49 / 56

純愛FINAL《緋禄side》3

「本当の…恋人?」 「そうだ。ゲームじゃなくて、本当の恋人に」 意外な咲輝の発言に驚いた。 だって、俺はもうすぐ死んでしまうのに。 「ダメだ…だって…そんなことしたら、咲輝は辛くなるだろ…俺はお前を…遺して逝くんだから」 「死なないよ緋禄は。俺の中で生きる。生き続ける」 咲輝は泣きじゃくる俺の背中を優しく撫でながら言う。 「俺もまだ咲輝と一緒にいたい。ずっとずっと一緒にいたい…でも…俺はもうすぐ…」 「大丈夫。生まれかわっても俺は緋禄を探して見つけ出す。だから来世でもまた結ばれよう」 咲輝は立ち上がって自分の鞄から小さな箱を取り出し、再び俺の前に座った。 「緋禄、左手を出して」 その箱を開けると、中には指輪が入っていた。 「指輪…?」 咲輝はその綺麗な指輪を取り出して、俺の左手の薬指に嵌めた。 そして身に付けていたネックレスのチェーンを首から外し、俺が誕生日にあげた指輪を俺の右手に乗せた。 まるで王子様みたいに膝まづいて、咲輝は自分の左手を俺に差し出す。 「緋禄も俺を恋人として受け入れてくれるなら、俺の左手の薬指にその指輪を嵌めてくれないか?」 そんなの、いいに決まってる。 俺は緊張しながら咲輝の左手の薬指に指輪を嵌めた。 よかった。 サイズぴったりだった。 「緋禄がいなくなったら、この指輪とその指輪、2つの指輪は俺がずっと預かる。必ず来世で緋禄を見つけるから、そしたらまたお互いこの指輪を嵌めよう。嫌とは言わせない」 咲輝はそう言って、俺の左手の薬指にキスをした。 ばか―… 本当の王子様かよ… 「嫌なんて言うかよ…」 「よかった」 微笑んで俺を見つめる咲輝が愛しい。 まだ死にたくない。 まだ咲輝と一緒にいたい。 でも来世でも咲輝が俺と結ばれたいと願うなら、 死ぬのも、咲輝を置いて逝くのも怖くない。 俺が先に走り出すだけのことなんだ。 「待ってるからな…必ず咲輝が見つけてくれるって信じてるからな」 「あぁ。だから安心して、緋禄」 咲輝は俺を優しく抱き締める。 「咲輝…ごめん…ごめん…涙、止まんない」 「いいよ。今まで辛かったな。言いたいことがあるなら言って欲しい」 泣くことなんか、弱音を吐くことなんか許されないと勝手に思ってた。 でも俺は本当は弱くて、怖くて、辛くて、ずっと苦しかったんだ。 だから咲輝に甘えた。 「竜が…竜が俺の後を追ってこないか…心配で…」 「分かった。竜のことは任せて。みんなで協力して必ず後は追わせない。後は?」 咲輝に誘導されるように、たくさん話を聞いてもらった。 今まで抱え込んでいたものすべて。 咲輝はずっと優しい顔で聞いてくれた。 「ごめん。咲輝にこんなこと…言っても困らせるだけなのに…」 俺一人で抱えてればいいのに。 咲輝に甘えて止まらない。 「緋禄。お前は今まで一人で頑張りすぎた。俺には弱音を吐いて欲しい。それも恋人の役目だと思ってる」 「ありがとう…咲輝…」 俺が泣けなかったのは、俺が泣いたら他の人はもっと悲しむから。 だから今までずっと、苦しくても無理して笑っていたのに。 だけど俺がこんなに泣いても こんなに弱音を吐いても 咲輝は悲しい顔を一切せず、笑顔で優しく包み込んでくれた。 あぁ、咲輝を好きになって良かった。

ともだちにシェアしよう!