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第7話 これからもよろしく
◇
「シモン、おはよ」
「み、みや……っ……」
昨夜たっぷり考えて、それでも自分の気持ちがよくわからなかった。
どんな顔をして雅に合えばいいのかと悩んでいたら、校門に寄りかかる雅がいた。
雅はうつむき加減で、でも、明るい口調で話しかけてきた。
「シモン。昨日のことは忘れて? 今までどおり普通に接してよ。もう困らせねぇからさ。な?」
俺を見上げて笑顔を向けた雅が、みるみる目を見開いた。
「シ、シモ……」
雅が口を開けて驚いている。
それはそうだろう。寝不足でクマはひどいし、鏡を見なくても自分の顔が真っ赤になってるとわかる。だって湯気が出そうなほど顔が熱い。
雅が俺を好きなんだと思ったら、もう平静でいられない。
「み、雅……お、俺……」
「シモン、ちょっと来て」
「み……みや……っ」
グイグイ腕を引かれて体育館の裏まで連れて来られた。
「……シモン。そんな顔されたら俺……期待しちゃうけどいいの?」
「き、期待……って」
「シモンも、俺と同じ気持ちだって」
期待でいっぱいの熱っぽい瞳で、雅が俺を見つめてくる。
「わ……わかんない。でも、昨日から変なんだ。雅を見てるとドキドキして、胸が苦しくて。で、でも、試合の熱気のせいだと思っててっ、だからっ」
「もうごちゃごちゃいいよ。なぁ、想像してみて?」
「そ、想像?」
「シモンは俺と、キス……できる?」
雅とキス?!
想像したら顔から火が出そうになった。
「すげぇ顔真っ赤。昨日は赤くならなかったのに……」
「きっ昨日は、頭の中混乱しててっ」
「……じゃあ、今はなんで赤いの?」
「わ、わかんない……」
「キス、してみていい?」
「えっ!」
雅は俺の首に腕を回し、ゆっくりと顔を近づけた。
「みっみや……っ」
柔らかくてあたたかい雅の唇が俺の唇に優しくふれた。
ドドドッと心臓が暴れる。
ふれ合った唇から、まるで電流が流れるように全身がしびれた。
もう心臓が壊れそうだ。
ゆっくりと、唇が離れていく。
「俺のキス……いやだった? もう……したくねぇ?」
雅の声が震えていた。
いろいろごちゃごちゃよくわからない。でも、その答えはもう決まりきってる。
「……したい。もっとしたいっ」
俺は、雅の頬を両手で包んで唇をふさいだ。
「シ……モン……っ……」
頭がしびれるほど気持ちがいい。胸が張り裂けそう。心臓が痛い。
何度も角度を変えて夢中でキスをした。
唇がふれ合うたびに響く音と雅の熱い吐息が、俺の身体を震わせた。
唇をそっと離すと、瞳をうるませて頬を赤く染めた雅が俺を見つめる。
「好きだよ……シモン……すげぇ好き」
「……たぶん、俺も好きだ」
「なんだよたぶんって」
「ご、ごめんっ」
「……たぶん……じゃ、付き合えねぇ……か」
「つっ! 付き合うっ!」
「たぶん、なのに?」
「だってもう俺、心臓壊れそうなくらいドキドキしてるし、もっとキスしたいっ。これって、好きってことだよな……?」
目に涙をにじませて破顔した雅が、俺の胸に顔をうずめてぎゅっと抱きついた。
「それ、好きってことじゃね?」
「うん、じゃあ付き合うってことでっ!」
「……やべぇ……俺涙出そう……もう絶対振られたと思ってた……」
「俺は……クラクラしてきた……もう倒れそう……」
雅を腕の中に閉じ込めるようにぎゅっと抱きしめる。
「シモン……」
「うん?」
「これからもよろしくな……俺の彼氏」
「かっ彼……っ、う、うんっ」
腕の中で雅がふはっと笑った。
「シモン可愛い」
雅と、これからは恋人なんだと思うと、心臓が爆発しそうになった。
「雅……っ」
「ん?」
「俺、キスしたくて死にそう……っ」
「……ん、俺も」
顔を上げた雅と見つめ合い、俺たちは吸い寄せられるように唇を合わせた。
ばあちゃん、見てる?
俺、今すごい幸せだよ。
終
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