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「アシュ、ちょっと。」 いつものように、その日も守護騎士4人で庭園に出て修行に励んでいた。 …と言っても励んでいるのは主にロロとジーナ、そして2人に稽古をつけるルーファスであって。 僕は大体傍で見てて。ちょこちょこ助言したりするというのが、お約束なんだけれど。 まあ、そんなわけで。 柔らかな日差しの中、皆で鍛錬に汗を流していたら。 屋敷のテラス…ちょうど勉強部屋の辺りから。 とことことセツが、此方へやって来た。 「どうしたんだいセツ?まだ勉強疲れするには、早すぎるんじゃあないかな。」 神子として、僕らの世界に召喚されたセツ。 彼は全く別の世界からやって来たわけだから、此方の世界の事は全く把握しておらず。 今は教育係のヴィンセントの指導の元、基本的な文化や魔法学など…様々な知識を学んでいた。 期せずして、この世界に連れて来られたにも関わらず。とはいえ、多少のサボりやボヤキはあるものの… セツは召喚された時からずっと、不満も愚痴も拒絶さえも見せずに。こうして毎日当たり前のように、努力している。 僕だったら、いきなりそんなこと押し付けられても、ハイそうですか…なんてまず納得出来ないだろうけど。 セツのそういう所は、尊敬に値するなあって率直に感心していた。 「分かってるってば。別にサボりに来たわけじゃないし…」 セツは元々勉強も運動も苦手らしいから。 根詰まりするとすぐ気分転換に、僕らの稽古を覗きに来るのだけれど。 さすがに開始1時間、まだまだ休憩には早かったから…態とからかうと、唇を尖らせ拗ねてしまった。 ふふ、反応がいちいち可愛いなぁ。 「ならば何用ですかな神子殿?もしや僕の事が恋しくなり、会いに来てしまった…とか?」 ちらりと、少し離れた場所で稽古に励むルーファス達の姿を盗み見たセツ。 セツの本来の目的はきっと、なのだろうとは解っていたのだけれど。こういう性分な僕は、ついついからかうように笑ってしまう。 するとセツは僕を見上げると。 何も言わず、じっと観察するよう凝視してきた。 「ん?何か僕の顔に付いてるの?」 セツの不可思議な行動に、首を傾げるのだけれど。 彼は答えず、ただただじっと僕を見やる。 それはそれで嬉しい限りだったが… 「セツ?」 かと思いきや…今度は突然、手を掴んできて。 その手をぎゅっと握られる、から…。 どんな時でも流されることなく平静に。 そんな僕の心情を知ってか知らずか…まんまと食らわされた、セツの不意打ちに。 僕の内は珍しくも、乱されてしまった。 「やっぱり…」 僕の腕を掴んだまま。 何かを確信したよう、セツはひとり呟いて。 「ちょ…セツ?」 予告もなく、その手を自身の方へと引き寄せる。 「いーから、来て。」 状況が読めない僕は、先行く彼に声を掛けるのだけれど。セツは気にせずスタスタと、屋敷の方角へと向かって歩き出した。 「セツ…」 去り際、後ろでルーファスが僕達の様子に気付いたようだったが… (これは、後が怖いなぁ…) やれやれと苦笑を浮かべながらも。 僕は敢えて、知らないフリを決め込むことにした。

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