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純愛Ⅲ-ワイルドな夜編-《咲輝side》2
危なかった。
「咲輝、挨拶回りもういいの?」
「…」
輝雄さんの部屋に連れ込まれて、犯されるところだった。
「咲輝?どうした?」
「…」
緋禄は俺のなのに。
俺は緋禄の顔も見ずにホテルの部屋に入り、そのままベッドに押し倒してキスをした。
「咲―…ん、ふ…ぅ、んん…は」
そのまま数分間、激しいキスを。
そもそも、付いていった緋禄も緋禄だ。
「咲輝…怒ってる?」
「怒ってるよ」
そしてまた激しいキスをした。
「ん、咲、…輝、ん、は―…ぁ」
この唇が、
この声が、
この体が、
他の誰かに汚されるなんてあってはいけない。
「知らない男についてくやつがあるか?」
「いや、だって…昔の咲輝の写真見せてくれるっていうからさ」
「そんなのでついていくな」
緋禄は俺の肩をぐっと押して、体を起こして反発してきた。
「何怒ってんだよ。あのさー、俺だって放置されてたんだぜ?暇だったんだから、俺を一人にした咲輝が悪いだろ」
いつもの俺なら緋禄を一人にさせてしまったことを謝るだろう。
でも今日はなぜか奥底に眠る本心が優先されてしまう。
「知らない男についていくほうが悪いだろ?」
そう言って、俺は緋禄の耳を舐めた。
「あっ」
「こんな耳だけでビクビクしてるやつが」
あと少し遅かったら―…
そう考えると止まらない。
耳を舐めつつ緋禄のスーツを脱がし、シャツのボタンを外していく。
「ん…ぁ、咲輝…」
シャツを脱がせて、俺は緋禄の肩に吸い付いた。
「ここ、あいつの手で抱き寄せられてたよな?…思い出しただけで腹が立つよ」
緋禄を汚す者は許さない。
そして俺以外に体を触れさせた緋禄にも苛立つ。
そう言って肩を舌で舐めたり、吸い付いたり、耳を舐めたりを繰り返した。
「緋禄は俺のだろ?」
「うん。…は…ぁ、ごめん咲輝。俺も、咲輝…だけ、だから」
「当たり前だ」
そう、他のやつなんて見てはいけない。
俺以外を考えてはいけない。
そしてもう1度激しいキスをしながら緋禄を押し倒した。
「咲輝…もしかして酔ってる?」
「ノーコメント」
酔っているのか、媚薬のせいなのか。
いずれにせよ、普段の自分じゃないことは確かだ。
「咲輝…好き」
緋禄のその発言に唇を離してキスを止めた。
好き、というのは友達としてなのか?
恋人ごっこをしているからなのか?
―…本心なのか?
「俺のどこが好きなんだ?」
「優しいとこ」
「あとは?」
恋人ごっこを始めて3ヶ月。
緋禄からの"好き"という発言が初めてだったので色々
知りたくなった。
「この茶色い髪も、しっかりした体も、声も、俺を呼ぶ声も、話すたび動く喉仏も」
緋禄は俺を見つめながら、好きなところを次々に言う。
「俺を見つめる綺麗な目も」
「そうか」
―…嬉しい
「緋禄、それは全部お前のものだ。俺はお前だけのもの、だろ?恋人なんだから」
俺の発言に少し驚いて照れている緋禄。
「咲輝は俺のどこが好き?」
「まず…柔らかい唇」と言って優しくキスをした。
「俺だけを見つめる綺麗な瞳」
何か1つ言う度にキスをして。
「俺だけが知ってるこの体」
普段の俺ならこんなこと言えない。
でも今日は素直になれている。
人差し指で緋禄の鎖骨からへそまでをツーっとなぞって。
ビクッとする姿でさえ興奮する。
「俺を癒すその笑顔が好きで好きでたまらない」
そう言って俺は緋禄の首筋を強く吸い、初めてキスマークをつけた。
「咲輝…」
「俺のだって印だ」
ほんのりと赤くなった首筋でさえ、愛しい。
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