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第6話
実際に見る”田中弘”は、インターネットサイトで見たプロフィールの写真とあまり変わらなかった。
落ち着きのある、大人びた顔立ち。
薄茶色の髪色が、横顔をいくらか西洋的に見せた。
男が少し体を傾けると、シトラスと何か花の香りを混ぜたような、
甘酸っぱい香りが押し寄せてくる。
こういう仕事をしている男は、きっと皆こうやって良い匂いをさせて、
甘い言葉を客に言うんだろう。
きっと、”そういう”、仕事なんだろう。
「田中弘さんて…本名ですか」
「そう。平凡な名前でしょ」
男は目を細めながら、肩をすくめた。
「源氏名みたいなの、つけないんですか」
「つけてる人もいるね。でも、この名前が気に入ってるから。
名前は、何とでも。好きなように、呼んで」
「例えば…」
「そうだなぁ。色々な呼ばれ方してる。ひろし、ひろくん、ひろちゃん、ピロティー、ママとか」
ピロティー?
ママ?
「…最後の2つ…」
「はは、実際に呼ばれてたんだよ。”ピロティー”とか、”ママ”って」
どこから質問をしたら良いんだろう。
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