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第55話 青い炎*
「んっ、ん……」
僕はソファーの上で甘い声を上げる。
律に耳たぶをカリッと噛まれ、右の乳首を服の上でこすられる。
胸の突起はすっかり開発されたみたいで、ほんの少しの刺激でも反応し、あっという間に芯を持つようになった。
「あぁー、だめだよ……っ律」
だめと言えば言うほど、律が手で弄っている箇所をより刺激した。
律は尖りを親指と人差し指で摘んで、きゅううっと強めに引っ張った。
電流が走り、甘い痛みで腰がくだけそうになってしまう。
律の手がするりと腰骨を撫でて足の間に向かおうとした時、無意識に僕の手が先回ろうと中心へ向かう。
その手を強く掴まれ、頭上でひとまとめにされた。
ソファーに強く押し付けられる感触に、ゾクッと身を震わせる。
僕はこの状況を嫌がっていないことを知る。
目の端にチーの白い体が映った。
チーはたまに、僕らの行為をじっと見ていることがある。
どうしてそんなことをしてるの?とでも言うような、綺麗なみどり色の目をして。
僕は潤んだ瞳を律に向けた。
「……なっ、んで、こんな……こと」
責任を取るために、律は僕に触れているのは知っている。
だけど素晴くんとのキスのせいでこんな風になっているのだったら、勘違いしてしまう。
律が僕を好きになり始めていると。
「どういうつもりですか」
静かに冷静に律は問う。
瞳の奥の底知れない青い炎が透けて見える気がした。
「何が?」
「あのままあの子と2人きりになっていたら、今頃どうなっていたと思いますか」
「どうって、電車に乗って……」
「そんな訳はありませんよ」
「えっ? ……あ」
なるほど、と納得した。
酔っている素晴くんと僕が、体の関係を持つのを危惧したのだろう。
悪ふざけとはいえキスをしたのだから、そう思われたとしてもしょうがない。
「もしかして、僕がまた変な男に捕まったーとか思った?」
「……」
「大丈夫だよ! 素晴くんは他に好きな人がいるから」
ぴく、と律の片眉がわずかに反応した。
不穏な気配がますます張り詰める。
「他に好きな人がいるくせに、きみにキスをしたんですか?」
「う、うーん、酔ってたから間違ったんじゃないかな……」
それに、好きな人がいるくせにって、律にも当てはまるじゃないか。
「そうですか。ならしょうがないですね……とはならないでしょう」
「あ……っ、痛……っ!」
急に左側の首筋に激痛が走る。
律がそこにガブリと噛み付いたのだ。
歯型が残った肌は濡れて赤く腫れている。
「痛いよ律っ」
「それで、2人で俺に馴れ合いを見せつけて満足しましたか?」
「う……」
「何を話し合ってあんな風になったのかは知りませんが、ベタベタしているところを見せつけられて迷惑なんですよ」
「べ、別に話し合ってなんか……」
やはり律にはバレバレだった。
確かに、あれで気付かない方がおかしい。
それはそれで置いといて、今はこの状況だ。律はなぜこんなにも怒っているのか。
それは単に僕に腹が立って虐めたくなったからか。それとも。
やはり素晴くんへの嫉妬心が関係しているのかと、内心喜んでいたら。
「今日でもう、きみとこういうことをするのは終わりにします」
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