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第19話

「……ええと、その……でもジャックロフト王太子殿下は、だから……最近親しい方がいるのでは?」 「お前とエドワーズのようにという意味か?」 「僕とエドワーズ殿下のようにとは?」  気配に飲まれていると、立ち上がったジャック様が歩み寄ってきて、正面から僕を抱きしめた。 「誰にも渡すつもりはない」 「なにを?」 「お前を」 「僕を……?」 「もう我慢できない。お前の気持ちが俺に定まってからと考えていたが、待てない。好きだフェルナ。俺はお前のことがずっと好きだったし今も好きだ。何度も惚れ直した。最高にお前が好きだ」 「え!?」  僕はその言葉に、純粋に驚いた。嬉しすぎて顔が融解しかかったので、俯いてごまかす。 「だから早くお前も、俺を好きになってくれ」 「!!」  既に僕もジャック様の事が好きだから、心拍数が大変な事になってしまった。 「ジャック様……」 「なんだ? 久しぶりにその名で呼んでくれたな」 「……その、嬉しいです。本当に嬉しいです」 「フェルナ?」 「僕も好きです。お慕いしております!」  僕も勢いあまって気持ちを伝えた。すると僕を抱きしめていたジャック様の腕に、変な力がこもった。 「もう一度言ってくれ」 「好きです。ジャック様こそもっと言ってください」 「フェルナが好きだ。愛している」  その後僕達は顔を見合わせて、そしてどちらともなく満面の笑みを浮かべた。  翌日からは、僕はエドワーズ殿下とジャック様と三人で食事をし、噂の払しょくをしていたという説明もきちんと行った。するとジャック様が難しい顔をした。 「俺のせいで嫌な思いをさせた事をまず謝らせてくれ」 「別にジャック様のせいでは……いや、どうかなぁ」 「俺は今後、もっとフェルナを愛している事を前面に打ち出していく」 「それはやめましょう。僕が恥ずかしいです」  そんなやりとりをした。  結果――ジャック様は有言実行の人だった。噂はすぐに消えてしまった。  このようにして三年目の日々は忙しなく過ぎ、四年目に突入した。

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