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第9話

「明日......いや、今日だな。明け方、あの扉が開く」 「ほんと?......も、3日たったんだ」 「あぁ、昼頃にでも湯殿まで連れていってもらえ」 「あんたは?」 「朝議だ。政務も少し片づける必要がありそうだ」 隣に居る男の顔は、既にこの地方を治める皇子の顔 僕だけを見て激しい感情と欲望をぶつけてくる変態の顔は、何処にも見あたらない それが、ちょっとだけ......寂しかった が、勿論そんな事を素直に口に出せる性格じゃない 自分の内面の変化に対する動揺を隠すように無理矢理話題をふった 「国王様って、今年69歳でしょ?次に王位を譲らないの?」 「来春の70歳の生誕祭で、兄に代替わりする」 「お兄さん2人居るんだったよね?」 「あぁ、使えんのがな」 皇子が冷たく吐き捨てる 確かに次兄の皇子は、あまりいい噂を聴かないけど、皇太子様はいい人だって噂だ 「皇太子様は?優しい人だって......」 「1番目の兄者か?確かに、人望が厚くて正妻の子だが、優しすぎるのだ」 「そうなの?」 「あぁ、近くに側妃達の交流会がある。兄者達もくるはずだ。その目でよく確かめてみろ」 「え!?交流会なんてあんのっ?」 そしたら、カイルに会えるかも知れない! 「なんだ?やけに楽しそうだな。知り合いでも居るのか?」 「うん。ワサーノ出身のカイルって子で。凄く綺麗なんだ。その子だけは、僕に優しくしてくれて――」 「ほう。そういや、出身をワサーノと言っていたな。にしては、肌が白いな。......美男美女が多く、外からの血を交えても褐色肌の者が殆どだとか聞いた覚えがある」 あ、ここで身の上話すっか? 「そうだよ。兄妹たちは、皆褐色だよ?僕だけ母さんの血が濃かったんだ。1/14の確率でね。そのせいでいじめられたけど、お陰で技術は、色々と身についたし、辛くは――」 「......よく頑張ったな」 「――っ!」 頭をポンポンと優しく撫でられて、泣きたい気持ちになる 当時、どんなに辛くても泣かなかった 孤児だった僕たち兄妹にそんな暇無かったから 僕が泣けば、弟や妹たちが不安になるから そう言い聞かせて歯をくいしばって堪えた なのに―― なんだよ、調子狂うじゃん...... 不覚にも、目尻から涙が1つ 筋を作って流れた

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