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第8話

「君はなんて呼ばれてるの?片岡真(かたおかまこと)君」 「俺も、色々です。真、まー坊、まー。色々」 「何だ…マコティーはないのか」 「…”ティー”、好きですね」 ”真を見定める男になってほしい”。 厳格な父親がつけた名前だ。 名前通り、真実を確かめたがる男になった。 「あとは、まこちゃんとか、まことか」 「まこ!まこ良いなぁ。可愛い。まこ&ピロティーだね」 「ピロティーはもう良いです」 「ひどいなぁ。結構気に入ってるんだよ」 弘は着ていたシャツを脱ぎながら ベッド横のソファまで移動し、先ほど置いたジャケットの上にシャツを重ねた。 弘が目の前を移動するたびに入ってくる、 白い彫刻のような鍛え上げられた身体と、甘酸っぱい香水の香り。 このまま何もしないで帰ることはない。 ここを出る頃には、今の自分ではない自分でいることになる。 後戻りは出来ない。 不安と好奇心。 今は少し、不安が勝っているようだ。

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