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純愛《緋禄side》4
咲輝と話さなくなってから、2週間ぐらい経っただろうか。
この2週間が2年ぐらい経ったかのように長い。
咲輝のいない生活って、こんなにつまらないものだったのかと改めて思った。
朝起きて、教室に行くのがだるい。
今日はずっとこのまま寮にいようかって毎日思う。
それは、俺が弱いから。
体も、心も弱い。
体調が良ければ授業に出ないと。
今まで咲輝がいるから頑張ってこれたのに。
嫌な環境になっちまったな…
その環境を作ったのは俺だけど。
寮の自分の部屋のドアを開けて、教室へと向かおうとした。
一歩踏み出したドアの目の前に、立っていた人物―…
「咲、輝…!」
「おはよう緋禄。話がある」
咲輝はそのまま俺の部屋に上がり込み、俺の腕を掴んで部屋の鍵を閉めた。
「おい、待てよ。遅刻す…」
「話があるんだ緋禄」
咲輝の目線が怖かった。
こんなに威圧的な咲輝はなかったから。
だから、俺は黙って俯いた。
「お前が俺を避ける理由はなんだ?」
きた。
この言葉が来ると思った。
「…避けてない」
「嘘をつくな」
寺伝にバレてるぐらいだ、咲輝にもバレてるのは分かる。
怒ってるのかな?
俺がキスなんてしたから。
「俺があのゲームに参加すれば、お前は普通に戻るのか?」
「ゲームって…」
「『恋人ごっこ』だろ?」
思い出を、作りたい。
俺もお前も忘れない思い出を。
だから、嫌になればリセットして忘れればいい。
リセットすれば―…
俺には時間が無いんだ。
「そうだよ。ゲームがしたいんだよ俺は」
ずっとお前といたいから、ゲームをしたい。
お前の記憶に残りたい。
「気持ち悪いだろ、こんなゲーム」
咲輝に嫌われたくない。
今まで通りで構わない。
思い出になりたい。
矛盾だらけで苦しい。
「!?」
俺の顔を持ち上げて、咲輝は俺にキスをした。
「俺は嫌だとは言ってないだろ。なんで避けるんだ。返事も聞かないで」
咲輝は少し怒りながらも優しく俺を見つめる。
それは、俺が親友だから参加するのか?
それとも、恋愛感情があるのか?
それは聞かなかった。
大事なのは、
俺がお前を好きで、お前が俺を好きかどうかはいいから。
時間の無い俺の、最期のワガママ。
ありがとう、咲輝。
俺はひとつ咲輝を挑発してみた。
「恋人ってのは抱き合うもんだぜ?」
そう言うと、咲輝はしばらく無言になった。
真面目な咲輝がそんなことするわけないか、と思った瞬間―…
咲輝が俺を押し倒した。
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