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純粋な子犬(黒井 side)

赤坂と一夜を共にしてから、僕は積極的に彼に話しかけた。わざと用意していた傘で相合傘もできた。こんな時のために折り畳み傘を常備している。だって折り畳み傘の方が小さいから接近できちゃうじゃん?肩と肩が少し触れるだけでも感じちゃったよ。 雨が降った時用?いいや、赤坂と相合傘する用。この傘は日傘にもなれる。晴れの日でも使えるんだよ。 最初は挨拶を交わすだけで幸せだったのに、もっと話したいと願うようになった。でも、周りにはクラスメイトがたくさんいて「愛してるよ」とか言いづらい。僕はもどかしい思いをしていた。 この前なんて、赤坂は女子達に呼び出されていた。辺りが騒がしくて会話までは聞き取れなかったけど、赤坂の反応的に告白されたとかではなさそうだった。告白されてたらどうしようって思ってたから……。 その女子達は翌日、僕と赤坂が話している最中にやって来た。やっぱり赤坂に気がある……?でもごめんね、それだけは譲れないんだ。だって僕は赤坂を誰よりも愛していて、あの日は一緒に寝たのだから。 「同じベッドだったから、距離も近くて話しやすかったよね!」 何も間違ったことは言ってないよ。ね、赤坂?僕達は朝日が昇るまで共に過ごした仲。たじろぐ赤坂が可愛くて仕方ない。赤坂に好意があると思われる子達には申し訳ないけど、諦めてもらうしかなかった。 昼休みはいつも通り、別館2階の空き教室に行く。でもいつもと違って1人じゃない。 「リオン、ちゃんと僕、赤坂にアピールできてるかな?」 「バッチリなのです。もうクラスメイトの前で愛を宣言してもよいのでは?」 「そっ!それはまだ流石に恥ずかしすぎるよぉ……!」 リオンの発言に僕は顔が熱くなってしまった。みんなの前だと緊張しちゃう。女子3人に「赤坂は僕の愛しい人」宣言するだけでもかなり勇気が必要だったもん。 昼はしょっちゅう、こうしてリオンと話している。どうやったら赤坂との仲が進展するか、とかね。 リオンは僕の反応にくすくすと笑った。 「凉音は観察していて面白いです。弓弦への欲望に忠実に行動していながら、まだ純粋なところもあって、そのギャップがいいのです」 「ううー、本当は臆することなく赤坂に愛を示したいんだけどね」 そう、僕はまだまだ純粋。なかなか直球に行動に移すことって難しいんだよね。いざ目の前にするとドキドキしちゃって。でもあの日を境に前進したのは間違いないだろう。 そして赤坂が日直の日。放課後のために僕はスタンバイしていた。ようやく2人きりになれた。僕は想いのまま彼に抱き着いた。赤坂は驚きはしたけど、優しく抱きとめてくれたよ。あの時の赤坂の感触が忘れられない。厚い胸板にあったかい匂い。まるでフェロモンのようだ。 みんながいると上手く話せない。愛を告げられない。愛を表現できない。そう伝えると、赤坂は少し切なそうな表情を見せた。 「そっか。黒井は俺と同じだな」 「えっ……」 「俺も、黒井と同じ気持ちなんだと思う」 「赤坂……」 もしかして、赤坂も僕と愛し合いたい、セックスしたいって思ってくれているの……?胸に純粋な欲望が溢れ出す。体中が赤坂を欲している。 このまま教室でセックスしようかと思った。ちゃんとコンドームも用意してる。けど、またしても日常会話に持っていかれた。それはそれで楽しかったんだけどね。赤坂は僕の話を、目線を合わせてしっかり聞いてくれるから。その視線だけで満たされて射精しそうになったよ。 赤坂にはお兄さんがいるらしい。どんな見た目なのかな。赤坂は似てないって言ってたけど。いつかはご挨拶しないといけないのだから、その時までにちゃんと練習しないと……! 2人で教壇に座り込んで話す。誰もいない教室。赤坂の甘い声が僕の耳を溶かしていく。この時間が永遠に続けばいいのに……。 しばらくお喋りしていると、赤坂がスマホを触って呟いた。 「そう言えばさ、俺黒井の連絡先持ってないよな?」 僕はきょとんとした。ふと自分のスマホをポケットから取り出す。当然、メッセージは0件。 「よかったら交換しようぜ」 赤坂の笑顔が、外から入り込む光に照らされている。光のシャワーを浴びているかのように。辺り一面が輝いて見えて、僕は温かな気持ちでいっぱいになった。 「うん!嬉しい!」 「おいっ、近いってば!」 スマホを持って僕は赤坂にすり寄った。照れ屋さんだなぁ、赤坂は。スマホとスマホをかざすこのひと時も幸せだった。だって僕と赤坂が重なり合っているみたいだもん。 赤坂とお話することばかり考えていて、連絡先の交換のことをすっかり忘れていた。それを赤坂から言ってもらえるなんて……!やっぱり欲望に素直になったおかげなんだ。これから毎晩赤坂にメッセージを送ろう。 彼はどんな文章を送るんだろう?素っ気ない感じ?それとも意外と絵文字付き?今からワクワクが止まらない。毎日彼のアイコンや言葉をオカズにしよう。 「赤坂」 「ん?」 「いっぱいメッセージ送っていい?」 「お、おう……」 「わーい!やったぁ!」 「だーっ!だから抱き着くなって!お前は子犬かよっ!」 顔を引きつらせながらも髪に触れてくれる赤坂。僕は赤坂だけの子犬だよ。ご主人様の命令は絶対に守る、従順な、ね?

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