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②
side.Kousuke
「だからさぁ、俺そういうの苦手なんだってば。それにまだ焦ってお見合いするような歳でもねーし…」
渋る遥に。受話器の隙間からは、甲高い声が俺にまで聞こえてくる。
毎回こんな風に、お節介な事を繰り返すから…
嫌な女だ。
「おばちゃん、俺マジ間に合ってっから…」
一応相手は年上だし、世話になってる親戚らしいから遥も強く出れないようで。
穏便な口調で断ろうとはするものの。その度に受話器から、猿みたいな奇声がノイズになって響いてくる。
さすがの遥も、このおばちゃんには敵わないみたいだ。
「会うだけでもってさ…俺は端からその気ねぇわけじゃん?で、万が一相手のコがマジになったりすっと、また面倒臭い事になんだろ?」
遥はモテる。髭はやっぱり似合わないが。
女にはモテるし、男にだってかなり慕われてる。
遥の言い分はもっともだなと、俺は背後で密かに頷いていた。
それよりも心配なのは、遥の方だ。
気が乗らないと、遥は言っていたが…
会って遥が、その女に惚れてしまう可能性だって充分あるんだ。
だからそんな場所に、遥を行かせるわけにはいかない。絶対にだ。
「とにかく、俺は見合いなんざしな─────」
ぐるぐると渦巻く感情に促され、
ひしっと遥の背中にしがみつく。
腕を回して、強く強く。
そうしたら、遥の言葉がぴたりと途切れて。
首だけが俺を振り返った。
「晃亮、お前…」
目が合う。黙ったまま、じっと。
暫く見つめ合ってたら、遥の携帯からおばちゃんの高く耳障りな声が聞こえてきて。
遥は一度溜め息を漏らしたあと、前を向いて電話口に戻った。
その時の目が一瞬だけ。
いたずらに、俺を捕らえた気がする。
「わりぃ、おばちゃん。せっかくの見合い話なんだけど…」
遠慮しとくわと、遥は楽しげに続ける。
「俺さ──────」
“どうしても、放って置けねぇヤツが傍にいるから”
「そういうワケだから。」
じゃあと言って、一方的に電話を切った遥。
何故か胸の辺りがやけに熱く、おかしい…。
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