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高校編~第三話

   部活が終わり早々に帰ろうとする秋葉を待ち伏せて、腕を掴む。  意味が分からないと慌てる秋葉を無視して、空き教室に連れ込む。 「っ、何の真似だ!?」 「それは俺の台詞です」  〝意味が分からない〟と、いった表情でこちらを見つめてくる秋葉を睨み付けて、葵は秋葉を組み敷く。 「今日、あんなことした理由を教えてもらってもいいですか」  再び首を傾げる秋葉にグイッと顔を寄せて、葵は苛々したように口を開く。 「…俺は部活に出るとは言いましたけど、アンタと違って真面目にやろうとか一切思ってないんですよ。極力、あんなとこで目立ちたくない。適当に練習して、たまに試合出て……そういう生き方がいいです。あんな大勢の前で啖呵切るようなこと、するつもりなかったんですけど、一体どうしてくれるんですか」 「俺はお前と「それはもう聞き飽きました」」  秋葉の葵に対する行動原理は本当に〝葵と戦いたい〟だけなのだろう。馬鹿がつく程に純粋で真っ直ぐで。こちらがいくら突き放しても、気付くと後ろにいる。今まで適当な人間関係しか築いてこなかった葵にとって、ここまで誰かに執着されるというのは数少ない経験で正直手に余る。どうしていいか分からず、どうしようもなく苛々する。 「とりあえず約束通り、アンタ俺に抱かれてください」  これが秋葉に対する八つ当たりだということくらいは自覚しているけれど、約束は約束だなどと自分自身を誤魔化して、正当化する。 「…お、俺も何かした方がいいのか?」 「…は?」  頭上でそんな声が聞こえたのは、秋葉の制服のボタンを外して、その綺麗な胸板に唇を寄せようとしていた時だった。 「アンタ…こういう経験ないでしょ…。先輩は何もしなくていいので、目でも瞑って女に触られてる想像でもしててください」  気を取り直して、そっと秋葉の肌に触れる。  部活終わりの少し汗ばんだ身体。 「安心してください。いきなり挿れたりは流石にしないであげるので」

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