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第41話
結局、どうしたら良かったんだろう。
毎度毎度繰り返される、終わりの見えない期待と、不安。
満たされない心を抱えたまま人を変えても、また、同じことの繰り返し。
人を愛することがどういうことか。
もう、分からなくなっていた。
「…あの。反対側に移っても良いですか」
「くっついていたいのに」
「…これじゃ、身動きが取れない」
大の男が2人、狭いバスタブを満杯にしている。
身体を合わせるようにして浸かるのはさすがに息苦しいと感じて、
真は身体を起こし、弘と向かい合わせになるように座り直した。
「まぁ…いっか。これはこれで。まこの体が見られるから」
残念そうな顔をしながらも、弘は小さく笑っていた。
濡れた前髪を後ろにかき上げて押し固める姿は、
暗い部屋では見られなかった”夜の男”の表情そのものだった。
呆れる気持ちより先に、震えるような溜息が口から漏れて出てきた。
何を話したら良いんだろう。
明るい浴室の元では全てが曝け出されて、隠れる場所がない。
弘の視線が、気になる。
こんなことなら、こっち側に移ってこない方が良かったんじゃないか。
少しの後悔が、真の頭をよぎる。
また溜息を一つ吐くと、弘が真の後ろに回り込もうと身を乗り出してきた。
張られた湯がざぶん、と大きな音を立てる。
「だから、狭いって」
「狭くても良い。そっち、行きたい」
結局、先ほどと同じ体勢になってしまった。
後ろから腹に手を回され、身体を固定される。
わずかでも抵抗を示そうと身体を前傾させて、
なるべく背中を弘にくっつけないようにした。
「…そうやって離れてたら、後ろから突っ込むよ」
低い声で唸られて、慌てて体勢を戻した。
弘は冗談だよ、と笑いながら、回していた腕で真の身体を引き寄せた。
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