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第13話(完結)

 その後、咲夜はあれもこれもと嫌がっていた仕事を受けるようになっていた。  ターニングポイントは、破茶滅茶なギャグ漫画の実写作品。それも低予算の深夜枠だと言うのに、大胆な身体の張りようが口コミでかなり話題となった。  バラエティーでは天然毒舌キャラが受け、なんやかんや忙しくしている。次にオファーが来たサスペンスドラマでは、あまり出番はなかったシリアルキラー役にも関わらず身の毛もよだつ作品に仕上がり、正に主演を食うまでの快演ぶりを見せた。  特撮で一年しっかりと培った演技力と技術で声優業界にも触手を伸ばし、なんと子供から大人まで人気のアニメ作品でレギュラーの座を射止めた。  売れない役者が演じるなんて、と噛み付いてくる者には、「自分はリアルタイムで観ていたから、知らない方が情弱だ」と、したり顔の当時子供だった大人が擁護する場面もあった。  そうして露出度が高くなったおかげで、ファン層は一気に増え、今はハリウッド映画の吹き替えの誘いも来ているらしい。声の演技もずいぶん達者になっているから、字幕派の厳しい映画ファンも納得するだろう。  彼のその多岐に渡る才能がようやく開花したのだと本人が実感するのは、もう少し経ってからの話。 『星彩戦隊シャイニングキャスト陣、十年ぶり再集結インタビュー! 変わらない仲の良さアピール、今だから言える珍エピソードも!?』  SNSで特撮ファンや本人達のアカウントが嬉しそうにシェアしていたネットニュース。  そこにはもちろん、メンバーを毛嫌いしていたはずの咲夜もいて……でも、なんだか当時より生き生きとした顔をしていた。  いや、イケメンなのは変わらないんだけど、何となく柔らかい雰囲気になったというか。  咲夜のアカウントにはスタッフではなく、本人のコメントで「人生を変えてくれた盟友達。我ら道分つとも、そこに煌めく星がある限り光が導いてくれるだろう、シャイニングは永久に不滅也!」と最終回でのシリウスブルーの名言や絵文字付きで、咲夜自身もメンバー達ととびきりの笑顔を見せているオフショット動画を載せていた。  クール系で売っていた咲夜の、思わぬ友想いの優しさや情熱はファンを感涙させ、また新しい仕事に繋がるんだろうなと感じさせるものだった。  遠くに行っちゃうなぁ、でもそれで良いんだ。だって咲夜はスターになるべき人で、自分は雑魚の達人だから。  個人的な連絡は続けていたし、忙しい合間を縫って逢瀬もしていたけど、もうなかなか難しくなるだろう。寂しくはなるけど、遠距離恋愛だと思えば。  あれだけの美貌の咲夜だから、これから同い年くらいや売り出し中の美人女優とキスシーンなんかもあったりするだろう……しかし、そこが逆に燃える。絶対に録画して何度も観なければ。  佐古もひっそり応援の気持ちで「いいね」を押した。  しかし即座に気付かれ、「悪の幹部までいいねすんな!」といつものテンションの咲夜から引用されてからかわれたのは、ファンからすると思わぬ角度から投下された爆笑ネタになってしまったようだ。  何かのドラマの脇役や、それこそ特撮のゲストで出るたびに、死ぬほど擦られて、売れっ子の言葉の怖さを知った。  うん、うん。そうだよな。  やっぱりヒーローより悪の幹部が売れるはずがない!  ……だよね?

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