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Inverse view 6
眦を涙が伝い落ちた。もう、何度目か、なんて数えてもいないけれど、定期的に涙が流れ落ちる。拭うことすら出来ない。
どちらかと言えば女性的な顔かもしれない、けれど男に組み敷かれるという屈辱の真っ最中であることは確かな現状で……
心の痛みなのか、生理的なものなのか……?
アルノルドの手淫は、巧みにわずかに残る冷静な己を失わせていく。その指が開かれた脚の間から、奥の秘所を、濡れた指が移動し、指が触れていた性器には、ねっとりと唾液を纏わせた舌がその形をなぞる。
口淫をされるのは、初めてではない。
けれど、男同士だけに、弱い場所を知り尽くしている。厄介なことに、ここぞとばかりに狙い撃ちされる。これほどに射精感をもたらされるのは初めてだった。
「……やっ!!……はぁ……も……いや……」
……イキタイ……
けれど、それに気付いているのか、根元を押さえ込まれて、その出口を塞がれている。
「……ん?なに?イキたい?でも、まだダメだよ。僕をもっと満足させてくれないと」
後孔を撫でて、たっぷりとそこを濡らしていた指が、ぷつり、とその場所を解すように、ゆっくりと挿入されていく。自分でも見た事すらない場所に指が入れられたことに抵抗を感じてしまう。
元々、排泄をする場所であり、受け容れる体制の出来ていないソコは、その異物を吐き出そうと、煽動するけれど、慣れた手つきで、グイッと入りこんでいく。いくら濡れていても突然のことに力をいれてしまうし、力を抜くことも出来ないし、異物感が半端ない。
「あぁぁ!!いやぁぁ!!痛い!!抜いて!!」
「……ほら、ちゃんと息を吐いて力を抜いて?すぐに悦くなるよ。入口はちゃんと解さないとね、キミが傷ついてしまう」
「……っ!そこは入口じゃなくて、出口だ!!」
訳の分からないまま発狂したように叫ぶ。指がゆっくりだけれど、どんどん奥に入っていく。違和感しか感じないのに……
――気持ち悪い!!痛い!!
そんなクリスの思いを裏切り、体内を渦巻く熱は萎えることなく性器からは、噴き出すように蜜が絶えることなく溢れてくるのを舌で絡めとりながら、反応を愉しむような声色だ。
「……ぅっ……やぁっ!!……ヤダっ、辞めて、痛い!!」
「……大丈夫だよ、キミはすぐに僕を欲しくてたまらなくなる」
そんなことは絶対ない、と思いながら、性器のそばで話せば振動が伝わってくる。ビリビリと背筋に快感が走り抜けていく。何をされても、快感にしか繋がっていかないと思ってたところにその指が引きずられそうな意識を戻してくれた……
と思うのも束の間、その指先が、中の一部に触れると、ビリビリと電流が走るような感覚と、目の前がチカチカ点滅して、真っ白になった。首と背が浮くように反ってしまった。
「はぁ…っっ!…アッ、アッ、あぁぁぁ!!」
「わかるかい?ココが君のイイトコロだよ。僕がコレから一生をかけて愛していく場所だ」
腹や胸に、熱い飛沫を感じて、自分が射精したのだと知った。
やっと、射精することが出来たけれど、燻る熱は、引く気配が全くない。
「初めてで後ろでイケるなんて、キミはどこまでも優秀だね。僕が想像していたより遥かに今、キミはすごくいい表情をしてる。これがずっと見たかったよ。もちろん、まだ夜は始まったばかりだからね。ゆっくりと時間をかけて、もっと気持ち良くしてあげるよ。簡単には離せそうにないな。僕が思ってたよりも色っぽい……」
やっとの放埒による、放心状態で、上がった息で、胸が上下する向こう側から、愉しそうな声をかけられていることはわかるのだが、すでに、言葉の意味は理解出来てはいなかった。
そもそも受け身に作られた躰ではないのだから、放埓の脱力と、体内に渦巻く熱で何かを言われても理解出来る状態ではなかった。
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