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気まぐれ 10

「……なぁ、なんで俺の授業に出ないんだ? なんで避ける? このままだとお前、夏休みの補講受けなきゃなんないだろうが」 「……別に、どうでもいいだろ。んな事」 スッと巻き付いていた手が離れ、温もりが背後から消える。 「興ざめするような事言うなよ」 「……」 声に、若干の苛立ちが混じっているのを感じて、怜旺は口を閉ざした。 聞きたい事は多々あったが、恐らく今の彼には何を言っても答えてはくれないだろう。直感的にそう感じてベッドから這い出ると床に散らばった服を拾い集めて浴室へと向かう。 「……あぁ、そうだ。さっきゲーセンで言ってた央のアレな。消してやってもいいぜ。どうせもう飽きたし」 「は? そ、そうか……」 ドアを開けた瞬間、そんな事を言われて思わず拍子抜けしてしまった。まさか圭斗の方からその話題を振って来るとは思わなかった。 もっと拗れるかと覚悟していたのだが、意外にもあっさりと圭斗は引き下がった事にも驚きを隠せない。 だが。 「ただし、条件がある」 「条件、だと?」 思わず振り返った怜旺を見て、圭斗がにやりと口角を上げた。 「今は教えねぇ。ま、時期が来たら言うわ」 「……何を企んでる?」 「さぁな。そんな事より、風呂入るんだろ? 洗ってやろうか?」 「は!? いい! 一人で出来るから!  絶対入ってくんなよ!!」 怜旺はキッと睨み付けてそう言うと、バタンと勢いよく扉を閉めて脱衣所に入った。 一体なにを考えているんだあの男は。 急に怒ったかと思えば、ふざけた事を言いだして。本当に意味が分からない。 それに振り回されている自分にも腹が立つ。 「くっそ……」 風呂に湯を張りながら怜旺は頭を抱えてその場にしゃがみ込んだ。

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