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第5話
恋には、ハプニングがつきものだって、言うけれど、そうそうないもんだって思っていた。
恋は難あり。そんな言葉がぴったりな出来事が訪れた。
今日は、新学期でもないのに、新しい先生が来るらしい。
よく考えたら担任の白沢美香先生が産休だって一週間くらいだったか言ってたな。
今まで忘れていた。それぐらい大好きになってしまったからかもしれない。だって、眼中に隼人しか入ってこないんだから。
どんな女の子がいて、ナンパされても隼人以外なんてどうでもいいってくらいにな。
「皆さん。産休で休まれる白沢美香先生の代わりに来る新庄真琴(しんじょうまこと)先生です。」
「よろしくお願い致します。美香先生が休まれている間お世話になります。」
へぇー。真琴っていうのか。
もしかしたら、女の先生かも…なんていう望みは消えた。
「よろしくお願いします。先生?」
「うるせぇ。顔近づけるな。気色わりぃ。」
「釣れないですねー。ねぇ学校案内してくれませんか?授業一時間目なかったら。」
「確かにないが…何かお前は嫌だ。どうせなら可愛い先生を案内したかったな。」
「俺可愛いでしょ?綺麗な髪に、艶やかで、くりくりした目で。案内したかったということはしてくれるんですね?ありがとうございます。」
「いつまでもうるさくされるのは、嫌だからな。とっとと行くぞ。」
そんな二人を隼人が見ているとはわからなかった。
今日は、新しく先生が来るみたいで、俺は内心ワクワクしていた。
女の先生か、男の先生か。
やっぱり、男の先生だともしかしたら拓也先生がモテてしまうんじゃないかって。
そんなことないって分かっていても、やっぱり同性からはモテないとは限らないし、先生は、大人の魅力があるような気がして、魅力に酔いしれる。先生が蜘蛛だというのなら、俺はその蜘蛛の糸に引っ掛かった蝶のように絡みとられてしまっているようで。
不思議だな。こんなにも思える人が見つかるなんて。
少しはチャラくても良かったのかなって思う。
真面目だったらこんなに先生に執着することもなかった。
そんなとき、見てしまった。
見たことのない先生と拓也先生が一緒にいたのを。俺と先生が普通の関係だったら何も感じることもなかった。でも隠してるとはいえ恋人同士なんだから浮気しているかもしれないということは凄いショックで、心が崩れてしまいそうだった。恋するなら、先生と先生の方がまだリスクがないし、やっぱり生徒と先生じゃダメなんじゃないかってまた考えてしまって、恋に本気になったのもこれが初めてで、こんなにも愛して欲しいと思ったのも、ハジメテの経験もしたのも全て先生だったから。
俺は、隼人の事は大好きだ。
だけどまだ不安になることがいっぱいある。
例えば、本当は女の子が好きなんじゃないかということとか、あとひとつ言っていなかったことかがある。それは俺はゲイではないということ。じゃあノーマル?っていわれても自分でもよく分かんなくてそもそもあんな事をしてしまっても俺の事を好きだって思ってくれている
隼人と出会ってから全てが変わったような気がして何もかもあいつがいることでこの世界で生きていることが見つかるきっかけになった。
っていっても嫌になった訳
じゃなくて少し生きることが難しく考えていた時期でもあったから本当に感謝してる。
隼人としないのだって隼人の身体を大事にしたいから。本当俺って隼人の事しか考えていないな。
「拓也先生?聞いてます?」
「ごめんごめん。少し聞いてなかった。」
「ひどいですよ、聞いてくれないの。」
「それやっても可愛くないからやめろ。」
「だって好きな人には少しでも可愛く思われてたいでしょ?」
「俺の事が好きなのか?」
「好き。一目惚れかな。今日始めてみたのに始めてじゃないみたい。でもこんな可愛く誘っても振り向いてくれないんだったらこっちだって手出しますけど…。手出したら彼氏さんに怒られちゃいますね。でも覚えててくださいね。私はずっと貴方の事を好きでいますから。覚悟しててください。」
「分かった。その一言では抱えきれない位のお前の思いがあるんだよな。ごめんだけどこんな俺に恋してくれてありがとう。」
「一応俺失恋したのになぜだか嬉しい気持ちです。頑張ってっていうのは可笑しいですね。
幸せでいてください。少しでも俺の入る隙あったら入っちゃいますから。でも、友達にはなってくれませんか?」
「ありがとう。幸せでいる。本当にお前の気持ちに答えられなくてごめん。いいよ、友達になろう。」
「本当に優しいですね。彼氏さんもそこに惚れたのかも。」
「本当にありがとう。」
「いいえ。拓也先生の事好きになって良かったです。」
新庄先生が言ってくれた言葉。
「優しい所に惚れたんじゃないんですか?」
隼人もそう思ってくれているのかなぁ。
所詮先生と生徒だから本当は恋なんかしちゃいけない禁断の関係なはずで、隼人も俺の事好きなのかなだなんて思って隼人の事になると何も考えられなくて少し弱気になってしまう。
弱気になるだなんて俺らしくない。
だけど、隼人に恋したからこそ、こんな気持ちにもなって、弱気にもなるんだろうか。
好きな事にはほかならないし、隼人が俺の事をいつか嫌になるまで、徹底的に愛したい。
そう付き合ったときから思っていたから。
あの出来事から数週間後、相変わらず新庄先生は、しつこいけど何だかんだ俺の相談に乗ってくれている。
実は、あの後隼人と、仲直りのエッチをした。
何でエッチ?って思うかもしれないけど、それが俺達なりの解決の仕方だったから。
どっちにしろ世間的にはありえない関係だし、いつだれにバレるかという心配は、付き合った時からずっと思っていたし、悩んでいた。
だからこそ、一回一回のエッチが大切でいつ壊れるか分からないから大切にしていきたいと二人で約束したから。
何よりも、俺は隼人がよがっている姿が好きでたまらないし、俺の手で、声で、身体中で感じている姿は可愛くて、愛らしい。
そして、俺が初めてのオトコっていうのも嬉しいから、何よりもそのことが興奮材料だ。
隼人と出会う前は、ヤリチンで、遊び人で、
いつか誰かに刺されるんじゃないかっていうくらいだらしなかった。
先生になったのも、出来れば一人くらいエッチできないかなっていうクズな理由で、勉強して、学校の先生になっただけ、
そんな中、天使のような隼人に出会った。
ある意味俺よりまっさらだったから、真反対のようだと感じた。
俺は、隼人の全てが愛しくて、好きで、でもいつか天使のように飛びさってしまうんじゃないかって思ってしまう。
好きという言葉の重さも、恋も軽いものじゃないというのも学べたし、守りたい人の大切さも知った。
例え世界がこの世界が終わってしまったって俺は誇って言えるだろう。「幸せだった」と。
隼人がいればそれだけでいい。最期まで一緒に死ねたらもっといいけれど。そのくらい隼人の事を愛している。
俺にもこれまでにも愛した人はいたけれど、これぐらい思って、本当に手離したくないと感じるのは、隼人が初めてだった。
最初は、何だコイツ反抗的だなって思って、めんどくさい。って思ってたけど、少しずつ愛が芽生えてきた。
教師と生徒の恋愛なんて、ダメなんて知ってたけど、毎日想うのは隼人の事で、胸がとても苦しかった。だから、あの時レイプ紛いのことをしてしまって今は後悔している。
好きという気持ちがいまにも溢れそうで辛い。
こんなにも悩んで、辛くなって、苦しいのは、隼人だけだ。
未来永劫愛したいのも、隼人一人だけ。
先生は、俺に愛してるとか、好きとか言ってくれるけど、何故かいつも本当なのかなって思ってしまうときがある。
嘘をつく人じゃないから、嘘じゃないことも分かっているけど、疑ってしまうのは何でなんだろう。
信じたいのに、信じられない。
俺みたいな奴でも、愛してくれた先生には、感謝しかないし、好きなことには変わりないのに、臆病になって、心配ばかりしてしまう。
恋する前は、「あの先生嫌い」って思っていた癖に、俺はすぐ先生に堕ちてしまった。
それぐらいこんなにも、好きになって運命なんだって。でも本当に俺の事をすきなのかと心配になることだってあるし、同性の俺じゃなくても異性の綺麗な女性でも選択肢があるんじゃないかと思うから。
でも今はこの俺だけを愛してくれているんだろうと信じるしかない。
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