ、バタバタでゾロゾロと続くって事かよ……」とガックシとなった 閻魔は良くもまぁウヨウヨ、ゴロゴロ、バタバタ、ゾロゾロの意味合いが解るモノだな………と感心した 其処へ唐沢が飛鳥井を訪ねてやって来た 玄関の呼び鈴を押されカメラを作動すると、唐沢とジョセフィーヌが立っていた 榊原は玄関へ行き、ドアを開け二人を応接間に招き入れた 唐沢は康太の顔を見ると「事故処理はうちのチームのメンバーが当たっている! 100%爆走して来た奴の仕業だからな、調べて適切な処置を取る!」と説明した ジョセフィーヌがソファーに座ると康太は 「此方は魔界の閻魔大魔王様にあられる!」と説明した 「Satan?」 「いやいや、閻魔………英語でなんと説明したら良いんだ?」 康太にはサッパリ解らなかった 榊原も何と言ったら理解されるのか?考えていた ジョセフィーヌは「一番偉いのか?」と尋ねた 「そうだ、一番偉い存在であられる!」 ジョセフィーヌは姿勢を正すと閻魔に深々と頭を下げ 「閻魔殿は羅刹天様には合われた事あるのデスか?」そう問い掛けた 「有りますよ、彼等とは幾度も話をして、警戒をより強めて、今後は情報の交換をして行く協定も結びましたから!」 「ならば是非、羅刹天殿に逢わせては貰えませぬか?」 「それは烈に謂われるとよい! 我等が申せば警戒される事も、烈なれば受け入れて貰える可能性もある!」 閻魔はキッパリ言った 康太は閻魔に「そう謂えば魔界に張った魔法陣を壊した犯人見つかったのかよ?」と問い掛け 閻魔は表情を強張らせ………「ええ……ですが……甚大な被害を出して逃げられました」と答えた 「兄者、犯人は?」 「黒いジャガーでした」 「え?黒いジャガーは御嶽山へ行く前に悪さして行ったのかよ?」 「何人か洗脳していたのか? 魔法陣を壊したのは……私の部下の者でした………」 「………甚大な被害って?」 「素戔嗚殿達は爪が刃の黒いのにやられたとか? まさに魔界に黒いヤツが現れて、手引した者達を皆殺しにしてゴロゴロとバタバタと倒れて消えたのです!」 「ゴロゴロって………ゴロゴロ……バタバタって烈が言っていた事かよ? ならばゾロゾロは?」 康太が呟くと玄関のチャイムが鳴った 榊原がカメラを作動すると堂嶋正義と三木繁雄が立っていた

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