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第2話 友達の定義とは

「いいだろ別に。だめかよ、散歩」 「いや全然いいよっ。なんか可愛いーって思って」 「はぁ?」    散歩の何が可愛いんだ。意味がわからない。   「なぁ、シモンって呼んでいい?」 「もうとっくに何度も呼んでるだろ」 「ふはっ。そうだったっ。じゃあ俺のことは雅って呼んでっ」 「…………俺が?」    影みたいな俺が……人気者の小嶋を……?   「もう友達だろっ? これからよろしくなっ!」    え、いつ友達になったんだ?  友達の定義とは……?    今日は変な日だった。どっと疲れた。変なやつに懐かれた。  そんなことを思いながら、いつものように学校帰り、ばあちゃんの入院先を訪れる。  家の最寄り駅前にある病院。もう一年以上入院してる。  おそらく、もう家には戻ってこられない。母さんには「覚悟しておいて」と言われてる。 「ばあちゃん」 「……あ、史門。今日も来てくれたの?」 「通り道だからね。ばあちゃんが嫌がっても毎日来るよ」 「私のことはいいから。早く帰って勉強しなさいな」 「ちゃんとやってるって」  椅子に腰をかけ、今日も二人でたわいもない話をする。  俺は、ばあちゃんが大好きだ。日に日に弱っていくばあちゃんに、少しでも笑顔で楽しい時間を過ごしてもらいたい。  だから俺は、通話でしかスマホが使えないばあちゃんに、毎日SNSの使い方を教えた。毎日、丁寧に、根気よく。  今では、俺の空の写真に“いいね”を押してくれるまでになった。 「昨日の写真、綺麗だったろ?」 「また無理したんでしょう? でも、あんなに綺麗な朝日がまた見られるなんて思わなかったわ。ありがとうね史門」 「ただの趣味だよ。昨日はたまたま早く目が覚めてさ」  ばあちゃんが嬉しそうに写真を見てくれるから、俺は毎日SNSにアップする。  ばあちゃんの“いいね”が、今日もまだ大丈夫(・・・)だと教えてくれる。  でも、最近はベッドから身を起こすことすら困難になってきていた。俺は“いいね”がいつ途絶えるかと、毎日不安に襲われるようになった。           ◇   「シモーン!」  弁当を手に雅がやってくる。  雅はあれから毎日昼休み、ベンチにやってくる。  昼休みだけじゃない。授業の合間にも教室にきて、俺の写真を眺めては「はぁ癒されたー」と戻っていく。  雅に懐かれた副作用で、俺は急に友達が増えた。  友達の定義とはっ?!  そう声を大にして言いたいくらい『俺の友達』と自称する人が増えた。  そんなこともあって、最初は懐かれて迷惑だなと思っていた。でも、一緒の時間が増えるにつれ、雅のそばがどんどん居心地の良い場所へと変わっていった。  一番のきっかけは『ばあちゃん』だ。 「ばあちゃんがさ、シモンの写真のファンなんだ」 「え、雅のばあちゃんSNSやってんの?」 「いや? 俺が毎日見せてんの。てかいつも一緒に見てんの」 「マジか。じゃあ雅の“いいね”は二人分なんだな」 「そうっ! そうなんだよっ! 二人分なんだよっ!」  雅もばあちゃんが大好きだと知って、急に親近感がわいた。  そこから急速に仲良くなった。  雅のことは、今は本当に大切な友達だと思ってる。    

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