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第4話
またしてもロダンテにとって非常にまずい事態になった。いや、同じ局面に立たされてツイている、と解釈する人間もいるだろうが、生真面目な童貞のロダンテにとってはまずい事態だった。
ロロがロダンテ手製の媚薬をジュースと間違って飲んでしまったのだ……!
それはロダンテが魔法陣を用いたテレポートによる通信販売で街の人間たちに売って収入源としているもので、ぱっと見はたしかに、小瓶の中で泡立つピンク色の液体で、ジュースやカクテルのように見えなくもない。
どぎつさを回避したほうが幅広い層に売れるだろうと、外来語で『恋の魔法』を意味する商品名にしたなけなしの商魂が仇となったか。
ロロに外来語など読めるはずがなかった。否、母国語でわかりやすく『媚薬』と表記してあったところで彼ならラベルをまともに読まずに中身を飲み干しかねない。
ロダンテは額に手を当てて俯いた。
(なんという馬鹿な犬なんだ…! 私の頭脳でも到底、予測しきれない馬鹿さ加減だ…)
ブルーになるロダンテとは対照的に、ロロは実にハイで、体の中で荒ぶる熱を持て余していた。
「ごしゅじ~ん♡ 体があちぃよ、ケツがむずむずするよ、ご主人と交尾してぇよ~~♡♡」
ロロはとっくに服を全部脱ぎ捨て、その豊満な筋肉質の肉体を惜しげもなく空気に晒してロダンテを誘っていた。
「ごしゅじん♡♡ ごしゅじん♡♡ はやく交尾しようぜ♡♡」
(頭の悪い誘惑が脳に直接揺さぶりをかけてくるッ…!)
ロダンテは頭を抱えて蹲った。
「ご主人? 頭、いてぇのか? ちゅーしたら治るんじゃねぇか?」
ロロなりに口実をつけ、なんとか交尾に持ち込もうと画策してくる…! ロダンテはすっかり参ってしまった。
「よ、よくないんだよ。たとえば酒での酩酊状態とか、ジュースと間違って飲んだ媚薬に酔っているとか、そういう人間とそういった行為をするのは。だから、私の売る媚薬には必ず、双方の同意のもとに使用するよう注意書きが同封してあっッへぶっ!!」
ロロはロダンテの言葉を最後まで聞かずにロダンテの唇を塞いだ。
(ん~~~♡♡ ごしゅじ~ん♡♡♡)
ロロは夢中でロダンテの口内を舐め回す。
「ンーーーーーーッッ!! ンンンーーーーーーーッッ!!」
ロダンテは鼻に抜ける悲鳴を上げ、ジタバタと暴れるが、如何せん、ロロのほうが一回りも二回りも体格と筋肉量で勝っているため、身動きがとれない。
(し、しまった…。食い意地の張ったロロの目につくところに媚薬<あんなもの>を置いとくんじゃなかった…!!)
今更、後悔しても遅かった。ロロは夢中でロダンテの舌や上顎や歯列の裏側を味わっている。
「ンンーーーーーーッッ!!!!」
「ぷはっっ!!」
やっと口と口が離れた。ロダンテは肩で息をし、ロロはうっとりと瞳を蕩かせていた。
「ごしゅじんとのちゅー、きもちぃ♡♡♡」
目にハートマークの入っているような顔つきのロロに見つめられて、ロダンテも思わず勃起してしまった。
(ああ、いけない…。私としたことが、これでは今すぐロロを襲いたいという願望があると声を大にして言っているようなものじゃないか…!)
しかし、ロロはロダンテの勃起に気づく余裕すらないらしく、勃起については完全にスルーしてひたすらにロダンテのほうから挿入してくれるよう誘惑した。
ご主人♡ ご主人♡ と誘う甘い声が理性を蝕む。ロダンテは下唇を強く噛み、耐えた、耐えた、耐えた、耐えに耐えた。次第に唇から血が滲んだ。
(は、早く媚薬の効果が切れてくれ~~~~~!!!!)
ロダンテの悲願が通じて漸く媚薬の効果が切れる頃には、ロロはことんと寝落ちしてしまうのだった……。ロダンテも糸が切れて眠りにつく。
そして、翌日、ロダンテの下唇に出血の痕跡があるのを発見したロロは、昨日の発情のことなどけろっと忘れて何の悪気もなく
「ご主人、口、怪我してるぞ。舐めて治してやろうか?」
と、提案するのだった。
「も、もういい…。」
ロダンテが青ざめながら言えば、ロロは
(もう…?)
と、至極不思議そうに首を傾げるのだった……。
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