71 / 73
なんなんだ ★
なんなんだ。
こんなセックスは初めてだった。こんな、エロくて、楽しくて、温かくて。そう、なんというか、「幸せ」だと感じるようなセックスは。
千晃はぱっとソファから降りると、リビングテーブルの引き出しを開けてローションとゴムを取り出した。
「千晃……?」
突然の動きにきょとんとしている誉の上に再び跨 がる。誉の服を全て脱がすと、素早く右手にローションを乗せた。先ほど焦らしながら動かしていた中指をしっかりと濡 らしてから、傷つけないよう気をつけながらも、誉の孔にぐっと押し入れた。お互い焦らし合うのはもう終わりだ。
「んあっ。ちょっ、いきなりっ、あっ、あんっ」
誉の声がすぐに甘い声に変わる。
ん?
誉にとってはおそらく久しぶりのセックスのはずだ。それにしては、感度がいい。
千晃は指の動きは止めずに、後ろから添い寝するようにぴたりと誉に体を重ねると、耳元で囁 いた。ローションの滑る感触が指先から伝わってくる。
「誉、自分でしてたか?」
すると、誉の耳がかっと赤くなった。
「してたんだな」
「あっ……ん……して……た」
「良かった」
「え……?」
「そういう欲があるなら良かった。後遺症で全くできなくなるケースも多いからな」
「……千晃の……おかげ」
「え?」
指を止めて誉を見た。頬を少し上気させた誉が振り返って見つめ返してくる。
「千晃が傍にいてくれたから。あの時のことも思い出してもパニックにならずに済んだし、普通の生活を送ることができた」
「俺は、大したことはしていない」
「してるよ。俺のこといつも気にかけてくれて、優しくしてくれた。一緒に暮らし始めて、どんどん好きになった」
「…………」
「まあ、それで、気持ちが抑えられなくて、1人で解消してたんだけどさ」
と照れくさそうに誉が続けた。
「それは……俺のことを考えながらしてたってことか?」
「まあ……そうだな……ん、ちょ……」
再び、指をまさぐり始めた。今度は少し強めに中を掻 き回す。誉がまたすぐ反応を示した。
「あっ……んっ……」
「どれくらいの頻度でやってた?」
「それ……は……あっ……週に……1度ぐらい……ああっ」
「指で?」
「ん……あ……だけ……じゃな……んんっ」
「道具も使ってたのか?」
「そう……あんっ……あっ……あっ」
「どんな?」
「あっ……んっ……んんっ」
どうやら千晃の言葉に応える余裕はなくなったようだ。誉は今や体を微かにビクつかせ、荒い息を吐いている。誉の耳を舌先で弄びながら、指をもう1本中へと入れた。
「うんっ……」
「痛いか?」
「だいじょ……ぶ……んっ……ああっ……」
くちゅくちゅと、誉の中が卑猥 な音を立てる。ぐりぐりと回すように指を動かしながら、左手を後ろから回して、誉の胸を弄んだ。
「んうっ……あっ……あっ……」
快感に耐えられないとでも言うように、誉が体を仰け反らせ、逃げるように腰を動かした。
「誉。逃げるな」
「あっ……だけどっ……」
「大丈夫だから。逃げるな」
「んっ……あっ……千晃……」
顔を振り向かせた誉に誘われるまま唇を重ねた。最初から激しく舌を絡ませる。
「んっ……あ……はぁ……」
遠慮のない、いやらしいキスを続けながら、また指を増やした。3本がしっかり収まったところで、そっと唇を離して誉を見つめる。
もう少し誉との前戯を楽しみたかったのだが。予想以上の誉の色気に、千晃は早くも我慢の限界を感じていた。
「誉。挿 れてもいいか?」
「ん……いいよ」
ともだちにシェアしよう!