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心を折る時間:3日目
レインには睡眠の必要がない。しかし賢者は寝るようだ。皆が眠る夜中はレインの平穏な時間と言えた。
ランスも自室に戻り、暗い部屋にひとり取り残される。何とか首を振って動けないかと試したが、微かに手足が揺れるだけでどうにもならなかった。暇な時間だ。ずっとこうであってほしい。
上半身のくすぐりだけがずっと続いている。きっとなにか別のものに任せているのだろう。
性器への責めを体験した今では大した責めに感じない。
壁に掛けられた星図をぼうっと眺めていると、嫌な予感がした。魔物も寝床につく深夜だというのに尻が撫でられたのだ。
レインはさすがに顔を青くした。またあの暴力が始まるのか。臀部を広げられる感覚に思わず歯を食いしばった。
「う……っ」
届いたのは予想とは違うぬるりとした感覚だ。たぶん指だろう、後孔に油かなにかを塗りこんで慣らしているようだ。今更すぎる。
指が抜き差しされるのを感じながら中空を見つめる。自由になったらまずランスをぶっ殺し、このエバンスとやらの生皮を全部剥いでやる。
「……っ、く、ぁ?」
痛みがないからか、前は感じなかった部分が気になってくる。下腹部の裏側あたりだろうか。そこを指で押し込まれると変な感覚だ。
「ん……ぅ」
同一人物とは思えない優しさで指が腸内を掻き混ぜる。本当に別人かもしれない。
「この色ボケじじい、が、っあ」
ひとり悪態をつくが、ランスに監視されていない開放感からか刺激に素直になってしまう。
「ふ……っ、おッ」
ぎゅっと中を押し込まれ、じんと性器が熱くなった。
「う、んん、んっ」
見ることも音を聞くこともかなわないが、おそらく水音がしているだろうというくらい後孔が濡れている。増えた指が中を掻き回すたびにまるでぐちゅぐちゅという音がするようだ。
「は……は……っ」
ずるりと指が出ていった。いよいよあのデカブツがくるのだろうか。
大声が出ないよう口を噤んだレインとは裏腹に、ゆっくりと怒張が侵入してきた。
「ん……ッ、う、ぐぅ」
やはりでかいものはでかい。凶器じみた雁首が腹の裏側を引っ掻き、レインの背筋に快楽の電流が走った。と同時に上半身が思い出したように快感を送り込んでくる。
「く、はぁっ」
体が正しく犯されている。性器の刺激がない分、女のように扱われている気がして屈辱的だ。それで気持ちよくなっている自分にも腹が立つ。
「う、あッ、はぁッ」
ゆるゆると動く怒張がいっそじれったい。このでかさは本人だろう。どんな心境の変化があってこんなに優しくするのか。
「んん、お……ッ」
ずる、とギリギリまで抜き、ぐぼぼ、と奥の奥まで挿し込む。緩やかな抽送が快感を引き出し、上半身の愛撫がそれを助長した。
「はぁ、やるなら、はやくっ、おぉッ♡」
雁首が掠めた裏側に脳が歓喜した。きゅう、とひとりでに怒張を締めつけ、それに応えるようにだんだんと抽送が早まってくる。
「く、うぅ♡ なんだこれ、くそがっ」
こんな感覚は知らない。裏側の一点を抉ってからの奥へのストロークがびりびりと脳を痺れさせる。また薬でも使われただろうか。
「はッ、あ……ッ、お゛ふッ♡」
急に怒張が凶暴になった。ガツガツと奥を突く動きに変わり、しかしそれまで快感を得ていた体はそれさえ同じものとして捉えた。
「ふぎッ♡ あ゛ッ♡ あ゛ぁッ♡」
苦しい。気持ちいい。相反する感覚に脳が誤作動を起こす。
「……っは♡ ……ふ♡」
怒張がまた動きを弱め、じわじわと中を蹂躙する。腸壁はもはやレインの意識の外で怒張に媚びていた。
「う、ぅ♡ くそっ、こんな、はあ゛ッ♡」
どちゅんと最奥が撃ち抜かれる。ここからは緩急の波の暴力だった。
「お゛ッ♡ ぐぅ♡ かはっ、あ゛ぁッ♡」
強く。
「……ッ、は、はぁ……あ♡ ん……っ、ぁ」
次は優しく。
「あ゛はぁッ♡ お゛ッ♡ お゛ッ♡ ッ♡ おぉッ♡」
また強く。
「……ッ♡ ひ……はぁ……♡」
レインはぐったりとしていた。もう累計で何度達したのだろう。体は復元されるとはいえ、精神的な疲労はそうはいかない。快楽も与え続けられると苦痛になるのだ。
「おわれ……はやく……ッ♡」
次はまた激しいのがくる。するなら早くしろと、レインは屈辱ながら怒張を締めつけてねだった。こいつが満足すればそれで終わるのだ。こんなグズグズになった声をランスに聞かれたくない。
ずるりと怒張が奥を穿つ準備をした。
「く……んうッ♡」
怒張はそれでも理性的に、浅めの位置を何度も突き上げた。ちょうど痺れる部分だ。何度もぐりぐりと突かれると目の前に火花が散るような快感になる。
「くふぅ♡ あッ♡ あッ♡ やめッ♡ そこッ♡ ばっかッ♡ あッ♡ あ゛ぁ~ッ♡」
ぞくぞくと肌が粟立つ。おそらく射精しただろう。しかし快楽の渦は収まらないまま、今度は怒張が奥ばかりを突きだした。
「お゛ぉッ♡ おッ♡」
そのうち動きが激しくなり、入り口から最奥までを余すところなく使ってレインを責め立てた。
「ひい゛ッ♡ ふか、あ゛♡ あ゛ぁぁッ♡」
後孔ばかり気を取られていたが、さっきから胸の先がピリピリしている。
「はやくっ♡ おわッ♡ れぇッ♡」
でないとまた絶頂が近づいてくる。もうしばらく達したくない。
「いッ♡ ひぁッ♡ あ゛~ッ♡」
怒張が脈打ち、熱が中にたっぷりと注がれた。どこにこんな量が詰まっているのだ。
「ふ……♡ ふ……♡」
どうやら今度は一度で満足したらしい、昂らずとも十分でかい圧迫感がずるりと抜けていった。ようやく終わったのだ。
「くそっ……やっぱり最初に殺してやる……」
皮を剥ぐだけでは飽き足らない、筋肉繊維を一本ずつ外して口に突っ込んでいってやる。
「ん……っ?」
終わったと思った下半身が温かさを感じた。この感覚はお湯か。
「なんなんだ急に、っう」
予期せず指が侵入してきた。だが性的な動きというよりは中をただ洗っているだけのようだ。
「は、ぁ……」
それでも気持ちよくなってしまうのが腹立たしい。丁寧な手つきもまたイライラしてくる。
「……ん、ッ」
ピリ、と乳首が痺れた。そういえば忘れていた。ずっと弄られていたのだ。右胸はぐりぐりと押しつぶされて痛いが左胸はずっと乳首を捏ね回している。
「は……んん……」
乳首を意識しだすと後孔の感覚が増幅してきた。指が裏側を掠めるたびにひくりと腸壁が収縮し、その気もないのにねだっているようだ。どうかエバンスが勘違いしないことを願う。
「く、ぅ、ふぉッ!?」
突如大量に湯が腹の中に注がれた。ゴプゴプと遠慮なく満たされ、腹の肉が突っ張る感覚がする。
「馬鹿野郎が……ッ、ひうッ」
ぎゅっと腹を押され、なすすべなく水を吹き出す。この時ばかりは体がバラバラで良かったと思えた。排泄まがいのことを対面でさせられていたら憤死ものだった。
穴を指で拡げられている。そのあとタオルの柔らかい感触がしたので今度こそ終わりだろう。胸の責めも途絶えた。そもそも不変であるレインの体に開発など無意味だ。
ようやく静かになった体に一息つき、レインは明るくなってきた空に舌打ちをしたのだった。
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