1 / 1
こわいはなし
碧side
「碧さん!そろそろ休憩にしませんか?」
「あぁ、そうだな。中のエアコンついてるから先入って」
「お言葉に甘えてそうします。じゃあ、お先に」
梅雨の終わったすぐ後の事。春の役目を終えた花たちが新しい種子を残して枯れていった。その後片づけを御子柴としていた。作業し始めたのは午前十時ぐらいで、いったん昼食をはさみ、また作業をし始めた。午前の太陽は控えめだったが、午後からは本格的に熱さが厳しくなりそう、ということで今日の作業はもう終わりだ。熱中症で倒れられても困るからと御子柴を室内に促す。自分も倒れないようにあとを追うように中に入った。
「碧さん、麦茶です」
「ん、ありがとう。もう今日の作業はできそうにないな」
「そうですね。この後何か予定でもあるんですか?」
「いや……もう丸一日作業のつもりだったから特に何も……」
作業が終わったらゆっくり紅茶でも飲みながら仕事の準備でもしよう、ぐらいに思っていた。本を読むことしか趣味がない自分につくづく時間の使い方が下手だな、と感じる。
「あの、碧さん」
「なんだ?」
「ホラーって得意ですか?」
「ホラー……好んでは見ないけど、見ろって言われたら見るかな」
「意外です。てっきり苦手かと……」
自分がそんな風に見られているのか、と知った。まぁ、地味な趣味に変わりはないか。御子柴も好きなのか、と問うと「俺は苦手です」とはっきり言われた。御子柴は俺に向き合うと、一つ提案をした。
「なので碧さん。一緒に見ませんか。〇鳴村」
「あぁ、いいよ。ここで見るか?」
「どうせなら大画面で見たいです。弓弦さんに怒られますかね?」
「まぁいいだろ」
この家の家主・上岡は今日は家にいない。高校時代の友人の月村宅に今日も顔を出しているようだ。先ほど月村の弟から状況報告として数枚写真を送ってもらった。とある理由で弟と仲良くなったのがきっかけで、今でも定期的にメディアを介して話をしている状態だ。
ともだちにシェアしよう!