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②
(愛らしい、か…)
親友は恥ずかしげもなく、セツにそう告げる。
本人は思った通りを口にしているだけであって。
未だに自覚がないのだから、まあ質が悪い。
とはいえ、それになんの抵抗もなく同意してしまえる私も、相当だなとは思うのだが…。
セツは綺麗な顔立ちだ。
色白で細身、背丈も此方の世界では平均より小さい方だから。女性に見えなくもないだろう。
かといって、初対面で性別を迷うほど中世的かと問われれば。それほどではないとは思う。
(魅とれる…)
一度映してしまうと、無条件に目が離せなくなる。
セツが単純に美人だからだとか、それだけの理由ではなく。言葉にならない、その秘められた魅力に。
私はただ、惹き付けられてしまうのだ。
(私も、人の子か…)
セツが現れなければ。
そのような感情に振り回される事もなく、生涯独り身を貫いたかもしれないが。
知ってしまえば、案外と悪くはないものだと。
すんなり思えてしまえるもの。
(きっと、)
神子である事に、ほぼ意味などない。
それが偶然…運命的にも、彼であったから。
問えばルーファス達もまた、迷わず。
そう答えるのではないだろうか。
「セツ…そろそろ起きて下さい。」
「んっ…」
ゆっくり開かれた瞳が、私を映し出す。
叶うなら、ずっと…そうあればいいだなどと。
この感情はどうにも抑えが効かず、相当に欲深いもののようだ。
「ヴィン…も、ちょっと…」
「駄目ですよ。そのような寝方をしては、風邪を引いてしまいますから。」
その声が私の名を紡ぎ。
下心に髪へと触れれば、仔猫のように甘えた表情を見せる。
その何気ない仕草の、なんと罪深いことだろう。
(欲しくならないわけがない…)
神が選ぶほどの存在なのだから。
しかしそれは、独占出来ないことも承知の上。
「ほら、セツ…目覚ましに、皆を呼んでお茶にしますから。」
されど、この束の間を胸に仕舞っておくぐらいは。
どうか、許してほしい。
「ルーファス、ちょうど良いところに────」
友の幸せを願う気持ちにも、偽りはないのだから。
…end.
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