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提案
目を開けると、淡いオレンジ色の光が一面に広がっていた。
「此処は……?」
頭がぼうっとして、何が起こったのか思い出せない。腕を持ち上げるのも億劫で、ベッドの中で寝返りを打つ。
視線だけで周囲を見渡すと、気を失う前と同じような如何わしい雰囲気の室内が目に映った。
ぼんやりと内装を眺めているうちに、昨夜のことが蘇って来る。
「嘘、だろう……?」
信じられなかった。夢を見ていたのだと思おうとしたが、怜旺の身体には至る所に情交の跡が残っているし、何より全身が酷く重怠い。
まさか、本当に? そんなはずは無いと否定したいのに、現実がそれを許さない。
未だ素っ裸のままシーツ一枚で覆われている状況から、それら全てが事実だと突きつけられたようで血の気が引いていく。
怜旺は恐る恐るシーツを捲ると視線を下半身へと向けた。
怜旺の身体は二人分の欲望を受け止めた所為か、ドロドロの酷い有様になっている。気持ちが悪くてシャワーでも浴びようかと軋む体を起こし掛けたその時。
「やっと気付いたか」
静まり返った部屋の中に、少し低い聞き覚えのある声が響いた。
ギョッとして身を竦ませながら反射的に向くと、そこには椎堂圭斗が立っていて心臓が止まりそうになるほど驚いた。
咄嗟に身体を起こそうとするが、力が全く入らずそのまま倒れ込んだ。
「お前……何でここに……」
頭も身体もぼんやりと霞んでいるようで、上手く状況が把握できない。
この男は何故まだ残っているんだ? そもそも、本当に一人なのだろうか?
もう一人はシャワーでも浴びていて、また戻って来るのではないか?
様々な疑問が浮かんでは消えて行く。
だが、ジッとこちらを見つめている無機質な視線からは、何の感情も読み取ることは出来なかった。
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