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7:[セックス とは]【検索】

 背中が痛い。 「っはぁ……んっぁ」 「やっぱ、二人共ツルツルだと……きもちぃね」  俺は何をしてるんだろう。  俺って、そもそも何の為に脱毛サロンなんて予約したんだっけ。 ——– VIO脱毛すると、セックスが気持ちいってのは……マジだから。  そう言っていた顔の良い後輩の言葉が、頭を過る。そう、そうだった。俺は来るべき「最高の時」の為に脱毛サロンを予約したんだ。  俺は眼鏡の無くなったぼやけた視界の中で、全ての血液が下半身に集まるのを感じていた。 「ね、タローさんも、そうっ。おもうでしょ」 「……っはー、っん」  俺はアオイさんに押し倒されながら、つるつるの陰部を互いに擦り付けあっていた。アオイさんの下半身にも毛が一切無い。 「ねぇっ、答えて。タローさん。これ、キモチイよくない?」 「ぁ、ぅっ」  畳み掛けるように問いかけられる言葉に、俺は両腕で顔を隠しながら必死に頷いた。  気持ちい。だって、さっきから自然と腰を揺らしてアオイさんのすべすべの下半身に押し付けてしまっている程だ。  普段なら毛で隠れているその場所は、最初に毛を剃る時にも思うのだが他の場所より皮膚が柔らかくてフニフニしている。しかも、先程出した俺の精液のせいで、ヌルついて滑りが良い。 「っん……、ン」 「コラ。擦り付けるばっかりじゃなくて、ちゃんと質問に答えて」 「ん、っふ、ひ、もちぃ……っひん」 「あらら、また泣いてるんだ。可愛すぎ」 「か、わいく……な、いれす」  アオイさんは、先程から何かにつけて俺に「可愛い可愛い」と言ってくる。そんなワケないのに。だって俺は若くないし、オタクだし、童貞だし。コミュ力もない。職場の昼休みには、スマホでアニメを見ているようなヤツだ。きっと同僚からもキモくてヤバい奴だって思われてる。知ってるんだ。  職場の後輩たちは、いっつも俺を見てクスクス笑ってる。俺は、皆の笑い者だ。  だから、本当はアオイさんだってそう思ってる筈だ。だから、俺は絶対にアオイさんを外で見かけても話しかけたりしない。  推しのプライベートにファンは触れちゃいけないし、俺に話しかけられたら迷惑なのを知ってるから。  アオイさんが優しいのは、俺が「客」だから――。 「……可愛いよ」  それでも続けられるアオイさんの「可愛い」という低くて甘い声に、俺はヒクンと腰が揺れるのを止められなかった。あぁ、推しの声だ。ファンサが凄い。鼻血が出そう。嘘でも嬉しい。  そんな事言ったら、アオイさんの方が断然――。 「……う、わ」  そう、俺が隠していた腕をゆっくりとどかしてアオイさんの顔を見た。すると、そこには額から汗を流し、眉間に皺を寄せ、苦しそうに肩で息をするアオイさんの姿があった。栗色の美味しそうでふんわりした髪の毛が、汗で額に張り付いている。 「は、ぁ……すご、い。かっこいぃ」  思わず推しの舞台で、堪え切れずに漏れてしまった感想のような言葉が口を吐く。  しかも、施術して貰う時より近くにアオイさんを感じる。ホントは、ファンは勝手に推しに触れたらダメなのだが、俺は本能の赴くままにアオイさんの額に触れ、汗に張り付いた髪の毛を横にどかした。  すると、目の前にはいつもの施術中のアオイさんの姿が現れた。 「っはぁ……おせるぅ」 「っは、ヤバ過ぎ」  その瞬間、アオイさんの眉間に更に深い皺が寄る。  そして、それまで俺のちんこもスリスリと擦り付けられていたアオイさんの下半身が突然離れて行った。 「っあ……」  急に離れて行かれたせいで、なんだか妙に物足りなく感じる。急に離れられたら、寂しい。 「ねぇ、そんな顔されたらさ。もう止められないんだけど」 「……へ」 「元々、止めるつもりもないけどさ」  どんな顔をしているんだ、俺は。俺は職場でも誰とも話さないから、基本的に無表情な筈なのに。そう、俺が首を傾げていると、アオイさんが前髪をガバリとかき上げた。そして、ニコリと笑って俺に言う。 「さ、タローさん。膝を曲げて、両足を開いてください?」 「あ、はい」  施術中のような口調と笑顔に、俺は思わず従ってしまった。だって、この一年間、ずっとそうしてきたのだから。ただ、膝を曲げ両足を開くその格好のせいで、俺は陰部の全てをアオイさんに晒す事になってしまった。 「はい、良く出来ました」 「っん」  アオイさんは優しい笑顔と共に、まるでそうするのが当たり前かのように、俺の下腹部へとソッと人差し指で触れた。 「さっきはVラインをくっ付けあったでしょう。ね、ここ。キモチ良かったですよね?」 「っは、ぁ……は、い」  下腹部からちんこの周囲の柔らかい部分を、アオイさんは人差指で確認するようになぞる。そう、ここがVライン。スルスルと動く指に、俺は背筋にピリッとした熱い痛みを感じた。 「でも、擦り合わせたらもっと気持ち良いのが……ココと、ココ」 「っあ!」  アオイさんの指が、勃起したちんこと根本でパツパツに張るタマの周囲に触れる。思わず開いた足を閉じそうになるが、寸での所でそれを堪えた。だって、施術中は危険だから急に動いたらいけないのだ。  あれ?今って施術中だったっけ? 「っふは、エライエライ。動かさずにちゃんと我慢したね。タローさん」  まるでご褒美と言わんばかりに、勃起するちんこの裏筋を指で撫で上げられる。あ、コレ。前回の施術の時、最後に感じたヤツだ。 「っはぁ、ん……っはぅ、ぅ」 「タローさん、コレされるの好きだよねぇ。ねぇ、コレ気持ち?」 「はっ、はっぁ……はい」  そうやってしばらく指先一本で勃起するちんこの先端をクリクリされたり、タマをつつかれたりした。もう、頭がぼんやりして何も考えられない。体中が物凄く熱い。 「あと、ここ。ね、タローさん。此処は何てトコロ?」 「……おぉ?」 「正解。さっきタローさんが俺に指を挿れられて気持ちよくなっちゃった所の回り。Oライン」  先程までちんこを楽しそうにイジっていたアオイさんの指が、今度は俺のお尻の中へと挿入される。そこは最初に沢山弄られたところだ。そう、ここもすごく気持ち良くて。そのせいで、俺はお尻のアナで何回も射精してしまった。 「でも、ここを擦り合わせるのは……普通じゃちょっと難しいよね?」  それまで俺のお尻の穴を見ていたアオイさんの視線が、俺の方へと向けられる。苦し気に細められた瞳が、ジッと俺の事を見ていた。その目に、俺はなんとなく、アオイさんが何をしたいのか分かった気がした。 「ね、タローさん、挿れていい?」 「っは、ぅ」  そう、ニコリと擬音がしそうな程の笑みの下で、主張するアオイさんのちんこは凄く血管が浮き出ていて、まるで怒ってるみたいだった。  あぁ、やっぱり今日俺が突然キャンセルした事、アオイさんは怒ってるんだ。俺は無意識にアオイさんの怒ったちんこに手を伸ばすと、ごめんなさいの気持ちを込めてゆっくりと撫でた。 「もう……タローさん、すぐ顔に出る」  アオイさんは「はーーっ」と、深く息を吐くと、そのまま怒ったちんこを、俺のお尻の穴にぶち込んだ。         〇  もう、何回射精しただろう。 「っぁっひ!あおい、さっ!おれぇ……も、イってる!も、でないっ!」 「あぁっ、ヤバっ。すげぇ、きもちぃっ!」  俺の叫び声など、アオイさんは全然聞こえていないようで、より一層激しく腰を振る。俺のちんこは、腰を振りつつもズリズリと下半身を擦り付けてくるアオイさんの固い腹筋で、もう押しつぶされていた。 「あお、っひさっ、も……くるしぃっ」 「あぁっ、また泣いてるのっ?かわい」 「んっ、んぅ」  アオイさんが俺の唇にキスをする。  これも何回目か分からない。でも、外とナカを同時に擦られ、口内までもがアオイさんでいっぱいになる。くちゅくちゅと、アオイさんの舌が、俺の舌をおいかけて、互いの舌先でツンと突き合う。  生まれて初めてのキスもアオイさんだったのに、もうやり過ぎてファーストキスがどうだったかなんて思い出せない。ただ、物凄く気持ちの良かった事だけは記憶の中に強烈に焼き付いている。あれ?それって今のキスも同じだ。 「っは、タローさん。かわいっ、マジで。ほんと……!」 「っひぅううっ!っあ、ぉ、いぁっ!」 「やばっ、コレ……癖になりそっ」  ゴリゴリとアオイさんのちんこの先端で擦られるソコは、触れられる度に頭に雷が落ちたような感覚に襲われる場所だ。俺はアオイさんの動きにされるがままの状態で、ビクビクと腰を仰け反らせた。でも、もう何も出ない。きっと、今ならどんなにアオイさんに触って脱毛されても、きっと勃起しないだろう。 「も、でなっい、から、あおい、さ」  だから、脱毛して貰って大丈夫です。  そう口にしようとするが、上手く喋れない。その間も、アオイさんの腰は止まるどころか、俺の膝裏を持ち上げて更に激しく奥を突いた。  強すぎる快楽に、また涙が出てきた。でも、これは悲しいから流れてるワケじゃなさそうだ。 「っはぁっ、かわいいっ!マジで、頭、おかしくなるっ!」 「っぁ、あッ!」 「たろ、さ……っ!おれも、も、っイく」  苦し気なアオイさんの声を耳元で聞きながら、俺は腹の奥を生ぬるいナニが満たすのを感じた。気持ちが良い。同時に、遠くでまたあの声が聞こえてきた。 ——– VIO脱毛すると、セックスが気持ちいってのは……マジだから。  そして、ピタリとくっ付く二人の下半身に、俺はやっとこの行為が何かに思い至った。 「たろーさん……、毛の無いセックスは、どうだった?」 「……ひもち、ぃです」  あぁ、これがセックスか。  俺は「来るべき時」の為に下半身を晒す覚悟をした脱毛サロンで、同時に「来るべき時」を迎えてしまったのだ、と。 「だったら……最後まで、いっしょに頑張りましょうね?つぎの、予約、とっておきますから」  そう、アオイさんを推し始めて史上最高の笑顔で問いかけられ、俺は無意識のうちに――。 「は、い」  しっかりと、頷いていたのだった。

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