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第10話 困惑
そんで。
気がついたら、どっかのベッドの上で、せい兄ちゃんの腕の中で、途方に暮れてしまったのは言うまでもない。
なあ、なんでこうなってんの。
しょう兄ちゃんほどがっちり力任せじゃないけど、それでも動きにくいくらいにはホールドされてて、困る。
何がどうなってんのかもわかんなくて、困る。
とりあえず下着は着てるっぽいけど、足は素肌の感じ。
あったかくてサラサラで気持ちいい。
なんでこうなってんの?
しょう兄ちゃんのバカ。
って思っただけのはずが、口に出していたらしい。
「ノタ? 気がついた? っていうか、おれとベッドにいるのに、他の男の名前呼ばないでね」
今度はオレのことノタって呼んで、よしよしって、せい兄ちゃんが背中を撫でる。
何故に。
他の男ってしょう兄ちゃんだよ?
っていうか、なんだかせい兄ちゃんが甘いんだけど、どうしよう。
何がどうなって、こうなってんの?
「もう一回気絶したい」
「するなするな。その前に、話をしよう」
よっこいしょって体を起こして、せい兄ちゃんがオレを後ろから抱えて座る。
せい兄ちゃんもオレも、肌着と下着。
服はどこに行った。
「さて、ノタはどこまで覚えてる?」
「ええと……本気にしていい? ってとこまで……?」
「そっか」
話をするなら顔が見えた方がいいなって思うんだけど、せい兄ちゃんはオレを抱え込んだままで、オレの背中に額をつけてゆらゆらしてる。
考えてる?
困ってる?
「あの後、ノタ、酔いが回っちゃったんだよね」
「それは……ゴメイワクヲオカケシマシタ……」
なんてこった。
しょう兄ちゃんの酒を横取りしてただけで、そこまで酔うとは情けない。
「迷惑どころか、めっちゃ可愛いくておれ得だったから、気にしなくていいよ」
「ぅえ?」
「ノタは昔から可愛い。会わせてくれた翔太に感謝してるけど、何のためらいもなくかわいがれる翔太が、ずっと羨ましかった。翔太にも許可もらってあるから、あとで確認してくれていいよ」
「せい兄ちゃん?」
「おれはね……前から、ノタが好きなんだよ。翔太がノタのこと可愛がっていたし、翔太はいい奴だから、ノタのためになるなら身を引こうかなって考えるくらいは、ノタのことが好き。忘れた方がいいかなって他の奴に手を出してみたけど、やっぱダメだった」
「オレ、男だよ?」
さっきから当たり前のように、好きって言うけど、オレは間違いなく男なのだ。
そして悲しいかな、世の中で男が男に好きって言うことは、ほとんどないって、知ってる。
「うん。だから、好き」
「はい?」
「昔から、ノタ、おれと翔太が仲いいの不思議がってたろ? 『どこに接点あるの?』って。接点はここ。おれも翔太も、男が好きなんだよ」
ふとしたことでお互いにそれに気がついて、そこから同類ってことでかばい合っていたそうだ。
ただ、どっちもが抱きたい方で恋愛には発展しないで、友情方面で付き合っていたって。
しょう兄ちゃんがこの盆休みに何が何でもオレをこっちに呼びたがっていたのは、墓のこととかばあちゃんのこととかもあるけど、いい加減、せい兄ちゃんに腹をくくらせたかったかららしい。
せい兄ちゃんは、ここを出ていこうとしてたから。
オレへの気持をこじらせてぐずぐずしたまま東京に行っても、って言ってたそうだ。
ちょっと、そこはオレの意見も聞けよ。
「ノタは押さないとダメだから」
「何が?」
「翔太がそう言ってた。おれもそう思う。ノタは気持を隠しちゃうから、押して聞き出さないと本音がわからない」
ちょっと拗ねモードに入ったオレに、せい兄ちゃんがそう言う。
そんで、膝の上でオレの向きを変えて、向かい合わせになった。
いや待って。
顔見て話したいって思ってたけど、これはちょっと近いから。
近くで顔を見合わせて、また顔がアツくなる。
「ノタ、好き。抱いていい?」
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