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⑥
「や、はなせっ、てば…」
「セツ…とにかく落ち着いて話そう?」
あやすみたく、背中をぽんぽんとされて。
こんな状況に、不謹慎にもドキドキさせられる。
やっぱりルーファスの手は温かくて、優しいから。
何かの間違いじゃないかって、そう言い聞かせるけれど…。
「何か誤解もあるようだが…すまなかった。」
理由はどうあれ、オレを泣かせてしまったなと謝るルーファスに。誤解?とオレは疑問符を浮かべる。
「私が侍女と抱き合ってたのは、端から見れば事実だ。…が、それを侍女と言い切るには、語弊がある。」
言いにくいのだが、とルーファスはオレを見て苦笑する。
「あの時、私が一緒にいたのは…」
「う、ん…」
次の言葉を前に、心臓が早鐘を打つ。
「私が抱き締めていたのは────…セツ、お前だ。」
「うん……────え?」
思いも依らぬ答えに、一度は頷くも。
あれれ?…となり、オレはパチパチと目を瞬く。
「だからアレは…セツが先日、侍女の格好をしていただろう?」
「…………ああっ!!」
ようやくたどり着いた真実に、オレは脱力してへたり込む。そこはすかさずルーファスに支えられ、なんとか堪えたけども。
…なんだよ、そういうことか。
知ってみると、なんとも間の抜けた話じゃんか。
とほほ…
「てことはさ、メイドさん達が噂してたのって…」
「噂?」
「うん。ルーファスがメイドさんとデキてるって…。それってオレとってこと、だったんだなってさ。」
「………!!」
安心した~と漏らすオレに、今度はルーファスが動揺しちゃって。
どうしたの?って見上げたら。
何故だか真っ赤になって、目を逸らされてしまった。
「私が……セツと、恋仲…」
「え、ルーファス…?」
かと思ったら、ジーッと見つめられちゃって。
やけに熱っぽい視線に、思わずこっちまで真っ赤にさせられちゃうから。
ちょ、またヘンな空気になってんだけど、どうしよう…。
「あ、と…ルーファスもいい迷惑だったみたいだな!そもそもジーナ達が、オレに女装なんかさせるからさっ…」
まあ、オレだったから良かったけど。
ルーファスにとっては、女の子と抱き合うだとか、アシュレイみたいに日常的なわけじゃないんだし。
妙な噂なんてたったら、立場とか色々とヤバいだろ?
だから、早めに誤解を解いた方がいいよなって。
甘い雰囲気を払拭しようとしたら…
「セツが相手ならば…」
「へ?」
「悪くない、な…」
「なっ…ば、」
なのにこの無自覚タラシときたら…
まんざらでもないように、さらっとそんなことを言うもんだから。
限界突破するオレの頭は、ぼふんっと音をたて上気した。
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