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中学編~第五話

学校もようやく夏休みに入り、7月の終わり。 約束通り、しおりと一緒に二人で浴衣を着て花火大会と夏祭りに行った。実際はわからないけれど、この2ヶ月しおりは楽しんでくれたと思う。この夏祭りの終わったあと、7月最終日は会えないとしおりが言うので、彼女との恋人ごっこは今日が最後となる。客足も疎らになり、二人で近くの神社の階段に腰を下ろす。 「しおり…そろそろ帰らなきゃいけない時間だろ?送って行くよ」 「やだ……。帰りたくない。葵と別れたくない…」 しおりの目には、うっすら涙が浮かんでいる。 「それは出来ないよ。期限は2ヶ月って最初に言ったろ?」 「私…葵が自慢したくなるような彼女になるから……!だから…お願い、別れないで…」 しおりが縋るように抱きついてくる。英国でいた彼女もそうだった。日本に行くと決まって、別れを切り出した時もこうして散々泣かれた。前も今も思うのは同じ。どんなに楽しくても、この瞬間だけは『重いなー、煩わしいなー』と思う。 泣きわめくしおりをなんとか宥めて、家まで送る。最後に『バイバイ、楽しかったよ。ありがとう』そう言って別れる。 今は夏休み。また9月になれば、告白されて違う誰かと付き合うことになるのだろう。夏休み後半は誰とも付き合うつもりはなかった。 家へ帰る途中、久しぶりに巽のところへでも連絡を入れてみようと思った。 しおりと付き合っている間も、ほとんど夜は誰かの腕の中で過ごしたけれど、最初に会ったあの日以来巽には連絡を取っていなかった。メールをするとすぐに返信が来て、『一時間後に迎えに行く』とのことだった。家に帰って、準備をしてちょうどいいくらいの時間だ。無意識に早足になり、家路を急ぐ。

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