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第39話 壊して★

 そして、日曜日の夜。  プールと量販店、ふたつのバイトを終えてシュウさんの家に戻った俺は、風呂に入り、全裸でソファーに座るシュウさんの前にぺたり、と座り込んでいた。  シュウさんは俺の首からドッグタグを外すと、変わりに首輪をかけた。  紅い首輪で、俺とシュウさんで選んだ。  首輪をつけられて俺は、大きく息を吐く。  カラーと呼ばれる、DomとSubの間でパートナーの関係が成立した時に贈るもの、らしい。  これで俺、ちゃんとシュウさんのパートナーになれるんだ。  首輪をつけられるのなんて信じらんねえって思っていたのに、今は嬉しくてたまらない。   「日にやけた肌に、紅い首輪が似合うね」  笑いながら言い、シュウさんは俺の首輪を撫でる。 「おいで、漣。鎖も付けてあげるから」  そしてシュウさんはじゃらり、と音を鳴らして鎖を手に持った。  俺は、仰向けで寝転がるシュウさんの上に跨り、自分から挿れようと腰を下ろした。  ローションにまみれた俺の後ろの穴は、ぬぷり、と音を立ててシュウさんのペニスを飲み込んでいく。 「あ……あぁ……」  途中で動きを止めてしまうと、鎖をぐい、と引っ張られてしまった。 「ほら、まだ少ししか入ってないでしょ?」  意地悪く言われるのも、今の俺には心地よかった。  鎖を引っ張られて少し苦しいのに、それさえも快楽に変換されてしまう。  俺はシュウさんのお腹に手を置いて、さらに深く腰を埋めた。  ジュブ……と、音が響き先端が前立腺を掠めて奥へと入っていく。  やばい……これ、気持ちいい……  俺が上になったのって初めてじゃねえだろうか?  俺は限界まで腰を埋めると、大きく息を吐いた。  いつもより奥まで入ってる気がするのは、俺が上になってるせいだろうか。 「シュウ……さぁん……」 「ほら、自分で動いて? じゃないと気持ちよくなれないよ」  つまりそれは、シュウさん、自分から動く気はないって事だろうか。  俺はゆっくりと身体を上下に揺らした。   「う、あ……あ、あぁ……」  動くたびにローションや鎖が音を立てる。  やばいこれ……俺が上なのに、主導権はシュウさんが握ってるみたいですげぇいい……   「シュウさん……シュウ、さぁん」  繰り返し名前を呼びながら、俺は腰を揺らす。  自分で乳首を弄り、口の端から唾液が流れるのもお構いなく俺は喘ぎ、快楽を貪った。 「いつもよりサブスペースに入るの早いね。首輪のせいかな」  そんな呟きが聞こえてきたけど……サブスペースってなんだっけ……  中、ぐちゅぐちゅで気持ちいいよぉ。  奥も、前立腺も、全部気持ち良すぎる。  イきたいよぉ……でもまだいい、って言われてない。 「秋星さぁん……中、すごいぃ」 「そうだね。中、すごい収縮してる。もしかして空イキしてる?」  違う、イってない。  俺は首を横に振り、 「イってない……だって、いいって言われて、ないからぁ」  と、鼻にかかる声で答える。   「じゃあもう少し頑張って? 漣の蕩けた顔、もう少し見ていたいから」  そう言うと、シュウさんは腰を揺らし始めた。 「だ、めぇ……いいよぉ! 奥、気持ちいい!」  シュウさんの動きに合わせて俺も身体を上下に揺らすと、もっと奥までペニスが入ってるような錯覚を覚える。  その感覚にまた俺は高められていくけど、イっていい、っていう言葉がないからぎりぎりのところで俺は耐える。 「秋星さぁん……もう、我慢、できなくなるよぉ」 「わかった、漣。イっていいよ」  言いながらシュウさんは鎖を引っ張った。  そのせいで首輪が軽く締まり、びくびくと身体が震えて頭が白くなる。 「あ、あ、あぁ……」  今日はペニスにリングを嵌めていないのに、俺は射精せずに達してしまった。  空イキは何度もイけるのが特徴らしいけど、俺はこのあと何回イくことになるんだろう。 「締め付けがすごいね。リングしなくても出さずにイけたね」  言いながらも、シュウさんは腰の動きを止めなかった。 「い、い、イってる……イってる、からぁ!」 「好きでしょ、何度も空イキするの。自分でも腰、振ってるじゃない」 「すき……すきぃ、空イキ、気持ちいいよぉ」  すっかり思考までとけた俺は、自分でも腰を振り、快楽を貪り続けた。  何回俺、空イキしただろう。  回数なんてわけわかんなくなってきた頃、シュウさんの声が聞こえてきた。 「今日も中に出してあげる」  詰まる声で言ったかと思うと、シュウさんの動きが止まり中が熱くなる。  あぁ……中でイったんだ。  心も身体も、身体の中まで俺、シュウさんでいっぱいになってる。  そのことに幸福感を覚えて俺思わず笑みを浮かべてしまう。 「漣、嬉しいの?」  その問いかけに俺は、頷いて首輪に繋がる鎖に触れた。 「だってぇ……中もシュウさんのでいっぱいだからぁ……」 「面白いことを言うね。嬉しいならよかったよ……後で綺麗にしてあげるから」  そうだ。後でまた一緒にお風呂、入れるんだ。そうしたらそこでまた……  終わらない、シュウさんと俺の時間。  あれ、俺いつまでここにいるんだっけ。  八月はもうすぐ終わる。だけどまだ夏休みは続くし、九月にはシュウさんの誕生日がある。   「シュウさん俺……まだここにいていい?」  うっとりとシュウさんの顔を下ろして尋ねると、彼は嬉しそうに笑い言った。 「いいよ、いて。夏休みはまだ続くしね」  よかった……俺、まだここにいられるんだ。 「やったぁ……ねえ、シュウさん、俺、壊れるくらいシュウさんでいっぱいにしてほしい」  前にシュウさんは俺に、壊したくなる、って言った。  俺も壊してほしいって思う。  ノーマルな俺を壊して、Subな俺だけにしてほしい。  俺の言葉にシュウさんは少し驚いたような顔をしたけど、すぐに笑顔になりそして、鎖を思い切り引っ張った。  その勢いで俺は、シュウさんの身体の上に倒れこんでしまう。  そんな俺の頭を撫でながら、シュウさんは目に妖しい光を宿して言った。 「君が望むだけ、僕は君を壊してあげる」  そしてシュウさんは俺に口づけた。

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