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第7話
4章 兄王の番に
ルシアの最初の発情から三月が過ぎようとした頃、ルシアに発情の兆候が表れた。それは直ちに国王に伝えられる。
「ルシア様、お加減いかがでしょうか?」
少しずつ体の奥から熱を帯びているのだろう、火照った顔のルシアにセリカは心配げに問う。
「うん……少し熱っぽい……」
ルシアの返事は弱弱しい。フェリックスの訪れが途絶えてから三ヶ月以上になる。ここまで間が空くことは今までなかった。セリカは何かと慰めてくれるが、ルシアの不安は消えない。
今の状況が、発情の兆候だとはルシアにも分かる。またあの辛さを味わうと思うと、それも怖い。
ルシアが待ち望む人を、セリカや侍医は勿論、奥の宮に仕える人たちも待ち望んでいた。来ることは分かっているが、早く早くと気が急いた。
皆が待ち望んだ吉報が漸く届いた。夕刻に国王フェリックスがお成りになるという知らせ。
「ルシア様、ようございましたね」
「うん、兄上様来て下さる。良かった……」
ルシアは、夕刻になるまで何度も窓から外を眺めた。侍医には、静かに休んでいるように言われたが、心が落ち着かずじっとしていられなかった。
セリカは、そんなルシアを咎めたてせず微笑ましく見守る。
外を眺めていたルシアが、いきなり部屋を出て門へ向かう。「ルシア様」セリカは驚き後を追う。
門から出たルシアは、待ち望んだ兄王の姿を認めると、走り寄りフェリックスの胸に飛び込んだ。
フェリックスは、これには驚いた。今まで自分が訪れると、嬉しそうに胸に飛び込んで出迎えてはくれるが、門を出てまで抱きつくようなことはなかった。
抱きつくルシアをしっかりと抱きしめてやると、ルシアの放つ芳香に眩暈がしそうになる。今すぐ押し倒したくなるが、まさか門前でそれは無い。フェリックスは理性で懸命に堪え、ルシアを抱きしめたまま宮に入る。
しかし、その理性も限界だった。宮に着くまでは、先ずは居間でルシアに番の事を話し、それから寝室へという手順で、セリカ達にもそう伝えていた。
ルシアにしてもこの状態なら、冷静に話も聞けないだろうとフェリックスは思い、そのまま寝室に向かう。
セリカ達も慌てて付いてくるが、視線で止めると伝わったのだろう頭を下げて見送る。
ルシアはフェリックスの腕の中で、その芳香に安堵していた。アルファには発情期のオメガだけか感じる芳香がある。本能で己の発情を抑えるアルファを求めるためだ。
故に、フェリックスの香りで兄の訪れを察して門を出て出迎えた。
兄に、すぐにもこの体の熱を抑えて欲しい。しかし、ルシアはただフェリックスに抱きつくだけで、これ以上どうしていいか分からない。
「ルシア、体が熱いのだろ? 心配せずともよい、余が抑えてやるからな」
ルシアは、頷くばかりで何も言えない、何もできない。
そんな、初心なルシアがフェリックスには溜まらなく可愛い。ルシアの着ている物を脱がせていくと、恥ずかしいのだろう、抗う素振りをする。
「恥ずかしがらずともよい、こうして裸にならねば出来ぬのじゃ」
そう言って、全て脱がしていく。下着も取ると、ルシアの白い体が現れる。ほんのり薄紅色に色づいていて、フェリックスの欲情を煽った。
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