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第19話

「詩雨さん、ケーキまだ残ってますよ。食べましょうか」  また逸らされてしまった。  自分の眼の前に回ってきて、また口の中に突っ込まれた。あの恥ずかしい格好のままだ。本当に自分が餌を貰っているような気分になる。  狼の耳をつけた男も向かい合って寝そべり、黒猫の口を塞ぐ。すべてのケーキが食べ終わるまで舌で分け合った。  二匹の獣が口を貪り合う姿を、鏡で見続けながら。  そして、最後に。 「舐めて」  クリームやスポンジの欠片のついた指を突きだされ、詩雨はそれを自ら口を開いて迎え入れる。遥人の指がそれらを擦りつけるように口内を犯した。  その後。  一晩中黒猫は鳴かされ続けた。  勿論、大きさも重量も、何故かいつもより増している遥人の屹立に、何度も何度も奥まで突き上げられたのは言うまでもない。 ★ ★  瞑った目蓋の上からでも、明るい光が差し込んでいるのを感じ、遥人は眼を覚ました。  ベッドの上で半身を起こすと隣には誰もおらず、昨日散々汚したローテーブルの辺りも綺麗に片付いていて、クローゼットから出してきた姿見もない。  まるで昨日のことが夢だったかのように。 「あれ……夢だったのかな……」  ぽろっと口から零れる。 「ぶぁーか。夢なわけないだろっ」  ドアを蹴破りながら、詩雨が入って来た。 「散々なことしやがってっ」  昨日はあんなに、あんあん、にゃんにゃん鳴いていた黒猫のしおらしさは欠片も残っていなかった。 「片づけるの、ほんっと大変だったんだからなっ」 「すみません」 「ほんと、おまえ、酔ってたんじゃねーのか?  あんなことするなんて」  眼の前までやって来て憎まれ口を吐く詩雨の顔をまじまじと見、実は顔が紅くなっていることに気がつく。  やっぱり、可愛い。  強烈にそんな想いが込み上げてきて、ぎゅうっと詩雨の腰を抱きしめその胸に顔を埋めた。 「きっと、悪い霊に取り憑かれたんですよ。ハロウィンなんで」 「やめろーっ。ばーかばーかばーかっっ」  耳まで真っ赤にして、じだばたする詩雨を、どこまでも可愛くて愛おしいと思う朝であった。 ♡ おしまい ♡

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