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第10話

暫くして、弘がバスルームから戻ってきた。 綺麗にたたまれた白いタオルを数枚重ねた塊を、手に持っている。 着々と準備が進められているようで、 視線をどこに定めたら良いのか分からなかった。 「…週2回、ジムに通ってるんです」 気まずくなって、さっきの話を続けた。 心なしか、声が小さくなっているような気がする。 「良いことだ。30過ぎたら、身体がどんどん重力に負けていくからね」 「走るのが好きで、その、トレーニングの一環で」 「ああ、それで少し日焼けしてるんだ」 弘はタオルをベッド脇に置くと、再び隣に腰掛けてきた。 「ちょっとだけ色黒、憧れる。俺色素が薄いから、身体も白いし、髪の毛もこんな。これ、染めてないんだよ」 少し長めの薄茶色の前髪を見上げるように視線を起こした弘と、目が合った。 反射で、腹に力が入る。

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