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純愛Ⅳ《緋禄side》2

咲輝がいなくなって1週間。 もう限界だと思った。 いつも一緒に居すぎたから気付かなかったけど、咲輝がいないと不安になる。 俺の精神安定剤。 「…やべ」 最近体がついていかない。 …苦しい。 「雨月…?」 昼休み。 寺伝と一緒にカフェテリアで昼食を取っていたとき、急に胸が苦しくなって咳が止まらなくなった。 苦しむ俺を、寺伝が覗き込む。 こうなるって分かってたはずなのに。 あぁ、これはきっとマズイ―… 咳が止まらず、手には血がついていた。 「雨月!?」 寺伝が心配して保健室に俺を連れていく。 見ないで。 心配させたくない。 「保健室じゃなくて救急車呼んだ方がいいか…」 「呼ぶな!呼ばなくていい」 携帯で救急車を呼ぼうとしていた寺伝の腕を掴んだ。 救急車なんて呼んだら、きっと抜け出せない。 あの白い部屋から抜け出せない。 まだ、ダメなんだ。 「でも…」 「大丈夫だから。今日夕方から診察なんだ。そこで主治医に見てもらうから」 俺にはやらなくちゃいけないことが残ってるんだ。 「分かった。俺も一緒に病院に付いてく」 「それも嫌だ」 「じゃあ救急車呼ぶ」 「…分かったよ」 病院には行きたくなかった。 きっと、俺の体は悪くなってる。 日に日に体がついていかない。 「寺伝…やっぱり病院までついてこなくていいって。生徒会あるだろ?帰れよ」 ホームルームが終わってから、すぐにタクシーで病院に連れてかれた。 つぅか、半ば強制的。 「あんな血を吐いたやつ一人にさせられるかよ」 …まぁ、そりゃそうだ。 本当は、今日は診察をすっぽかして別の日に来たかった。 薬だけ貰えればそれでいい。 「緋禄くん!!」 「水沢ちゃん…」 昔から担当してくれてる看護師の水沢ちゃんが受付にいた。 「顔色悪いわね…大丈夫?先生呼んできてあげる」 その言葉に、余計に心臓が痛んだ気がした。 診察をして、嫌な予感は的中した。 「1週間、検査入院しなさい」 「待っ…とりあえず薬だけ下さい」 「半年前の薬じゃもう効かないよ。体が酷く衰えてる」 医者の一言が、痛かった。 強制的に検査入院が決まった。 寺伝が待合室で待ってる。 言いたくない。 「どうだった?」 「1週間、検査入院だって」 「マジで?」 病院に来たらこうなるって分かってたのに。 自分の体が憎い。 嫌だ。 一番、嫌いな場所。 「なぁ、寺伝」 「ん?」 「咲輝にはこのこと言わないで欲しい」 取材で泊まりがけしてる咲輝に心配かけたくない。 「分かった。じゃあ…俺は帰るから。寮に荷物あるんだろ?明日持ってくるよ」 「ありがとう」 1週間経ってからじゃ意味がない。 あと少しだけ体がもてばよかった。 咲輝がいたら、俺は倒れなかったのかな… 逢いたい。 逢いたいよ、咲輝。 だって明後日は、お前の誕生日じゃんか。 一緒に居られる最期の誕生日。 逢いたい。 苦しいよ、咲輝。

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