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確かめたい 13
「びっくりしただろ」
「そりゃ、まぁ……」
「親父がクソみたいなやつでさ……。ろくに働きもしねぇでギャンブル三昧。当然、俺の給料だけじゃ足りねぇんだ」
「それでアンタが身体張って稼いでんのか? なんで……」
「……お前には、わかんねぇ事情ってモンがあるんだよ」
「なんだよそれ……っ」
怜旺の言葉に、圭斗は悔しそうに歯噛みして俯いた。
「なんで、こんなとこに居るんだよ。アンタの親を悪くは言いたくねぇけどさ……。こんな家さっさと出てった方がよっぽどマシだろっ」
「それが出来りゃ……良かったんだけどな」
自嘲気味に笑ってみせると、圭斗はムッとした様子で怜旺を睨み付けた。
「ンだよ、それ」
「昔は、すっげぇ優しかったんだ。真面目で明るくてさ……愛妻家で自慢の親だった。母さんが生きてたら何か違ったんだろうけど……」
もう記憶の彼方にしかない朧げな父親の姿を思い出し、溜息にも似た吐息を吐き出して目を細める。
「お前の憧れてた伝説の男のリアルなんて、知りたくなかっただろ? だから……言えなかったんだ」
圭斗は何も言わなかった。肯定なのか否定なのかもわからず、二人の間に気まずい沈黙が流れる。
「ま、そう言う事だから。親父の借金返済が終わるまではアッチの仕事辞めれねぇんだわ」
重苦しい空気が嫌で、わざとおどけた調子で言ってみせたが、圭斗の表情は益々険しくなった。
「なんで……アンタがそんなの背負わなきゃいけねぇんだ。何か、他に方法はねぇのかよ……」
「ハハッ、案外優しいとこあるんだな、お前」
「茶化すなよッ! 俺はアンタの事が心配で……っ」
怜旺は真剣な眼差しで声を荒げる圭斗の頭をよしよしと撫でてやった。
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