35 / 56

純愛Ⅳ《緋禄side》1

大切な人がいなくなって、 いつかそれが思い出になって、 残るか、消えるか。 どっちかしかないんだ。 人間なんてそんなもん。 だけど俺は残りたい。 大切な人の記憶に―… ゲームを始めて5ヶ月が経った6月下旬のことだった。 「撮影?」 「あぁ。父と一緒に泊まりがけで台湾に。来週から10日間」 咲輝の父親に同伴して、カメラマンの仕事があるらしい。 多忙な親父さんから、編集の仕方とかもレクチャーしてもらうらしい。 まぁ、仕方ないとは思うけど。 「そうなんだ…」 「7月6日に日本に戻ってきて、この近くのホテルで3日間父と一緒に編集作業を教わる予定だ」 「そっか…」 予想もしてなかった。 咲輝と一緒に居られない時が来るなんて。 「一人で大丈夫か?」 「大丈夫だよ、気にすんなって!寺伝といるからさ」 ダメって言ったら行かないのかよ? って一瞬思ったけど、咲輝の邪魔はしたくない。 咲輝が撮影してるときや絵を描いてるときの真剣な顔が好きだから。 だから、ワガママは言わない。 言っちゃいけない。 面倒なやつになりたくないから。 俺は笑顔で見送るよ。 「ねぇ咲輝、しよ」 あれから、咲輝と何回抱き合ったか分からない。 咲輝は俺が辛くないように、きちんとローションを使ってくれる。 コンドームも着用して、爪の手入れもしっかりとして俺を気づかってくれている。 咲輝に抱かれてるときが一番幸せ。 声も、 体も、 俺を見る目も、 今は全部俺だけのもの―… あぁ、 離れたくない。 離さないで。 今だけは、俺だけを見て。 咲輝の中に俺を刻み込んで。 俺を、忘れないで―…

ともだちにシェアしよう!