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第7話
「”ピロティー”はほら、なんか響きが似てるでしょ。ヒロシ、ピロティー」
「…」
「”ママ”って呼ばれたことも、本当にあるんだよ。世話好きで、お母さんみたいだからだって」
恰幅の良い男に向かって、”ママ”と叫びながら、男に抱かれるその男の神経が分からない。
その男はこいつに”ママ”を求めていたのか?
理解が追い付かない。
「そんなに悩まなくても…」
「…頭の中を整理してるんです」
視線を落とし、眉間に皺を寄せしかめ面をしていると、
男は顔を覗き込み、目を細めた。
「弘(ひろし)が良いな。弘って呼んでよ」
「じゃあ、弘…さん」
「呼び捨てで良いよ」
「…初対面なんで」
「律儀だね」
そう言って、弘は着ていた白いシャツのボタンに手を掛け始めた。
他愛のない会話の合間に少しずつその瞬間が近づいているのを感じ取り、身体が強張る。
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