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「ねぇねぇ、進路どうする?」 「進路ねー…」 HRの終わった教室がザワザワうるさくなる。 男女共学高校の、現在3年生。 来年卒業の僕らは進路を選ばないといけなくて、周りには既に推薦で内定をもらってる人もいる。 (進路、かぁ……) 前の女の子たちが話してるのをぼうっと聞く。 僕の場合は、両親や一族が決めるんだろうな。 そのうち指示が来るんだろう。 なるべく早く欲しいな。なんか地に足がついてない感じでふわふわするし。 今から進学とか言われたらどうしよう…一般入試に賭けるしかないよな、一応勉強しとく……? 「でもさ、竹田(たけだ)さんはいいよね。 運命の番みつけたんでしょ?」 「やばいよね、そのαのとこ永久就職じゃん。この歳で既に勝ち組とかまじ羨ましい」 「運良すぎじゃない? そんな強運あるなら全然Ωでもいいわ」 このクラスには珍しくΩが1人いる。 最近運命の番と出会った女の子。 ずっと下ばかり向いていたが、このところ前を向いて明るく話すようになった。 〝運命の番〟 奇跡に近い確率で出会うαとΩのカップルのこと。 御伽噺と思ってたのに、まさかこんなに近くで出会う人がいるなんて。 しかもすごく変わった、キラキラしてる。あんまり話したこと無いけど、あんなに可愛かったっけ竹田さん? 僕にも、いたりするのかな。 もうほぼほぼβの体だけど、いたりしたのだろうか。 (堤さんならな…なんて、思ったり……) 堤さんはβだ。いつか世間話したときに言ってた。 αはどの性よりもヒエラルキーが上な分、整った顔や目立つ容姿をしている。その点堤さんは確かに顔は整ってるけどオーラというか、そういうのが無いかな…という感じ。 だから仮に僕がΩのままでも、運命の相手は確実に堤さんじゃない。 ーーまぁ、それ抜きにして 好きなんですけど。 いや、普通考えてこの状態で惚れない方がおかしいと思う。 そりゃ初めは胃袋でしたよ。ガッツリ掴まれました、そりゃぁね。でも何度も通ってるうちに、気がついたらケーキよりも堤さんが気になってしまっていて。 今じゃ絶対オススメを聞いてから買うようにしている。 あんなにふんわり笑う魔法使い、好きにならない選択肢がない。 年も30代前半なのに、それよりも若く見えるし。 (だからなぁ……できれば卒業してもこの辺にいれるといいんだけど) あのお店で堤さんと話してケーキを買う。 これがずっとできるのならば、将来はなんだっていい。 だから、願わくばそんな未来でありますようにと祈りながら家からの連絡を待つしかなくて。 はぁぁ…とため息を吐きながら、窓の外を見上げた。

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