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束の間 4

あらかじめ準備してくれていた着替えに袖を通し、リビングへ向かうとさっきは居なかった黒猫が1匹ソファで寛いでいた。 「ナァオ」 猫は怜旺の姿に気付くと、しゃがれた声で鳴きながら擦り寄って来て纏わりつく。 怜旺が手を伸ばしてやると、指先をぺろぺろと熱心に舐める。 「レオ!」 「え?」 突然名を呼ばれ、顔を上げるとようやく風呂から上がって来た圭斗が濡れた髪を拭きながら佇んでいた。 どうやら、自分を呼んだわけでは無かったらしい。偶然なのだろうが、なんだか不思議な巡り合わせを感じた。 「人が来るといつもは隠れて出てこないんだけど、やっぱアンタの事はわかるのかもしれないな」 「あ? 何言って……」 「昔さ、コイツ公園の隅に捨てられてたんだ。俺、当時はまだ小学校上がる前だったんだけど、どうしてもコイツの事が気になって、夜に家を抜け出してさ様子見に行ったら中学生くらいの悪ガキに酷い事されててさ、咄嗟に庇ったのはいいけど多勢に無勢で。もう駄目だって思った時に颯爽と現れて助けてくれたのが……」 そこでいったん区切って、圭斗は怜旺を愛おしげに見つめる。 「そっか……。コイツ、あの時の……」 「もう随分じいちゃんになっちまったけど、ずっとアンタの事覚えてたんだろうな。なんたって命の恩人だし」 「よせ。大袈裟だろ」 レオはゴロゴロと喉を鳴らしながら、ジッと黄金の瞳で怜旺を見ると「ナァ」と短く鳴いた。 そして何処かへトコトコ歩いて行ってしまう。 「はは、やっぱ猫は気まぐれだな」 「ちげぇよ。俺らに気ぃ遣ったんだろ?」 言いながら、圭斗が後ろからそっと腰に手を回し抱き着いてくる。 「俺と同じ匂いがすんの、なんかいいな」 「バカ、嗅ぐな!」 首元に顔を寄せられてスンスンと匂いを嗅がれると、羞恥で一気に顔が熱くなった。この反応はきっと圭斗には全てお見通しなんだろう。 案の定耳元に唇を寄せて来る気配がしたかと思うと、耳たぶにキスをされた。そしてそのまま柔らかく甘噛みしながらゆっくりと首筋まで舐め上げられる。

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