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25.
「⋯⋯玄一は、僕のこと⋯⋯好きなの」
声を振り絞るように言う。
「好き⋯⋯? あー⋯⋯そうか」
泣きそうになるのを堪えていると、背後で妙に納得している声が聞こえた。
「そうだな。志朗のことを友達としては好きだが、恋愛としては⋯⋯どうだろ。そうか、言われて気づいたわ。今度はその気持ちの変化で──」
「──もういい」
痙攣している体を無理やり起こした。
「この実験は今日で終わり」
「なんで? 志朗、今のところ何にも解決してないぜ」
「今もそうだけど、そんな気持ちでいる相手に抱かれたくない」
「えっ、待てよ」
ズボンを履き直し、さっさと黄丹から離れようとすると呼び止める声が聞こえた。
「は? お前はそれでいいのかよ。一時でも男のことを好きな気持ちでいるんだぜ」
「一時でもなんでも、せめて好きな気持ちで抱かれたいよ!」
「⋯⋯へ?」
黄丹にぶつけるかのように言う時、彼と目が合った。
眉間に皺を寄せ、頬を引きつらせていた。
ズキリ。
心臓を直に鷲掴みされたかのような激痛が走る。
見てられない。
なんてことを言ってしまったんだ。
「あっ、おい! 志朗!」
その声で名前を呼ばれるのも嫌になるから。
現実から目を逸らすかのようにその場から逃げ去った。
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