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困惑の先に
その日の夜、最後に会った日に交換したメッセージアプリに央から圭斗が動画を消してわざわざ家に謝罪しに来たと言う趣旨のメッセージが届いていた。
どうやら、圭斗は約束を守ったらしい。
しかもわざわざ家に行って本人に直接謝罪してくるとは。少し意外だった。
だが、彼の家に行ったという事はこの家の目の前まで来ていたという事を意味している事に気付き、ゾッとする。
央は恐らく、自分が隣の家に住んでいるという事は知らない筈だ。だが、彼の母親は違う。
息子の幼馴染だと言う圭斗に何の気なしに話してしまう可能性は否定できない。
だが、口止めしようにもなんと説明していいものかさっぱりわからず、スマホをベッド脇に放り投げると、怜旺はベッドに突っ伏し深い溜め息を吐いた。
これで、少しは引きこもりだった央も学校に来易くはなるだろう。
最初は保健室登校からのスタートにはなるとは思うが、一歩前進したことは喜ばしい事だ。
だが、圭斗に関しては昼間のアレは流石にやり過ぎじゃないだろうか。あんないつ、だれが来てもおかしくない状態で最後までしてしまうなんて、どうかしてるとしか思えない。
「くそ……ッ」
自分は、毅然とした態度で突っ撥ねるべきだった。頭ではそう理解していたのに、あんな小さな玩具一つで、理性がグズグズに溶かされてしまった己の浅はかさが恨めしい。
隣の教室には、未だに人が残っていたし一歩間違えば自分だけじゃなく、圭斗だって処分の対象になった筈だ。
それなのに、あんな場所で最後まで……。
「一体なにを考えているんだアイツは!」
静かな室内に憤る自分の声だけが響き渡る。案外、何も考えていないのかもしれない。自分だって学生の頃後先考えながら行動していたかと言われれば答えはNOだ。
でも、だからってあんな事をしていい理由にはならない。
『アンタは俺のモノだ。逃がさない』
不意に熱っぽい囁きが耳元に蘇って来て、怜旺は思わず髪を掻き毟りたい衝動に駆られた。
どうして圭斗はあの場であんな言葉を口にしたのか。圭斗があの動画を握っている以上自分に拒否権など無いし、逃げる事なんて出来るはずも無いのに。
彼にとって、自分は都合のいい性欲処理の道具に過ぎない筈だ。それ以外の意味なんてあるわけがない。
なのに、あんな……情熱的な囁き方をされたら、他に意味があるのではないか? と、勘違いしてしまいそうになる。
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