何だって、自分が体験してみなければ分からない。 そう思うようになったのは、大学２年生の頃からだ。 学生の頃、噂に振り回される友人達の輪に、どうしても馴染めなかった。 見てもいない出来事に右往左往する姿が不思議でたまらない。 そんなに気になるなら、自分の目で確かめたら良いのにと、常々思っていた。 大学を卒業して会社勤めを始めてからも、 部署内に絶え間なく沸き起こる噂話や妬みや嫉みには一切耳を貸さなかった。 おかげで、職場では完全に孤立している。 噂話に、興味がない訳じゃない。 ただ、それが本当かどうか確かめたくなる。 目に見えないものに振り回されるほど、不安を煽られるものはない。 今、俺は確かめたいことがあってここにいる。 都心の真ん中にひっそりと佇む、小柄なホテルの、ある客室に。